eぶらあぼ 2017.11月号
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180SACDCDCDCDウィーンの調べ 華麗なるコロラトゥーラ2/田中彩子モーツァルト:クラリネット五重奏曲 他/松本健司&マティアス・ストリングスファンタジー/横山幸雄バッハ&フォーレ/大友 肇J.シュトラウスⅡ:美しく青きドナウ/モーツァルト:アヴェ・ヴェルム・コルプス/シューベルト:子守歌、アヴェ・マリア/ロジャース:エーデルワイス 他田中彩子(ソプラノ) 加藤昌則(ピアノ) 杉田せつ子 俣野賢仁(以上ヴァイオリン) 柳原有弥(ヴィオラ) 西山健一(チェロ)モーツァルト:クラリネット五重奏曲、クラリネット協奏曲(五重奏版/齋藤真知亜編)松本健司(クラリネット)マティアス・ストリングス【齋藤真知亜 降旗貴雄(以上ヴァイオリン) 坂口弦太郎(ヴィオラ) 宮坂拡志(チェロ)】J.S.バッハ:半音階的幻想曲とフーガ/モーツァルト:幻想曲 ニ短調/ショパン:幻想曲/シューマン:同横山幸雄(ピアノ)J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番・第5番/フォーレ:エレジー、ロマンス、シチリアーノ、セレナーデ、夢のあとに、子守歌大友 肇(チェロ)野本哲雄(ピアノ)エイベックス・クラシックスAVCL-25942 ¥3000+税マイスター・ミュージックMM-4017 ¥3000+税アールアンフィニ(ソニー・ミュージックダイレクト/ミューズエンターテインメント)MECO-1043 ¥3000+税ナミ・レコードWWCC-7844 ¥2500+税本場ウィーンで大活躍中、話題の新進ソプラノ。昨年、TBS系のドキュメンタリー「情熱大陸」で、ひたむきに音楽と対峙する姿が紹介されてから、一般の注目度も急上昇した。そんな田中彩子の第2弾アルバムは、モーツァルトやシュトラウスの名旋律、ロマン派のリートなど、10代から拠点としている“第2の故郷”のオーストリアに因んだ歌を集めて。“天賦の才”という言葉が相応しい美声は終始、芯を失わず、表現は変幻自在。ドイツ語はもちろん、訳詞で歌われる「エーデルワイス」に聴く、日本語表現の美しさも耳を奪う。バックを務める器楽陣も皆、上品で清澄な音色。好演だ。   (笹田和人)NHK交響楽団第1ヴァイオリン・フォアシュピーラーの齋藤真知亜が率いるマティアス・ストリングスと、同楽団首席クラリネットの松本健司が、モーツァルトの二大名作に挑んだ。松本の音はくっきりした輪郭を持ちながら柔らかさと温かみをもち、同じくN響の弦の名手たち4人と共に、充実ぶりが伝わる、親密なモーツァルトを聴かせる。齋藤の編曲による協奏曲は、丁寧で真摯な編曲・演奏で、曲の清新な魅力さえ浮かんでくる。原曲のトゥッティ部分にクラリネットも入ることは新機軸だがすばらしい効果をあげていて、同種の試みに新たな可能性を与える好企画ともなっている。  (林 昌英)横山幸雄は聴く者を一瞬にして引き込んでしまう輝かしい音色、超絶技巧を“超絶”と思わせないほどに自然に演奏してしまう技術を持つピアニストだが、彼の演奏の魅力は何よりも作曲家に対する敬意、そして緻密な構成力にある。特に「幻想曲」という、奏者の自由な感性を羽ばたかせつつ、それをまとめあげることが求められる作品を集めた本ディスクはそれを改めて実感させてくれるものである。とりわけ魅力的なのはシューマンの作品だろう。粒のそろった音色の美しい配置はもちろん、音型同士の関連性を鮮やかに浮かび上がらせることで圧倒的な構築美を見せてくれる。    (長井進之介)クァルテット・エクセルシオのチェリストを長年務め、最近は個人としても活動の幅を広げている大友の初のソロCD。バッハの無伴奏組曲2曲にフォーレの小品を加えた、硬軟相持つ構成によって、終始耳を傾けさせる好アルバムとなっている。濃密な音で紡がれる堅牢かつ滑らかな演奏も充実度抜群。シリアスなバッハの音楽も明解に伝わり、ピアノが加わったフォーレの各曲には心が温まる。こまやかでいながら衒いのない表現で浮き彫りにされる、バッハの短調と長調作品の対照、バッハとフォーレの対照も妙味十分。チェロ音楽の魅力を身構えずに楽しめる1枚だ。 (柴田克彦)

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