eぶらあぼ 2017.11月号
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48新国立劇場 開場20周年記念 舞踏の今 その1山海塾『海の賑わい 陸オカの静寂―めぐり』“揺れ動き、変容するもの”をベースに表現文:高橋森彦11/25(土)、11/26(日)各日14:00 新国立劇場(中)問 新国立劇場ボックスオフィス03-5352-9999 http://www.nntt.jac.go.jp/dance/ 開場20周年を迎える新国立劇場は「BUTOH」として世界に知られる日本が生んだ身体芸術・舞踏を特集し、「舞踏の今」と題して2つの世界的ダンスカンパニーの作品を上演する。その第1弾が天児牛大率いる山海塾だ。 山海塾は1975年に創設され、80年以降45ヵ国700都市以上で公演し、“コンテンポラリーダンスの殿堂”と呼ばれるパリ市立劇場との共同制作を30年以上続けている。「重力との対話」を掲げ、洗練された美の世界を造形し、世界中で称賛を浴びてきた。 今回披露するのは2015年に北九州で世界初演された『海の賑わい 陸(オカ)の静寂―めぐり』(演出・振付・デザイン:天児、音楽:加古隆、YAS-KAZ、吉川洋一郎)。モティーフは2億5千万年前に日本の海中で繁栄していた生物で、今は化石として発見されるウミユリ。天児はこの「とてつもない時間の流れ」から「不動のものはなく、常に揺れ動いているフラジャイルなものが我々のベースにある」と捉える。そして「賑わいとは生きること、静寂とは死んでいること」だと定義し、「自然史的なものを説明するのではなく、人や感情、希望、絶望といったものを、いわば賑わいと静寂とを対比させながら一つの作品にしたい」との願いをこめて創作したと話す。 初演から2年を経て世界ツアー、絶賛開催中。天児は踊りこんでいくうちに「硬さが取れて醸成されてくる」と手ごたえを語る。研ぎ澄まされた美を湛える深遠かつ壮大な時空に浸りたい。MEGURI ©Sankai Jukuヴァレリー・ポリャンスキー(指揮) ロシア国立交響楽団〈シンフォニック・カペレ〉ロシア音楽ファン必聴!「三大交響曲」再び文:林 昌英10/28(土)14:00 横浜みなとみらいホール11/5(日)13:00 サントリーホール11/7(火)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 テンポプリモ03-3524-1221 http://www.tempoprimo.co.jp/ あの興奮が帰ってくる! 2年前の7月、ヴァレリー・ポリャンスキー率いるロシア国立交響楽団が、チャイコフスキー交響曲第4番・第5番・第6番「悲愴」を1公演で完奏するという、前代未聞のプログラムを引っ提げ、全国で公演を行った。演奏の質は大丈夫? という心配もまったくの杞憂に終わり、細部まで練られた“丁寧な爆演”が毎回展開され、その衝撃と絶賛は記憶に新しい(筆者は特に「悲愴」第1楽章の濃密かつ壮絶な豪演が忘れられない)。 二度とないと思われたその「三大交響曲」が、今秋また同じコンビで体験できるのだ(11/5)。しかも、大活躍中の宮田大との共演によるドヴォルザークのチェロ協奏曲と、ショスタコーヴィチの交響曲第5番他というプロ(10/28,11/7)も用意されて、同コンビの至芸を存分に満喫できるのも嬉しい。 「ロシア国立交響楽団」と表記されるオーケストラは2団体あるが、今回はスヴェトラーノフが率いたオケではなく、ロジェストヴェンスキーが音楽監督を務めた「ソビエト国立文化省交響楽団」を前身とする「シンフォニック・カペレ」と呼ばれるオケである。1992年以来25年間音楽監督を務めるポリャンスキーとの一心同体の演奏は充実顕著で、さらに深化した演奏が期待できる。また、ロジェストヴェンスキーもポリャンスキーも同団とショスタコーヴィチの名録音を残していて、今回第5番でその精髄を聴けるのも楽しみ。“これぞロシアオケ!”という体験がしたい人なら、絶対に逃すわけにはいかない。また、2年前の「三大交響曲」をライヴ収録したCD(fine NFレーベル)もリリースされるので、こちらも要チェックだ。宮田 大 ©Yukio Kojimaヴァレリー・ポリャンスキー

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