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39樫本大進(ヴァイオリン) & アレッシオ・バックス(ピアノ)同世代デュオの直感が共鳴しあう特別の選曲文:オヤマダアツシアレクサンドル・ラザレフ(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団グラズノフの隠れた逸品とプロコフィエフの刺激的な名作を文:飯尾洋一7/12(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-30407/16(日)14:00 横浜みなとみらいホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040/神奈川芸術協会045-453-5080※全国公演の詳細は右記ウェブサイトでご確認ください。 http://www.japanarts.co.jp/第691回 東京定期演奏会6/16(金)19:00、6/17(土)14:00 東京文化会館問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 http://www.japanphil.or.jp/ ソリストとして、室内楽奏者として、さらにはベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の第1コンサートマスターとして、幅広く豊かな演奏活動を続けている樫本大進。その樫本が「互いに刺激を受けながら、その時にしか生まれない特別なもの」を生み出すパートナーとして選んだ、イタリアのピアニスト、アレッシオ・バックス。同年代の2人によるデュオは日本全国7ヵ所を巡る演奏ツアーを行うが、東京では7月12日に、横浜では同月16日にその充実した音楽が聴ける。 モーツァルト、ブラームス、シマノフスキ、グリーグ(7/12)、そしてラヴェル(7/16)という、一見すると関係性が薄い5作品ではあるが、これを結び付けているのは樫本の「楽器に触れた瞬間の直感的なインスピレーションを、聴き手に届けたい」という思いであり、食べることが好きだという2人が贈る、“多彩な料理のコース”だともいえるだろう。「異なる作風の音楽を並べることでコ 2008年9月から8年間にわたり日本フィルの首席指揮者を務め、現在は桂冠指揮者兼芸術顧問として引き続き同楽団指揮者陣の一角を担うアレクサンドル・ラザレフ。その妥協を許さない音楽作りは日本フィルに大きな実りをもたらしてきた。プロコフィエフの交響曲全曲にはじまり、「ラザレフが刻むロシアの魂」と銘打ってラフマニノフ、スクリャービン、ショスタコーヴィチといったロシアの作曲家をとりあげ、現在はグラズノフに取り組んでいる。まさにロシア音楽の伝道師とでも呼ぶべきか。 そして、この6月の東京定期では、グラズノフのバレエ音楽「お嬢様女中」、プロコフィエフのピアノ協奏曲第1番(独奏は若林顕)とスキタイ組曲「アラとロリー」を取りあげる。このコンビでしか聴けない貴重なプログラムといっていいだろう。 グラズノフのバレエ音楽のなかではントラストが生まれ、共通する美意識と新しい何かの創造が期待できる」というバックスのコメントにもうなずける。 これまでにも多くの音楽祭などで室内楽を演奏し、2015年には台湾でデュオのツアーを実施。互いの理解をさらに深めたという2人だが、ゆっくりと、し「四季」や「ライモンダ」ならまだしも、「お嬢様女中」はなじみのない方がほとんどだろう。グラズノフの新たな魅力を発見することができそうだ。一方、プロコフィエフの両作品はいずれも1910年代の作品。先鋭で挑戦的な作風を掲げ、もっとも威勢のよかったかし確実に醸成してきたデュオとしての音楽があるからこそ、今回のツアーへつながったといえるだろう。ゆえに2人にとっては室内楽の理想を現実化するステージでもあり、私たちにとっては新しい音楽の愉悦を体験できるチャンスとなるのだ。時代の名曲である。「アラとロリー」のひりひりとするような熱さ、ピアノ協奏曲第1番の無機的なポエジーや歪んだユーモアは、この作曲家の魅力を最大限に伝えるもの。若林顕の技巧とラザレフの統率力が、強烈なインパクトをもたらしてくれるにちがいない。アレッシオ・バックス ©Lisa-Marie Mazzucco若林 顕 ©Wataru Nishida樫本大進 ©Daisuke Akitaアレクサンドル・ラザレフ ©山口 敦

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