201706
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51鈴木秀美(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団晩年のハイドンが描く壮大な世界と自然の賛美文:オヤマダアツシ秋山和慶(指揮) 東京交響楽団ホルンが導く独墺王道プログラム文:柴田克彦第574回 定期演奏会 トパーズ〈トリフォニー・シリーズ〉6/2(金)19:00、6/3(土)14:00 すみだトリフォニーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 http://www.njp.or.jp/第651回定期演奏会6/24(土)18:00 ミューザ川崎シンフォニーホール問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 http://tokyosymphony.jp/ 鈴木秀美の指揮により、ハイドンの壮大なオラトリオ「天地創造」が聴けるのは大きな喜びだが、期待と同時に不思議な興奮を呼び起こす。旧約聖書の『創世記』で描かれる世界の成立(神による6日間の創造)、ジョン・ミルトンの叙事詩『失楽園』で描かれたアダムとエヴァ(イヴ)の誕生。多くの人が文学として知る一連の流れを、ときおり描写的な手法も交えながら生き生きと音楽で表現し、歌い上げていくのがこのオラトリオだ。 交響曲などの演奏でハイドンの音楽語法を追究してきた鈴木だが、蓄積されたノウハウを生かして演奏されるだけに、強い作品愛と生命力は期待以上だろう。鈴木は作品の魅力について「確かな信仰と神への感謝が、自然への感謝や生きていることへの感謝になり、聴き手は大きな共感をおぼえるはず。自然への愛着や慈しみも感じられ、雨風や雷、動物など自然の様子を模した表現は 「生まれつき両腕がない」ホルン奏者が、6月の東響定期に登場する。その名はフェリックス・クリーザー。1991年ドイツに生まれ、4歳でホルンに興味を持った彼は、5歳からレッスンを受け始め、左足でのバルブ操作を習得。17歳で名門ハノーファー音楽演劇大学に進み、ベルリン・フィルの元奏者マルクス・マスクニッティやペーター・ダムに師事した。その後、ラトルやスティング等と共演し、ベルリンのフィルハーモニーやミュンヘンのガスタイク等の著名ホールで演奏するほか、CDも複数リリース。エコー・クラシック賞最優秀新人賞やレナード・バーンスタイン賞を受賞している。器具にホルンを固定し、足の指でバルブを操って演奏する姿は、YouTubeでも話題を呼んでいるが、その凄さは何より演奏そのものにある。テクニックは抜群で、音色は美しくコクがあり、フレージングは滑らかで表情豊か。特に同楽器では実現至難な音楽の自然さに驚かされる。今聴いていて楽しいものです」と語る。 天使たちやアダムとエヴァを歌う、中江早希(ソプラノ)、櫻田亮(テノール)、多田羅迪夫(バス)といった声楽ソリストたち。鈴木の薫陶を得た合唱団「コーロ・リベロ・クラシコ・アウメンタート」の充実した響き。そして鈴木回は、伝ハイドンとモーツァルトの協奏曲を2曲披露するので、管楽器ファンならずとも必聴・必見だ。 指揮は同楽団の桂冠指揮者・秋山和慶。オーストリアの協奏曲以外は、ウェーバーの《オベロン》序曲とブラームスの交響曲第1番という王道のドイツ音楽が並ぶ。この2曲、実はいずれもかつて学んだフランス・ブリュッヘンと、2009年に「天地創造」を含むハイドン・シリーズを行った新日本フィル。鈴木は「共通の価値観、美観を見出して音楽作りをする幸せを味わいたい」と期待を表明しており、その充実した音楽が楽しみになってくる。もホルンに重要なソロがある。名作プロと見せながらの、こうしたさりげない仕掛け(統一性)もニクい。そして今の秋山の表現は、円熟の奥行きだけでなく、アグレッシブなエネルギーに満ちており、毎回密度が濃い。それゆえ本公演は、聴き終えての充足感が確実に約束されている。中江早希 ©Shigeto Imuraフェリックス・クリーザー ©Maike Helbig櫻田 亮 ©Ribaltaluce鈴木秀美 ©K.Miura多田羅迪夫秋山和慶

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