eぶらあぼ2017.7月号
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58大友直人(指揮) 東京交響楽団4人の作曲家が求める“日本”のサウンド文:江藤光紀第99回 東京オペラシティシリーズ8/20(日)14:00 東京オペラシティ コンサートホール問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 http://tokyosymphony.jp/ 大友直人の邦人現代曲への取り組みには、一つの主張を感じる。「現代音楽は難しい」というイメージを打破し、同時代を生きる私たち日本人が素直に楽しめるメロディやハーモニーを積極的に客席に届ける――そんな信念を。 名誉客演指揮者を務める東響の第99回東京オペラシティ定期は、大友の姿勢がよく表れたプログラムだ。まずは芥川也寸志、黛敏郎、團伊玖磨という人気作曲家たちが1953年に結成し、5回の演奏会を通じて戦後の作曲界を牽引した「三人の会」――現代音楽のレジェンドといってもいい活動――にフォーカスする。「弦楽のための三楽章『トリプティーク』」は日本的プリミティヴィズムがモダンな感性とドッキングした、芥川の代表作。中間楽章では鄙びた子守歌も聴こえてくる。團伊玖磨「管弦楽幻想曲『飛天繚乱』」は音聲菩薩(おんじょうぼさつ)という天女のさまを音楽化したもの。華麗な舞や笛の音などが、煌びやかな管弦楽によって彩られていく。大友はこの曲を91年に初演している。黛敏郎の「饗宴」は日本風メロディがジャジーなリズムと融合し、強烈なエネルギーを発散する。バーンスタインにも影響を与えたと言われるほどダイナミックな曲で、第1回「三人の会」で初演された。 後半は“今を生きる音楽”。泉鏡花の原作を黛まどかが台本化し、千住明が音楽を付けたオペラ《滝の白糸》は、2014年の金沢初演時から評判を呼び、その後も再演を重ねている。今回はうち第3幕を、大友をはじめとする初演時のキャスト(ソプラノ:中嶋彰子、メゾソプラノ:鳥木弥生、テノール:高柳圭)でおくる。中嶋彰子三舩優子(ピアノ) × 堀越 彰(ドラム) OBSESSION CD発売記念コンサートピアノとドラムとで拓く未知の領域文:飯田有抄 ピアノとドラム。ありそうでなかった組み合わせのユニットが、クラシック音楽界に新風を巻き起こす。ユニット名はOBSESSION、“取り憑かれる”ことを意味する。ピアノは国内外での活躍が目覚ましい三舩優子、ドラムは1990年に「山下洋輔ニュートリオ」でデビュー以来、精力的に活動を続ける堀越彰。 アーティストとして油の乗り切った2人が最初に共演したのは2014年。すでに多数の公演を行ってきたが、この5月に満を持してデビューアルバム『OBSESSION』をリリースした。ボロディンの「ダッタン人の踊り」、ラフマニノフの前奏曲「鐘」といったクラシックのレパートリーを取り上げ、ピアノは旋律的・和声的にいわば音楽の「前景」を担い、ドラムは時に眩い光のように挿し込み、時に影となって闇を深める。シチェドリンの「バッソ・オスティナート」、ヒナステラの「アルゼンチン舞曲集」、ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」では、推進力に溢れるビートで突き進み、サティの「ジムノペディ第1番」では互いに間合いを測り合いながら奥行きのある音楽をじっくりと作り上げる。耳にするまではピアノとドラムの組み合わせを想像しがたくとも、聴いた瞬間に納得させられ、同時に意外性の連続で“取り憑かれ”てしまう! 7月8日にはヤマハホールでCD発売記念コンサートが開かれる。ショッキングなまでにクールな2人の実演サウンドに胸が熱くなるだろう。生のセッションでこそ味わえる迫力を楽しみたい。©武藤 章7/8(土)14:00 ヤマハホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040http://www.japanarts.co.jp/CD『OBSESSION』オクタヴィア・レコードOVCT-00132¥3000+税鳥木弥生 ©Yoshinobu Fukaya高柳 圭大友直人 ©Rowland Kirishima

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