eぶらあぼ 2017.11月号
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36ペルゴレージ:歌劇《オリンピーアデ》(セミステージ形式)11/3(金・祝)、11/5(日)各日15:00 紀尾井ホール問 紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061 http://www.kioi-hall.or.jp/澤畑恵美(ソプラノ)やりがいのある名舞台の再演、本当に楽しみです取材・文:柴田克彦Interview 2015年、紀尾井ホールにおける日本初演で絶賛を博したペルゴレージの歌劇《オリンピーアデ》が、今秋再演される。生気溢れる舞台で観る者を惹き付けたこのプロダクションの再登場は、実に意義深い。本作は、古代オリンピック競技にまつわる様々な愛憎の末に、2つの愛が成就する物語。主役格のクレタの王子リーチダを歌う日本屈指のソプラノ・澤畑恵美も、前回の公演に手応えを感じている。 「バロック・オペラながらも、グランド・オペラを皆で作り上げたような充実感がありました。美しいアリアもふんだんにあるのですが、レチタティーヴォでのドラマの展開が重要なので、演劇の要素が濃い舞台を成し遂げた感覚もありましたね」 本来カストラートで歌われたリーチダは、ソプラノの澤畑にとって初の男役。しかも出演時間が長い。 「単純明快で竹を割ったような表現が多く、女性役の“しな”のようなものを削ぎ落とす必要があります。出番の多さも体力や気力的には大変。でも役柄が自然に発展していく時間を与えられますので、やりがいがあります。また声域も2オクターブ以上と非常に広く、静かなアリアと激しいアリアが2つずつあります。中でも聴きどころは、愛に敗れた苦悩の中で自分を見つめ直す、第2幕最後の激しいアリア。3人が私に思いを吐露した後に歌われるその場面が、第3幕のフィナーレの感動に繋がる山場です」 演出の粟國淳、指揮の河原忠之や豪華な歌手陣への信頼は厚い。 「粟國さんは台本と音楽に誠実な方。指示された位置で歌うだけでそのアリアの世界が広がる、不思議な居心地の良さがあります。河原さんは我々を信頼してくださっていますし、音楽への愛が前面に出ていて、歌いながら彼を見るとお客様よりも幸せそうな顔をしているくらいです。共演者の方たちは本当に心強く、サッカーチームのような感じ。前回は実際に円陣を組んでから舞台に出たんです」 彼らは全員、今回の再演に参加する。 「皆がオペラの展開を十分に把握している今回は、役と役の関わり方や一人ひとりの苦悩を、より丁寧に分かりやすく表現できますし、私自身も見落としていた“間”などを生かそうと考えています」 なおこの公演では、前回カットされたアリアが数曲追加され、オーケストラは特別編成だった有志の楽団から紀尾井ホール室内管弦楽団に変わる。 また「紀尾井ホールの空間を生かした」舞台作りも見逃せない。 「シンプルだけれど何の不足もなく、セミステージ形式とはいえオペラとして充分成立しています。それに舞台が客席と近いので、お客様との一体感があります。公演が楽しみです」印田千裕(ヴァイオリン) & 印田陽介(チェロ) デュオリサイタル~ヴァイオリンとチェロの響き Vol.6~ロマン派の秘曲や現代の佳品を一晩で文:笹田和人 デュオの形では耳にする機会が少ない、ヴァイオリンとチェロの組み合わせ。印田千裕&陽介によるデュオは、姉弟ならではの息の合ったアンサンブルで、2つの楽器による響きの美しさを追求し続けている。6回目を迎えたリサイタル。多彩な作品を通じて、その魅力を掘り下げる。 東京芸大から英国王立音楽院に学び、邦人作品の紹介など、しなやかな活動を展開する実力派奏者の千裕。そして、やはり東京芸大からチェコ・プラハ音楽院に学び、他の舞台芸術との11/8(水)19:00 王子ホール問 マリーコンツェルト03-6914-2234http://chihiroinda.com/コラボレーションなど、独創的な活動を続ける陽介。共に国際的な登竜門で実績を重ねた2人は、知られざる佳品の発掘にも力を注いできた。 今回は、19世紀の名チェリスト、フリードリヒ・アウグスト・クンマーが、フランスで活躍した作曲家フランソワ・シューベルトと共作した「デュオ・コンチェルタンテ」が軸に。やはり19世紀のH.A.ホフマン、20世紀のトッホ、クーカルや西村朗と現代の作品、さらにモーツァルトと、多様な手触りの二重奏曲を披露。2人の名手は、自在に時空を超えていく。

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