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42シモーネ・ヤング(指揮) 読売日本交響楽団強靭に描かれる20世紀前半の対照的名作文:柴田克彦石井清子舞踊生活80周年記念公演 東京シティ・バレエ団『コッペリア』輝かしいキャリアをカンパニーが十八番の演目で讃える文:上野房子第569回定期演奏会 6/24(土)18:00 東京芸術劇場 コンサートホール第17回大阪定期演奏会 6/26(月)19:00 フェスティバルホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 http://yomikyo.or.jp/7/8(土)17:00 、7/9(日)14:00 ティアラこうとう問 東京シティ・バレエ団03-5638-2720 http://www.tokyocityballet.org/ 今や日本でもおなじみのシモーネ・ヤングが、読響と初共演を果たす。しかもメインがR.シュトラウスの「アルプス交響曲」ゆえに注目度は高い。 ヤングは「“女性”指揮者」の呼称を不要にした実力者。2005~15年ハンブルク国立歌劇場の総裁及びハンブルク・フィルの音楽総監督を務め、ウィーン&ベルリン・フィル、ウィーン国立歌劇場等の一流どころに多数客演している。今回特に目を向けたいのが、ドイツ後期ロマン派とオペラでの実績。なぜなら、スペクタクルな「アルプス」も、本質的には登頂者の1日を細密に描いた心象劇だからだ。その点ヤングは、ドラマティックで起伏の大きな表現が持ち味だし、バイエルン国立歌劇場の《エレクトラ》《サロメ》《影のない女》、昨年の東京二期会での《ナクソス島のアリアドネ》など、シュトラウス・オペラで賞賛されている。そんな彼女と華麗で高機能の読響の顔合わせとなれば、迫真的描写の深層に迫る名 東京シティ・バレエ団は、江東区を拠点とするバレエ団だ。同区と芸術提携を結び、1994年に開場したティアラこうとう(江東公会堂)を“ホーム”にして公演を行なっている。 7月に上演する『コッペリア』の会場もティアラこうとうだが、サブタイトルいわく、「石井清子舞踊生活80周年記念公演」。 石井は、1968年に日本初の合議制バレエ団として誕生した同団の創設以来のメンバーで、長らく理事長を務め、現在は顧問としてバレエ団をサポートしている。加えて、江東区は彼女の生地でもあり、地元の子供達と同団の協働による『くるみ割り人形』を冬の風物詩に育て上げた実績を持つ。言うなれば、江東区のバレエ振興の推進役なのだ。同団公演の常連なら、トレードマークのロングスカーフをふわりと身に着け、談笑の輪の中心にいる石井の姿を見かけたことがあるだろう。演が期待される。 前半のプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番では、ベフゾド・アブドゥライモフの独奏に熱視線が注がれる。1990年ウズベキスタン生まれの彼は、アメリカで学び、ゲルギエフ、デュトワやミュンヘン・フィル、ボストン響等と共演している期待株。2009年ロンドン国 かくして、石井のキャリアの節目を祝うべく、本人の演出・振付による人気演目『コッペリア』が、本拠地のティアラこうとうにお目見えする。 主役は、バレエ団の中核を支える中堅を配したダブルキャスト。お茶目なヒロイン、スワニルダには、3月公演で日本初演されたウヴェ・ショルツ振付『オクテット』でも主要パートを演じた清水愛恵(8日)と中森理恵(9日)が登場する。スワニルダと相思相愛ながら、美少女人形コッペリアも気になるフランツ役は、韓国出身際ピアノ・コンクール優勝時に聴衆を熱狂させ、デッカでの協奏曲デビューCDで鮮烈な演奏を聴かせているプロコフィエフの3番ならば、強靭かつ洗練された彼の本領が存分に発揮されるに違いない。近い時期(6年前)に書かれた「アルプス」との対比を含めて、興味が尽きないコンサートだ。の貴公子ダンサー、キム・セジョン(8日)と、昨年、名古屋の松岡伶子バレエ団から移籍した中弥智博(9日)。地元愛のみならず、国内外の才能を受け入れる懐の深さも、同団の特徴である。ベフゾド・アブドゥライモフ ©B.Ealovega/DECCAシモーネ・ヤング ©Klaus Lefebvre『NHKバレエの饗宴 2013』より ©瀬戸秀美

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