eぶらあぼ 2017.10月号
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208CDSACDCDCDTHE 石田組/石田組詩人の夢 ソプラノと弦楽四重奏によるドイツ歌曲集/白川深雪&ミラージュ・クァルテットポポーフ:交響曲第1番/飯森範親&東響モートン・フェルドマン:バニタ・マーカスのために/マルク=アンドレ・アムランディープ・パープル:紫の炎/レッド・ツェッペリン:カシミール/ピアソラ:タンゲディアⅢ/エルマー・バーンスタイン:荒野の七人/レスピーギ:リュートのための古風な舞曲とアリアより第3組曲 他石田組【石田泰尚(ヴァイオリン)鈴木康浩(ヴィオラ)辻本 玲(チェロ)米長幸一(コントラバス) 他】シューベルト:鱒、糸を紡ぐグレートヒェン、菩提樹/シューマン:献呈、「リーダークライス」より/ブラームス:あなたの青い瞳/R.シュトラウス:献呈/シニガーリャ:ブラームスの主題による変奏曲 他白川深雪(ソプラノ)ミラージュ・クァルテット【上野美科 竹原奈津(以上ヴァイオリン) 島田 玲(ヴィオラ) 金子鈴太郎(チェロ)】ガヴリイル・ポポーフ:交響曲第1番飯森範親(指揮)東京交響楽団モートン・フェルドマン:バニタ・マーカスのためにマルク=アンドレ・アムラン(ピアノ)収録:2016年10月、横浜みなとみらいホール(ライヴ)アールアンフィニ(ソニー・ミュージックダイレクト/ミューズエンターテインメント)MECO-1041 ¥3000+税録音研究室(レック・ラボ)NIKU-9011 ¥2500+税収録:2016年8月、サントリーホール(ライヴ)オクタヴィア・レコードOVCL-00626 ¥3000+税ハイペリオン/東京エムプラスPCDA-68048 ¥2857+税“神奈川フィルの顔”であるソロ・コンサートマスター、石田泰尚の呼びかけで2014年に結成された男だけの硬派弦楽アンサンブルによる待望のデビュー・アルバム。16年10月の横浜みなとみらいホールにおけるライヴ盤であり、ディープ・パープルやレッド・ツェッペリンなどロックの名作からピアソラ、映画音楽、レスピーギと多岐にわたるプログラムながら、独自の演奏スタイルで貫かれたステージの熱気と会場の興奮が伝わる1枚。朝の清々しい空気を思わせる『荒野の七人』のテーマや気品溢れるレスピーギの古風な舞曲などに、男臭く強面なだけではない“組長”の美学が感じられる。 (東端哲也)ソプラノと弦楽四重奏。異色の組み合わせによるロマン派の名歌曲が、これほど魅力的に響き合うとは。歌うは、京都市立芸大・大学院に学び、独墺伊で研鑽を積み、オペラやリートの檜舞台で活躍するソプラノの白川深雪。対するは、ヴァイオリンの上野美科ら若手の名手によるミラージュ・クァルテット。深みある歌声と自在な表現、言葉の流れを大切に扱う白川に、弦の4人が瑞々しいサウンド創りと絶妙の間合いでぴたりと寄り添う。このあたり、減衰音のピアノではなく、持続音で声に近い表現も可能な弦楽器ならでは。世界初録音となるレオーネ・シニガーリャの弦楽四重奏曲も、美しい名品だ。(笹田和人)ポポーフは、ショスタコーヴィチの2歳年上で友人でもあったソ連の作曲家。本作は1935年の初演後に演奏が禁止された交響曲の日本初演のライヴ録音である。曲は大まかに言えばショスタコーヴィチの第4交響曲の方向性。巨大編成で、シリアスな緊迫感を湛えながら進む、エネルギーに充ちた作品だ。ただCDでは、場面転換の妙や緊密な構成、さらには叙情性を実演以上に感じさせる。演奏はむろん迫力十分だが、強圧的爆演ではなく、テンションとバランスが絶妙に保たれた好演。巧みな木管など東響の健闘も光り、20世紀の新たな傑作発見の喜びを味わえる。(柴田克彦)意外なことに録音に恵まれている作品だが、本演奏は誤解を恐れずに言えば筆者が聴きえた録音中の代表盤3種(名は伏すが)と比較しても最もまとまって“分り易い”と感じる。当盤の72分38秒という演奏時間は比較的速い部類に入ると思われ、それゆえということもあるだろうが、もっと大きな理由は響きの入念な練り上げと微細な差異化にあるだろう。音をドラマタイズする意志が他盤に比べてより感じられるのだが、これをもってまさにアムランならではのフェルドマンになっている、と感じる。尚、ライナーでアムランは本作をボルヘスの小説『バベルの図書館』になぞらえる。なるほど。(藤原 聡)

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