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68スーパーソロイスツ 第1回 三浦文彰 plays モーツァルト&ベートーヴェン7/17(月・祝)14:00 Bunkamuraオーチャードホール問 チケットスペース03-3234-9999 http://www.ints.co.jp/三浦文彰(ヴァイオリン)俊英がコンチェルト2曲の弾き振りに挑む取材・文:オヤマダアツシInterview ひとつの公演すべてを、一人のソリストによる協奏曲で。こうした趣向の新しいコンサートシリーズ『スーパーソロイスツ』が、エイベックス・クラシックスの主催でスタートする。その第1回目に、同レーベルからCDをリリースしているヴァイオリニストの三浦文彰が登場し、モーツァルト(第5番「トルコ風」)とベートーヴェンの名協奏曲を演奏する。オーケストラは東京フィルハーモニー交響楽団。 「モーツァルトはハノーファーの国際コンクールを受けた16歳の頃から、ベートーヴェンは20歳の頃から弾いていますが、どちらも常に新しい気分で弾けるという追究しがいのある作品です。モーツァルトはコンチェルトであってもオペラのように、さまざまな場面やキャラクターを細かく想定しながら演奏していました。しかし今ではそうしたことも大切にしつつ、大きな音楽の流れや作品の存在感を捉え、スタートからゴールに至る道筋を意識するようになりました。ベートーヴェンは作品自体が“大きな山”のようであり、その演奏は長い旅にたとえられるでしょう。弾き終わっても、また最初から弾きたいと思えるくらい魅力的であり、常に自分との関係を問われているようにも思えます。特に第1楽章は、コンサートがなくても日常的に弾いているほどですから、自分を維持したり意識を明快にするための大切な音楽なのです」 今回は2曲とも指揮者なしの弾き振りにチャレンジ。バッハやモーツァルトの曲ではすでに体験済みだが、ベートーヴェンは初めての取り組みであるため、なおさら注目したくなる。 「どんな曲であれ、コンチェルトは“大きな室内楽”だと思ってきましたし、オーケストラや指揮者とのコミュニケーションも大切にしてきました。弾き振りとなると、ますますオーケストラとの対話が重要になりますし、互いに細やかな反応をしなくてはいけません。基礎的な指揮の仕組みについても知りたいので、指揮者の方にレッスンをお願いしようかと考えています。今回のコンサートは常にチャレンジしていたい自分にとって、どういった新しい音楽をお聴かせできるのかという課題を出されているようなものですから、それにしっかりお応えしたいと思います」 コンサートでは演奏中の姿を複数のカメラで捉え、巨大スクリーンに投影するという試みも。最近ではヴィオラを弾いたり料理に凝ったりしながら、表現の可能性や新しいアイディアについて得ることも多いという三浦だけに、新鮮な音楽が期待できるだろう。6/21(水)19:00 ヤマハホール問 ヤマハ銀座ビルインフォメーション03-3572-3171http://www.yamahaginza.com/hall/他公演6/20(火)東京文化会館(都民劇場03-3572-4311)ドミトリー・シトコヴェツキー・トリオ ~J.S.バッハの世界~本家の演奏で聴く「ゴルトベルク」トリオ版は格別の味わい文:林 昌英 バッハの「ゴルトベルク変奏曲」といえば、かのグレン・グールドによる録音をきっかけに世界的な人気作になったことはよく知られている。そのグールドの演奏に魅せられ、弦楽三重奏版のすばらしい編曲を作りあげたのが、名ヴァイオリニストのドミトリー・シトコヴェツキーである。彼はトリオ版を自ら演奏し続け、1984年録音のCDは今もトリオ版演奏の筆頭に挙げられる定盤となり、2012年には再録音で新たな名演を披露した。弦楽合奏版も編曲・指揮するなど、本作への愛情は衰えることがない。 現在では多くの著名演奏家もこの編曲をとりあげているが、やはり“本家”の演奏は別格の価値を持つ。わずか333席のヤマハホールで味わえるライヴは稀有な体験になること必至だ。ヴィオラのアレクサンダー・ゼムツォフに、再録音に参加したチェロのルイジ・ピオヴァノと、理想的な共演者にも恵まれ、珍しい「3声のインヴェンション(シンフォニア) BW V787-801」も披露される。 ©Yuji Horiドミトリー・シトコヴェツキー

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