eぶらあぼ 2017.11月号
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33ゲルハルト・オピッツ(ピアノ)ドイツ・ピアノ音楽の本流を極める文:高坂はる香ベートーヴェン4大ソナタを聴く 12/12(火)19:00 フィリアホールシューマン × ブラームス連続演奏会 第3回12/15(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 パシフィック・コンサート・マネジメント03-3552-3831 http://www.pacific-concert.co.jp/ ゲルハルト・オピッツがこの12月、得意とするベートーヴェン、そしてシューマンとブラームスをとりあげる2つのリサイタルを行う。 まず1つは、12日にフィリアホールで行われる、ベートーヴェンの4大ソナタ「悲愴」「月光」「テンペスト」「熱情」を弾く公演。これまでソナタ全曲演奏などでベートーヴェンに深く向き合ってきた彼が、名曲をまとめて取り上げることになる。メロディメーカーというイメージからは遠いこの作曲家が、実際にはいかに心に残る旋律を生み出したか、それをいかに完成度の高い構造の中に取り込んだかを、くっきりと見せてくれるだろう。 そしてもう1つが、15日に東京オペラシティで行われる、『シューマン×ブラームス連続演奏会』。2015年から行われている全4回シリーズの第3回だ。今回は、シューマンが20代後半に完成させた「クライスレリアーナ」とソナタ第2番、ブラームスが20歳の頃、シューマンを訪ねたデュッセルドルフで主に書いたソナタ第3番を取り上げる。オピッツは両者について、「シューマンは、厳格な伝統に縛られすぎず、自由を求める形でベートーヴェンの精神を受け継いだ。一方ブラームスは、古典的な構造を大切にして過度な冒険は避け、詩情に満ちた音楽を書いた」と話している。両ソナタの聴き比べから、そのあたりを実感できるだろう。 12日のベートーヴェンを聴き、新鮮な記憶をもって15日の公演を聴けば、より大きな発見があるかもしれない。©Concerto Windersteinユベール・スダーン(指揮) 東京交響楽団こまやかに彫琢された音楽の景色文:柴田克彦第64回 川崎定期演奏会 11/12(日)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール第655回 定期演奏会 11/14(火)19:00 サントリーホール問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 http://tokyosymphony.jp/ 功労者が定期的に戻ってくるのは、本当に喜ばしい。10年にわたる音楽監督時代を通じて、東京交響楽団に精緻な合奏力をもたらしたユベール・スダーンは、2014年3月退任後も桂冠指揮者として毎年登場。昨年9月には、ベルリオーズの大作「ファウストの劫罰」を振って、持ち前の緻密さと後任のジョナサン・ノットが加えた立体感を併せ持つ名演を生んだ。そして今年も11月定期で凝ったプログラムを披露する。 まずはレーガーの「ベックリンによる4つの音詩」。スイスの画家アルノルト・ベックリンの絵画からインスピレーションを受けて書いた管弦楽曲で、濃密な響きをもった充実作である。だが生演奏は稀なだけに、今回は貴重な機会となる。次いではダンディの「フランスの山人の歌による交響曲」。LP時代に人気を誇ったこの曲は、北フランスの山岳地帯セヴェンヌ地方の民謡を用いた、ピアノ独奏付きの交響曲で、瑞々しい叙情性と牧歌的な情趣が重層的な響きの中に溶け込んだ傑作だ。ピアノは、フランスの知性派フランク・ブラレイ。エリーザベト王妃国際コンクールで優勝後、才気溢れる演奏で世界的に活躍している彼のピアノは、作品に魅惑の煌めきを与えてくれる。そして後半は、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」。これもアメリカの風物にインスパイアされた作品ゆえに、今回は音の景色がテーマともいえる。しかも同曲が、レーガーとダンディの後にどう響くのか? すこぶる興味深いし、スダーンの引き締まった表現が生み出す新感覚にも期待したい。 これは示唆に富んだ“大人の”プログラム。その感触をぜひとも生で確かめたい。フランク・ブラレイ ©KENPOユベール・スダーン ©F.Fujimoto

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