eぶらあぼ 2017.10月号
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77来日20周年記念公演 エフゲニー・ザラフィアンツ ピアノ・リサイタル詩情豊かな響きと感性を存分に堪能文:飯田有抄11/23(木・祝)14:00 東京文化会館(小)問 ミューズ会042-366-6452 http://www.zarafiants.com/ 一度その音色に触れると長く余韻に包まれ、いつまでもその空気を身に纏っていられる。そんな音色を聴かせてくれるピアニストに出会うことは幸福だ。20年前日本の聴衆は、初めてエフゲニー・ザラフィアンツの生演奏に出会った。以来彼は来日を重ね、日本の若きピアノ奏者たちの指導にも当たるなど、日本との信頼関係を築いてきたが、この秋「来日20周年記念公演」と銘打って、詩情豊かな響きを存分に堪能できるプログラムを披露する。 前半の2作品は、これまでにザラフィアンツがアルバムを通じて聴衆に届けてきた作品でもある。J.S.バッハの「シャコンヌ」は、もともと無伴奏ヴァイオリンのために書かれたものであるが、ブゾーニによるピアノ版は編曲作品の最高傑作だ。ザラフィアンツの深いタッチと繊細な音楽づくりが、この曲の放つ人間的な苦悩や聖なる境地、神秘的な深遠さを説得力をもって現前化させることだろう。シューマンの「フモレスケ」は人間の喜怒哀楽といった情緒を、詩的かつ知的に落とし込んだ曲集。ザラフィアンツは多層的・立体的な響きで心模様を聴かせてくれるに違いない。そして後半はショパンの「24の前奏曲 op.28」。ショパンが全調を網羅して24の小品により描いた世界を、ロシアの伝統的奏法を継承するザラフィアンツが大胆に彩り豊かに聴かせてくれるはずだ。 いつも人の心に寄り添うような音色を届けてくれるザラフィアンツ。日本におけるメモリアルイヤーを会場で祝福したい。©Naoko Taniguchi第36回 横浜市招待国際ピアノ演奏会4人の若き精鋭たちが横浜に集結文:道下京子11/3(金・祝)14:00 横浜みなとみらいホール(小)問 横浜みなとみらいホールチケットセンター045-682-2000 http://www.yaf.or.jp/mmh/ 横浜市招待国際ピアノ演奏会は、横浜の秋の音楽シーンには欠かせない存在だ。ピアニストの山岡優子が提唱したこの演奏会は、1982年に第1回を開催。97年以降は横浜みなとみらいホールで行われている。国際コンクールの入賞者から選りすぐられた気鋭のピアニストが集い、彩り豊かなプログラムを披露する。出演者の選定については、「35歳以下」で「国際コンクールに2回以上入賞」した経験をもつことを条件とする。 36回目を迎える今年は11月3日に開かれ、4人の俊英が独奏と連弾に挑む。ヤクブ・チズマロヴィチはスロバキア生まれで、すでにラヴィニア芸術祭など有名な音楽祭に多く招かれている。フランス出身のナタナエル・グーアンは、ブラームス国際やマリア・カナルスなどのコンクールで優勝・入賞。近年ではマリア・ジョアン・ピリスとデュオ・リサイタルも行う。アレクセイ・タルタコフスキはニューヨーク・ピアノ・コンペティションなどで優勝し、2年前のショパン・コンクールのセミ・ファイナリスト。そして永野光太郎は、ハリーナ・チェルニー=ステファンスカ記念国際コンクール第2位などの受賞歴をもち、国内外で活動する。 企画委員長を務めるのは海老彰子。出演者の選定にあたり、「個人的に言えば、音楽的な演奏・生きた演奏・私達に語りかけてくれる演奏」に留意するという。そして「更に人生で多くの経験を積み温故知新、たくさんの本を読み熟慮し、充実した豊かな人間性溢れるアーティストに時間をかけて育っていかれることを祈ります」と若手演奏家にエールを送る。ナタナエル・グーアンアレクセイ・タルタコフスキ永野光太郎ヤクブ・チズマロヴィチ

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