eぶらあぼ 2017.10月号
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210CDCD没後20年 武満 徹 オーケストラ・コンサート/ナッセン&東京フィルテレマン:パリ四重奏曲集(全6曲)/ジ・エイジ・オブ・パッションズ武満 徹:地平線のドーリア、環礁、テクスチュアズ、グリーン、夢の引用―Say sea, take me!オリヴァー・ナッセン(指揮)クレア・ブース(ソプラノ)高橋悠治、ジュリア・スー(以上ピアノ)東京フィルハーモニー交響楽団テレマン:フラウト・トラヴェルソ、ヴァイオリン、ヴィオラ・ダ・ガンバもしくはチェロと通奏低音のための6つの組曲風の新しい四重奏曲集ジ・エイジ・オブ・パッションズ【ペトラ・ミュレヤンス(ヴァイオリン)、ヒレ・パール(ヴィオラ・ダ・ガンバ) 他】収録:2016年10月、東京オペラシティ(ライヴ)TOWER RECORDSTWFS 90013 ¥2600+税ソニーミュージックSICC-30453~4(2枚組) ¥3000+税2016年10月に、東京オペラシティで開かれた「没後20年 武満徹 オーケストラ・コンサート」のライヴ録音。創作初期にあたる1960年代の「地平線のドーリア」「環礁」「テクスチュアズ」「グリーン」という、ユニークな楽器配置・特殊奏法・音群的な音響などが特徴的な4作品、そして90年代の作品からドビュッシーの「海」を引用した柔らかな響きの「夢の引用」。東京フィルを武満の盟友ナッセンが指揮、健康上の理由で来日キャンセルとなったピーター・ゼルキンに代わり高橋悠治が出演した。21世紀の実に洗練された武満演奏がここに収められている。   (飯田有抄)ドイツ・バロックの巨匠テレマンは1737年、多忙の合間を縫ってパリへ旅行し、現地で「新しい四重奏曲集」、いわゆる「パリ四重奏曲」を出版。汎欧州的な筆致の中に、パリ特有の趣味を織り込んだ佳品は、現地の名手たちが初演し、圧倒的な支持を得た。人気ガンビストのパールら現代の名手による当録音は、緩徐楽章にあってもグルーヴ感を保ち、楽想ごとに自在な色彩変化を伴って、初演を体験したパリジャンの驚きもかくや、という洗練さを極める快演。没後250年に聴くに相応しい。また、先行の輸入盤は2枚に分けてのリリースで、全集は日本国内仕様のみ。値段の上でもお買い得だ。  (寺西 肇)CDヴォイス・オブ・ザ・バリトン・サクソフォン/栃尾克樹トマジ:ペルヴィエンヌ/ドヴォルザーク:わが母の教えたまいし歌/シューベルト:音楽に寄せて/シューマン:「詩人の恋」より、トロイメライ/高橋悠治:民衆に訴える 他栃尾克樹(バリトン・サクソフォン)高橋悠治、山田武彦、野平一郎(以上ピアノ)マイスター・ミュージックMM-4016 ¥3000+税東京佼成ウインドオーケストラに参加しながら、ソロ活動でも広いジャンルで活躍する栃尾克樹。これまでリリースしてきた5枚のソロ・アルバムから“VOICE”をキーワードに再編された当盤では、その言葉通り、バリトン・サクソフォンならではの「人の声」のような音色の魅力がたっぷり味わえる。栃尾は丁寧で巧みなコントロールで、深い呼吸を感じさせる「歌」を聴かせる。なかでもバリトンの音域が自然に生きるリート作品では、シューマンの名作等が新たな表現で体験でき、胸に沁みる。名ピアニストたちの名奏も相まって、栃尾が作りあげる滋味あふれる響きが心地よい一枚だ。 (林 昌英)SACDこころ歌/後藤真美岡野貞一:朧月夜、ふるさと/山田耕筰:赤とんぼ、この道/小林秀雄:落葉松/中田喜直:さくら横ちょう、たあんき ぽーんき、霧と話した、桐の花/武満 徹:小さな空/佐原一哉:童神~天の子守唄~ 他後藤真美(ソプラノ)下岡達朗(ピアノ)遠藤頌豆(尺八)アールアンフィニ(ソニー・ミュージックダイレクト/ミューズエンターテインメント)MECO-1042 ¥3000+税後藤真美は東京芸大に学び、オペラや声楽ユニットで美声を披露する一方、日本語詞の歌の表現を追求する若手ソプラノ。「日本人だからこそ感じ、表現できる歌を」と、「赤とんぼ」など古くから親しまれる童謡から「さくら横ちょう」など歌曲、古謝美佐子作詞の「童神」といった新しい歌まで、丁寧に謳い上げた。力任せのヴィブラートを効かせる“絶唱系”とは一線を画し、まるで言葉の一つひとつを慈しむよう。場面ごとの表現を熟慮しつつ、ふわりと柔らかな歌声で包み込んでゆく。共演のピアニスト、下岡達朗の手になる編曲は、時に大胆な和声扱いも交え、魅力的なサウンドを紡ぎ上げる。 (笹田和人)

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