eぶらあぼ2017.7月号
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43藤岡幸夫(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団大英帝国とソビエト連邦の濃密で気高い響き文:柴田克彦第308回 定期演奏会7/22(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 http://www.cityphil.jp/ エルガーは、「パーセル以来200年ぶりに出現したイギリスの大作曲家」と形容される。東京シティ・フィルの7月定期は、まさにその2人を並べたプログラム。しかもメインとなるエルガーの交響曲第1番は、ちょうど100年前の1907~08年に書かれた作品ゆえに、合わせて300年の時の流れを実感させる。さらに、前半のパーセルの「シャコンヌ」はブリテンの編曲で、間にはショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番が披露される。つまり20世紀のサウンドの多彩さをも体感させる、示唆に富んだ内容だ。 指揮は、英国王立ノーザン音楽大学を卒業後、BBCフィルなどのイギリスのオーケストラや、長く首席指揮者を務める関西フィルでの活躍が光る藤岡幸夫。シティ・フィルでは、2015年11月にヴォーン・ウィリアムズの「田園交響曲」で賞賛を受けており、彼が深く愛するイギリス音楽での定期再登場に大きな注目が集まる。ちなみにパーセルの「シャコンヌ」は、哀愁を湛えた感動作で、エルガーの1番は、悠然たる響きと力強くも高貴な音楽が流れゆく、後期ロマン派風(「威風堂々」風でもある)の大作。今回はこのイギリスの本丸に挑む藤岡の意気込みに、高関健シェフ就任後の演奏密度の向上顕著なシティ・フィルが呼応し、充実の時間をもたらしてくれるに違いない。 独奏は、若くして内外で活躍し、16年には上海アイザック・スターン国際ヴァイオリン・コンクールで優勝した木嶋真優。緊迫感や高度な技巧を要する難曲ショスタコーヴィチの1番は、コンクールで演奏して手の内に入れているだけに、ハイレベルの名奏が期待される。木嶋真優 ©Keiichi Suto第43回 日本フィル 夏休みコンサート 2017親子で愉しむ夏のスペシャルイベント文:守山実花7/21(金)~8/19(土) 東京・神奈川・埼玉・千葉・京都で開催*公演によりプログラムが異なります。詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911http://www.japanphil.or.jp/familyconcertspecialpage/ 子どもたちに向けたコンサートの草分け『日本フィル 夏休みコンサート』。43回目となる今年は、3部構成でクラシック音楽やオーケストラの魅力を味わい、さらにはオペラもしくはバレエの日を選び、楽しめる趣向が凝らされている。 オペラ、バレエの日替わり上演はプログラムの第2部。オペラの日は《カルメン》、バレエの日は『白鳥の湖』、いずれも一度は観ておきたい定番作品が、「日本フィル 夏休みコンサート版」として特別上演される。《カルメン》の演出は、オペラ歌手としてだけでなく演出や訳詞でも活躍する宮本益光。子どもだけでなく大人も楽しめる舞台をつくってくれることだろう。一方バレエの演出は、『ドラゴンクエスト』や『シンデレラ』など幅広い年齢層が楽しめる作品に定評のある鈴木稔が担当。古典バレエならではの美しさが味わえる作品になるのではないだろうか。ソプラノの江原陽子による語りも入るので、子どもたちも容易に作品世界を理解でき、セリフがないバレエはうちの子には難しいのでは? という心配も無用。鈴木作品や古典、さらには意欲的な現代作品の上演で知られるスターダンサーズ・バレエ団が出演し、目と耳でチャイコフスキーの音楽を感じる舞台をつくりあげる。 第1部では、18~20世紀の名曲を演奏。時代による楽器編成の違いも楽しめるだろう。また第3部は「オーケストラの演奏にのってみんなでうたおう」。客席とオーケストラが一体となり、音楽を身体で楽しむことができる。目、耳、そして身体で音楽を体験するこのコンサートは、夏休みの特別な一日として子どもたちの記憶に残ることだろう。江原陽子藤岡幸夫 ©Shin Yamagishi鈴木 稔スターダンサーズ・バレエ団宮本益光

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