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50Parfum du Futur vol.17JAPAN NOW6/25(日)14:00 東京文化会館(小)問 カメラータ・トウキョウ03-5790-5560http://www.camerata.co.jp/CD『JAPAN NOW』カメラータ・トウキョウCMCD-28349¥2800+税6/10(土)発売飯野明日香(ピアノ)日本の優れたピアノ音楽を世界に向けて発信したい取材・文:伊藤制子Interview 名だたる現代作曲家の選りすぐりの作品が並んだディスク。曲ごとにまったく異なる表情を見せるその多彩な演奏にはまさに舌を巻くばかり。6月10日に『JAPAN NOW』という新譜をリリース、併せてほぼ同内容で発売記念のリサイタルを開催する飯野明日香は、フランス現代音楽や一柳慧作品の演奏で、近年脚光を浴びているピアニストである。 「ピアノを始めたのは3歳くらいからで、ヴァイオリンの前橋汀子さんの妹さんである由子先生に師事しました。現代音楽に本格的に取り組むようになったのは、パリとブリュッセルの留学から帰国してからです。海外での生活を経て、こんなにも素晴らしい邦人作品があるのだから、日本人である自分がそうした作品と向き合っていかなくてはと痛感しました」 ディスクの曲目でまず目をひくのは、一柳慧のピアノ協奏曲第4番を飯野自らが編曲した「JAZZ FANTASY」である。 「二台ピアノ版をもとに、私が多少の短縮や加筆をして仕上げました。本当は先生ご自身に編曲をお願いしたのですが、結局お許しも得て、私が編曲することになりました」 他にも細川俊夫、田中カレン、藤倉大など、実に魅力的な作品が収録されている。 「田中さんの『テクノ・エチュード』は初めて聴いた時に大変衝撃を受けた曲で、ダイナミックなパワーが必要な難曲です。細川さんの『エチュードⅣ』と藤倉さんの『2つの小品』には、〈あやとり〉という同じ題名の曲が含まれていますが、呪術的な面がある細川作品と音が少なくクールなテイストの藤倉作品とを聴き比べていただけると作品の個性が際立ち、面白さが倍増すると思います」 現代作品に取り組むことを通じて、作曲家本人と直接対話ができるのも大きな魅力だという。 「湯浅譲二先生の『内触覚的宇宙Ⅱ・トランスフィギュレーション』は残響の美を感じさせる品格のある作品です。以前、この作品を直接レッスンしていただき、大変刺激を受けました。私自身が委嘱した金子仁美さんの『中世から』、そして西村さんの『マツヤ(魚)』も今までに体験したことのないピアノの音世界を教えてくれた、個性豊かな素晴らしい作品ですので、響きの違いなども楽しんでいただけると嬉しいです」 リサイタルでは、高橋裕への委嘱新作「宙(そら)の風」を世界初演する。 「高橋先生は高校時代の恩師でもあり、ぜひ新作をお願いしたいと思い、今回実現しました。洒脱なタイトルの曲でとても繊細な響きで始まります。今回の新譜とリサイタルでは、“日本発海外”ということを強く意識していますので、ひとりでも多くの方に日本人作曲家の多様な作品世界をご堪能いただきたいと思っています」6/23(金)19:00 トッパンホール問 トッパンホールチケットセンター  03-5840-2222http://www.toppanhall.com/ロジェ・ムラロ(ピアノ)師メシアンの秘曲を世界初演!文:飯田有抄©Alix Laveau トッパンホールでメシアン作品の世界初演! そんな驚きの嬉しい出来事が6月に起こる。 ピアニストはメシアン本人に激賞され、メシアン弾きの第一人者として圧倒的な存在感のあるロジェ・ムラロだ。3年ぶりのトッパンホール出演となるムラロは、メシアンがドビュッシーの生誕100年(1962年)の祝賀用に着手しつつも未完で終えてしまった協奏曲「エローに棲まうムシクイたち」を、メシアン財団とフランス国立パリ図書館からの依頼を受けてソロ用に“再構成”、世界各地での演奏に先駆けてここ日本で披露する。地中海に面したエロー県でメシアンが耳にした鳥の声は、どのような響きとなって届けられるのだろうか。 演奏会はシューマンの「森の情景」に始まり、メシアン後にワーグナー=リストの「紡ぎ歌」「イゾルデの愛の死」を挟み、ドビュッシーの「12の練習曲 第1集」で締めくくるというもの。浮かび上がる自然と知性の美的世界が、聴き手の感覚を研ぎ澄ませてくれることだろう。

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