eぶらあぼ 2017.10月号
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48©Gadi Dagon 野性と知性の両方を感じるダンスは、そうあるものではない。しかしオハッド・ナハリン率いるバットシェバ舞踊団は、まさにそれだ。イスラエルはいまや世界に冠たるダンス大国だが、ナハリンは最大の功労者といえる。その影響はコンテンポラリー・ダンスの主流であるヨーロッパに逆流しているほどだ。そのダンスは否応なく胸を揺さぶり、人生に深く打ち込まれる。これまでも来日を重ねて、数多くのファンを掴んできたが、再び来日する今年は、様々な意味で「記念すべき年」なのである。 まずバットシェバ舞踊団の初来日は1997年。今年は来日20周年にあたるのだ。そしてナハリンの半生を描いた画期的なドキュメンタリー映画『MR.GAGA(邦題:ミスター・ガガ 心と身体を解き放つダンス)』の日本での公開が決定した。さらにこの映画の中でも多く時間を割いて紹介されている注目作が、今回来日する『ラスト・ワーク』なのである。 ヨーロッパ的なダンスとはまた違う、奇天烈にして強烈なダンスの連続。しかし舞台上はむしろ静謐で、冷気がすうっと渡っていくようだ。舞台奥ではずっと誰かがその場で走り続けている。ナハリンが開発した身体メソッド『GAGA』で鍛えられたダンサー達がもたらす動きは、ダンスの概念を変えてきた(『GAGA』のワークショップもあるので、ぜひとも体験してみよう)。それはステップを組み替えるとかテンポを変えるといった小手先ではなく、ずっと深いところから身体の真実を探求するものだ。それは実にスリリングで、ワクワクする驚きに満ちている。ダンスの概念を変えてきた鬼才の“特別な”作品文:乗越たかお そして本作は、これまでのナハリンの作品とはちょっと違う趣を持った、特別な作品でもある。特定のメッセージと取られるような表現にも、今回は踏み込んでいる。熟練の、しかし一人のアーティストとしての節目を見られることだろう。 じつは「記念すべきこと」が、もうひとつある。今年7月に発表されたばかりだが、なんとナハリンがバットシェバ舞踊団の芸術監督を今期限りで退くのである。とはいえ引退というわけではなく、ハウスコレオグラファーとしてバットシェバ舞踊団でクリエイションは続ける。カンパニー経営の雑務から離れて創作に打ち込めるようになった、とむしろ好意的に受け止めたい…とはいえ。「芸術監督としての来日公演」は、今回がまさに“ラスト・ワーク”となるわけだ。 映画・公演・ワークショップ。オハッド・ナハリンという巨大な才能を多角的に実感できる数々の企画。その意味でも今年は特別な年なのである!バットシェバ舞踊団/オハッド・ナハリン10/28(土)、10/29(日)各日15:00 彩の国さいたま芸術劇場(大)問 彩の国さいたま芸術劇場0570-064-939http://saf.or.jp/10/31(火)19:00 北九州芸術劇場(中)問 北九州芸術劇場093-562-2655 http://q-geki.jp/11/3(金・祝)15:00 愛知県芸術劇場(大)問 愛知県芸術劇場052-971-5609http://www.aac.pref.aichi.jp/11/5(日)16:00 びわ湖ホール(中)問 びわ湖ホールチケットセンター077-523-7136http://www.biwako-hall.or.jp/『LAST WORK―ラスト・ワーク』
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