eぶらあぼ2017.7月号
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176CDCDCDCDフランク&R.シュトラウス:ソナタ/堤 剛&萩原麻未マイ・フェイヴァリッツ/外山啓介ヴィブラフォンのあるところ/會田瑞樹ライヴイン東京2016 with 石橋尚子/デニス・ブリアコフフランク:ソナタ イ長調R.シュトラウス:チェロ・ソナタ ヘ長調三善 晃:母と子のための音楽堤 剛(チェロ)萩原麻未(ピアノ)リスト:愛の夢第3番、コンソレーション第3番、バラード第2番/シューマン(リスト編):献呈/ドビュッシー:ロマンティックなワルツ、喜びの島/ラヴェル:ラ・ヴァルス 他外山啓介(ピアノ)薮田翔一:Billow 2/渡辺俊哉:Music for Vibraphone/横島 浩:華麗対位法Ⅲ-2 by Marenzio/湯浅譲二:ヴァイブ・ローカス/川上 統:Wolverine/福井とも子:color song Ⅳ -anti vibrant-/木下正道:海の手 Ⅲ/権代敦彦:光のヴァイブレーション 他會田瑞樹(ヴィブラフォン)ヘンデル:フルート・ソナタ ロ短調HWV 367b/シャミナード:コンチェルティーノ/フランク:ヴァイオリン・ソナタ(フルート版)/サン=サーンス(ブリアコフ編):ワルツ形式の練習曲による奇想曲 他デニス・ブリアコフ(フルート)石橋尚子(ピアノ)マイスター・ミュージックMM-4009 ¥3000+税エイベックス・クラシックスAVCL-25938 ¥3000+税コジマ録音ALCD-113 ¥2800+税収録:2016.9/19、JTアートホール アフィニス(ライヴ)ナミ・レコードWWCC-7839 ¥2300+税チェロの巨匠とピアノの俊才が、フランク晩年の傑作とR.シュトラウス10代の意欲作に挑んだ。堤は萩原を深く信頼しているようで、演奏の主導権を彼女に譲る場面が多く見受けられる。たしかに萩原の演奏は卓越しており、絢爛な色彩と香りがすばらしく、しかも雄弁。それに対峙する堤は、持ち前の雄渾さに、瑞々しさも得て、ピアノと火花を散らしたり融合したり、自在な演奏で応答。そして、若者の感性と意欲を引き立てながら、いつしかベテランの大きい世界観が全体を包み込んでいくという、懐深い二重奏の至芸を見せる。作品、演奏とも、やはりフランクの聴きごたえは抜群。 (林 昌英)デビューから10周年という節目を迎えたピアニスト、外山啓介の新譜『マイ・フェイヴァリッツ』。奇を衒った解釈・表現などどこにもないのに、ここにある音楽はすべてが新しい! 深い行間の読み、自然な呼吸感、説得力のある明快な場面転換によって強く心を動かされる。リストの「愛の夢第3番」「コンソレーション第3番」「バラード第2番」、シューマン=リストの「献呈」、ドビュッシーの「喜びの島」、ラヴェルの「ラ・ヴァルス」といった名曲が並ぶが、どの演奏にも作品への敬愛、そして聴き手に寄せる想いが伝わる名盤。外山の芸術は進化し続けている。(飯田有抄)どんなに難しい譜面でも完璧に音にしてくれる奏者がいたら、作り手にとってこれ以上面白いコラボはないだろう。このCDには作曲家の想像力が目いっぱい詰まっている。人間業とは思えないようなスピードで駆け巡る走句の持続(薮田、横島、権代作品)。音が点描風に置かれ詩的に拡散していく様子(渡辺作品)。残響の多いヴィブラフォンの魅力をあえて封印し身体性を押し出すとか(川上作品)、全く違う音へと変容させるとか(福井作品)、特殊奏法の連続で押していくとか(木下作品)。やりたい放題、書きたい放題を一身に受け止めて音にする會田の異能ぶりに、ただ脱帽するよりほかない。(江藤光紀)卓越した技巧と美音、多彩な表現力を武器に、メトロポリタン歌劇場管やロサンゼルス・フィルの首席フルート奏者を歴任するクリミア出身の名手ブリアコフ。当盤では、ロマン派の佳品を軸に聴かせている。実は、昨年9月に東京で開いたリサイタルのライヴ収録だが、スタジオ・セッションと聴きまごうばかりの精緻さ。名手は作品をいったん自身の中で咀嚼し再構築することで、例えば、ヘンデルでは歴史的な作法を踏まえつつ「モダン楽器で演奏すること」の、またフランク(特に第3楽章)や、自身の編曲によるサン=サーンスなどは「フルートで吹くこと」の必然性を浮き彫りにしてゆく。(笹田和人)

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