eぶらあぼ2017.7月号
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63ペペ・ロメロ ギターリサイタル 2017 ハウザーのゆうべ 9/22(金)19:00 東京文化会館(小)私のリビングへようこそ 9/23(土・祝)13:30 浜離宮朝日ホール問 ペペタス03-3371-6681 http://www.peperomero.pepetas.com/ペペ・ロメロ(ギター)ギター界の巨匠が贈る魅力溢れる2プログラム構成・文:寺西 肇 取材協力:ペペタスInterview “クラシック・ギター界のレジェンド”が、再び来日を果たす。今年で73歳を迎えた現代最高の巨匠、ペペ・ロメロ。親交も深かったドイツの名工、ハウザー2世の製作した銘器で、バッハなどドイツ作品を軸に披露する『ハウザーのゆうべ』(9/22)と、巨匠の息子であるペペ・ロメロJr.が製作した愛器でギター音楽の傑作を奏でる『私のリビングへようこそ』(9/23)、テーマが異なる2つのリサイタルを東京で開催する。  スペイン南部マラガに生まれ、やはり“伝説の名手”だった父セレドニオの手ほどきでギターを始め、超絶技巧と輝かしい音色、豊かな歌心で、若くして国際的に名を知られるようになったロメロ。一方のハウザー家は3代にわたるギター製作の名工だ。 「父とハウザー1世は、製作するギターについて沢山の手紙をやり取りしていました。なぜなら、二人とも切手収集が趣味だったので、お互いドイツとスペインのさまざまな切手を交換したかったのだと思います」 その後も、父のためにハウザー1世が製作したものの、やむなく手放してしまったギターが、再びロメロ家に戻ってくるなど、両家は不思議な縁で結ばれ続ける。 「22日公演で使うハウザー2世による楽器も、弾いたとたんにたちまち惚れ込んでしまいました。色彩感あふれる豊かな音色は、他に類を見ないものです。本来は別の持ち主の手にわたるはずだったのですが、ふとギターの中をのぞき込むと“ペペ・ロメロのために製作”とラベルが貼ってあったのです! こうして、このギターは私のものになりました」 この公演では、「神の声に最も近い」と評するバッハの作品のうち、特に「強く魅了される」というチェロ組曲からのギター編曲版を。さらに、「タレガから受け継がれた要素のひとつ」と言う敬愛の念を胸に、シューベルトやシューマン、ブラームスとドイツ・ロマン派の作品を交え、ソル「《魔笛》の主題による変奏曲」ほか珠玉のギター名曲を交える。 そして、息子のペペ・ロメロJr.が製作したギターは、23日公演で演奏する。まるでロメロの自宅のリビングにいるような寛いだ雰囲気の中、タレガの作品や映画『禁じられた遊び』で知られるスペイン民謡「ロマンス」など、古今の名曲を愉しむことができる。愛弟子であるペペ田代が作曲した、オリジナル2曲が披露されるのにも注目だ。 「作曲家は持てる能力の全てを尽くし、その原体験である“感動”を作品に仕立てようと努力し、それが上手くいけば名曲が誕生する。すると聴衆は『ああ、これだ。この美しさは、私に内在しているものだ!』と共鳴し、感動する。私は、そのことをよく知っているのです」 巨匠は静かに、しかし、熱っぽく語った。 いま世界の舞台芸術で最もアツい現代サーカスの雄、それがズィメルマン エ ド・ペロである。これまでも4つの部屋がグルグルと回転する『ハンスはハイリ』などで来日上演してきた。本作はそのメインメンバーの一人、マルタン・ズィメルマンの初ソロ作品である。 ズィメルマンは妙にヒョロ長い手足で歩き回る、その姿だけで面白い。舞台上には「部屋のような空間」があるのだが、じつは外枠しかないのである。しかも徐々に傾いていってパタンと倒れて畳まれてしまう。そしてまたゆっくりと戻る、を繰り返す。安住の場所7/29(土)17:00、7/30(日)14:00 東京芸術劇場プレイハウス問 東京芸術劇場ボックスオフィス0570-010-296 http://www.geigeki.jp/他公演 7/26(水)まつもと市民芸術館(小)(0263-33-3800)Photo:Augustin Rebetezだと思った部屋/世界がなくなって、暗い中にただ独り残されるズィメルマン。ハラハラさせながら、どこか詩的な情景が展開していく。 タイトルの『ハロー』は不思議な言葉で、目の前に人がいれば「こんにちは」という挨拶になり、いなければ「誰かいる?」という呼びかけになる。笑いながらも深く感情が揺さぶられる、そんな作品である。マルタン・ズィメルマン『ハロー』ミステリアスで笑える不思議な世界文:乗越たかお

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