eぶらあぼ2017.7月号
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51エリアフ・インバル(指揮) 東京都交響楽団 都響スペシャル マーラー:大地の歌2度にわたるマーラー交響曲全曲演奏を経て、更なる高みへ文:山田治生7/16(日)、7/17(月・祝)各日14:00 東京芸術劇場 コンサートホール問 都響ガイド03-3822-0727 http://www.tmso.or.jp/ エリアフ・インバルがふたたび都響とマーラーを演奏する。このコンビは、既に2度のマーラーの交響曲全曲演奏会を行っているが、今回の「大地の歌」は、2012年9月から2014年3月まで遂行されたインバル&都響の「新マーラー・ツィクルス」、及び、14年7月の交響曲第10番(クック版)の続編といえるかもしれない。 インバルは、常に解釈の可能性を探求し、演奏のたびに新たなマーラーを披露する。特に3年前の交響曲第9番や第10番では、表現に一層の深みと大胆さを増していたので、同じ晩年の作品である今回の「大地の歌」はとても楽しみである。また、言うまでもなく「大地の歌」では、歌手が非常に大きな役割を担う。とりわけ長大な終楽章「告別」を歌うコントラルトは重要で、今回、現代を代表するマーラー歌手の一人であるアンナ・ラーションが招かれるのはこの上ない喜びだ。スウェーデン出身のラーションは、クラウディオ・アバドに才能を認められ、アバドのベルリン・フィルやルツェルン音楽祭でのマーラー演奏には欠かせない存在となった。ドイツ出身の気鋭のテノール、ダニエル・キルヒにも期待したい。 演奏会前半の交響詩「葬礼」も注目される。「葬礼」は、後に交響曲第2番「復活」の第1楽章となるが、若きマーラーは、それを単独の交響詩として出版しようとしていたのであった。マーラーの若き日の野心と晩年の澄んだ境地をインバルがどう表現するのか、興味が尽きない。アンナ・ラーション ©Anna Thorbjörnsson鈴木秀美(指揮) 読売日本交響楽団清新な躍動と驚愕の神技に耳目が踊る文:柴田克彦第570回定期演奏会7/12(水)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 http://yomikyo.or.jp/ ベートーヴェンの交響曲第7番は、古楽系の指揮者で聴くとひと味違った面白さを感じる作品だ。古楽奏法が曲の肝となるリズムの要素を明確に浮き彫りにし、贅肉を落としたサウンドが躍動感を増幅させる。ただ通常のオーケストラでは、古楽・モダン双方の特性を熟知し、確固たる様式感をもった指揮者でこそ、その効果が発揮されるといえるだろう。 7月の読響定期で7番を振る鈴木秀美は、まさに適任者だ。バロック・チェロの名手として第一線で活躍してきた彼は、オーケストラ・リベラ・クラシカの音楽監督としても高い評価を獲得。近年は山形響の首席客演指揮者を務めるほか、各地のオケでも手腕を発揮し、読響とも2015年にベートーヴェン「英雄」で初共演して成功を収めている。今回は在京モダン・オケでは初の「ベト7」。様式を踏まえたナチュラルな表現の中に情熱と生気漲る音楽が持ち味の彼が、華麗なサウンドの読響で同曲を披露するとなれば、清新・鮮烈な快演への期待に胸が踊る。 前半は十八番のハイドン。こちらは、珍しい2つの序曲(特に「トビアの帰還」は意外な力作)とホルン、トランペット両協奏曲を並べた選曲がすこぶる興味深い。しかも両協奏曲のソロを同じ奏者が吹くというから驚きだ。ソリストのダヴィッド・ゲリエは、両楽器を巧みに操るフランスの異才。トランペットでは03年ミュンヘン国際コンクールでM.アンドレ以来40年ぶりに1位を獲得し、ホルンではフランス国立管等のソロ奏者を務めている。一夜に両楽器で協奏曲を吹くなど前代未聞。本公演は前後半ともに耳目を離せない。ダヴィッド・ゲリエダニエル・キルヒ ©Hermann und Clärchen Bausエリアフ・インバル ©Rikimaru Hotta鈴木秀美 ©K.Miura

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