201706
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名手たちが聴かせるアンサンブルの妙技に酔う ベートーヴェンのピアノ三重奏曲「大公」、ブラームスのピアノ五重奏曲、シェーンベルクの「浄夜」(弦楽六重奏)、ラヴェルの「序奏とアレグロ」(弦楽四重奏+ハープ、フルート、クラリネット)。これらは今年の「チェンバーミュージック・ガーデン」の公演の中で演奏される室内楽の傑作のほんの一部。編成もそれぞれに違うので、あの楽器に関心がある、というような聴き方も出来るだろう。 まず9月15日のオープニングはサントリーホール館長である堤剛による「堤剛プロデュース2017」。2016年秋から「サントリーホール室内楽アカデミー」のファカルティ(指導者)に就任した原田幸一郎、池田菊衛(ヴァイオリン)、磯村和英(ヴィオラ)、毛利伯郎(チェロ)、練木繁夫(ピアノ)に加え、堤(チェロ)、豊嶋泰嗣(ヴィオラ)が集まり、ブラームスの弦楽六重奏曲第1番とピアノ五重奏曲を演奏する。いずれも世界的に活躍して来た演奏家たち。会場であるサントリーホールのブルーローズに、素晴らしい音が満ちる瞬間が待ち遠しいという方も多いだろう。 そのファカルティを中心とした演奏会は「マスターおすすめの室内楽」として「弦楽器編」(9/17)と「ピアノ編」(9/18)が開催されるが、その「弦楽器編」でシェーンベルクの「浄夜」が演奏される。「ピアノ編」では、ヴァイオリンにフェデリコ・アゴスティーニを迎えて、リヒャルト・シュトラウスの珍しいピアノ四重奏曲などを披露する。“60分”コンサートで多くの人に心の潤いを 昼の時間帯の1時間の公演は「プレシャス1pm」というタイトルで3回、開催される。その「Vol.1」(9/19)はクァルテット・エクセルシオがモーツァルトの「狩」から第1楽章、ラヴェルの弦楽四重奏曲から第1・第4楽章など、弦楽四重奏曲の名曲の美味しいところばかりを集めて贈るコンサート。「Vol.2」(9/20)は小山実稚恵(ピアノ)、竹澤恭子(ヴァイオリン)、堤剛(チェロ)が、シューベルトの「アルペジオーネ・ソナタ」とベートーヴェンのピアノ三重奏曲「大公」を演奏する。「Vol.3」(9/22)は吉野直子(ハープ)、上野由恵(フルート)、川本嘉子(ヴィオラ)によるボニ、バックス、ドビュッシー、武満徹という麗しくも香しいプログラム。昼の1時間を音楽に浸って過ごしたい方はぜひ。 もちろん若手の演奏家も参加する。「アジアンサンブル@TOKYO」(9/16)では成田達輝(ヴァイオリン)、宮田大(チェロ)、ハオチェン・チャン(ピアノ、ヴァン・クライバーン国際コンクール優勝者)というアジアを代表する若手実力派3人が共演。ラヴェルとシューベルトのピアノ三重奏曲などを披露する。また、シリーズ後半の「三重奏の愉しみ Ⅰ」(9/22)ではザルツブルク出身の3兄弟による「ヘーデンボルク・トリオ」がそのヴェールを脱ぐ。長男の和樹と次男の直樹はウィーン・フィルのメンバーとしても活躍しているので、ご存知の方も多いかもしれない。三男の洋はピアニスト。トリオとしての日本デビューとなるこのコンサートではブラームスのピアノ三重奏曲第1番などを演奏する。サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン2017─ブルーローズ(小ホール)が 室内楽の名曲・名演で満ちるとき─文:片桐卓也 小編成だからこそ可能な演奏家同士の親密な会話。それが室内楽を聴く醍醐味のひとつだが、名手、名曲が揃えば、その醍醐味はさらに忘れられない音楽体験に変わる。毎年6月に行われてきた室内楽の祭典「サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン」。今年は8月末までサントリーホールが休館中ということもあり、9月中旬に行われることになった。10日間に凝縮された今年の“室内楽の庭”の魅力を、これからご紹介しよう。
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