eぶらあぼ 2017.10月号
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206CDCDCDCDピアソラ:ブエノスアイレスの四季/新イタリア合奏団ザ・レヴ・サクソフォン・クヮルテット デビューコンサートクロッシングA・I ~野平一郎&西村 朗 管弦楽作品集/杉山洋一&都響J.S.バッハ 平均律クラヴィーア曲集 第1集/三みよし膳知枝ピアソラ:ブエノスアイレスの四季/ロータ:8½/ボッケリーニ:シンフォニア/カタラーニ:夕べに/プッチーニ:菊新イタリア合奏団 リヴィエ:グラーヴェとプレストグラズノフ:サクソフォン四重奏曲デザンクロ:同フローラン・シュミット:同ザ・レヴ・サクソフォン・クヮルテット【上野耕平 宮越悠貴 都築 惇 田中奏一朗】野平一郎:管弦楽のための「時の歪み」西村 朗:液状管弦楽のための協奏曲野平一郎&西村 朗:ピアノ協奏曲「クロッシングA・I」杉山洋一(指揮)野平一郎(ピアノ)東京都交響楽団J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集 第1集三膳知枝(ピアノ)収録:2017年5月、横浜みなとみらいホール(ライヴ) 他マイスター・ミュージックMM-4015 ¥3000+税収録:2017年3月、東京文化会館(小)(ライヴ) 他日本コロムビアCOCQ-85377 ¥2500+税収録:2016年10月、サントリーホール(ライヴ)カメラータ・トウキョウCMCD-28352 ¥2800+税コジマ録音ALCD-9174, 9175(2枚組) ¥3400+税格調高いサウンドを基調とした緊密なアンサンブル、多彩なニュアンスを駆使し生み出される幅広い表現力を兼ね備えた新イタリア合奏団。彼らの新譜の核となっているのは、やはりアルバムタイトルにもなっているピアソラの「ブエノスアイレスの四季」であろう。官能的なまでに深く力強い音色から、冷たさすら感じる透明感溢れる音色への自在な変化、タンゴのリズムの生き生きとした表情、絶妙なさじ加減によるテンポの“揺らし”、多様なアクセントの使用が融合していることで、鮮やかな情景描写と共に、タンゴを踊る人間たちの魂の交感すら感じさせてくれる。(長井進之介)若手のトップを走る上野耕平をはじめ、全員東京芸大在学中の2013年に結成されたサクソフォン四重奏団のデビューアルバム。「レヴ」は「回転」を意味し、4人のエネルギーを結集して1つの方向に疾走したいとの思いが込められているとのことだが、演奏自体にもそれが表れている。アレンジものを交えずに、同ジャンルの古典的な定番曲ばかりを並べた ―技術的なレベルが高い上に愛好家は曲を熟知している― ある意味大胆なプログラムで、緊張感を湛えた緊密かつ柔軟なアンサンブルを展開。意欲と熱気に溢れた、聴き応え十分の正統派アルバムとなっている。 (柴田克彦)西村と野平は同じ1953年生まれだが、作風は対照的。これは現代音楽シーンの最前線を走る2人が協業したコンサートの記録だが、デジタルな情報の集積の先に身体性を出現させる野平に対し、音楽を情念や想念の表出媒体として追求し息の長いクライマックスを導く西村という違いがよく出ている。膨大な量の音で組み立てられるそれぞれの新曲にも圧倒されるが、スリリングなのは本盤のタイトルとなった競作のピアノ協奏曲で、西村作曲のピアノパートに瞬発して管弦楽で合いの手を入れる野平(第1楽章)に対し、西村は野平作曲のクリスタルな音色のソロをオーケストラで粘りつくように絡めとる(第3楽章)。(江藤光紀)24の階段を上がるごと、繊細に色彩を変化させてゆく。調性と音律が織り成す宇宙こそ、大バッハの「平均律クラヴィーア曲集」だ。三膳知枝は桐朋学園短大・研究科からモスクワに学び、特にバロックから古典期の作品を中心に鮮烈なアプローチを試みる実力派ピアニスト。粒立ち良く、清潔なタッチを最大限に生かし、緩徐楽章の装飾遣いなどに古楽の成果を採り入れつつ、特にフーガではスコアを俯瞰するかのように、全体像をしっかり構築していく。また、第1巻は息子や弟子たちの教育を主目的に書かれ、私的な色合いが濃いが、そんな仄かに温かな風合いも、巧みに掬い取られている。(寺西 肇)
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