201706
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23初来日のブリュッセル・フィルとラヴェル&ベートーヴェンで共演!取材・文:長井進之介 写真:中村風詩人 ミュンヘン出身のモナ=飛鳥・オットは、数々の国際コンクール優勝歴を誇り、幼少時より世界から注目を集めてきたピアニスト。多くの音楽祭から招かれ、様々なオーケストラとの共演も多い彼女が、6月にラヴェルのピアノ協奏曲ト長調とベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」を引っさげてツアーを行う。共演は初来日となるブリュッセル・フィルハーモニー管弦楽団。率いるのは2015年より同団の音楽監督に就任し、「ヨーロッパ最注目の指揮者の一人」と評価されているステファヌ・ドゥネーヴだ。オットが演奏会で披露してきたものはこれまでドイツ・ロマン派の作品が中心であったが、近年はフランスものにも積極的に取り組んでおり、今回演奏するラヴェルのピアノ協奏曲も重要なレパートリーである。 「この作品はラヴェルがアメリカに行った際、様々なジャズバーに出かけた経験からインスピレーションを受けて書かれたため、ジャズ的な要素が随所に表れています。特に1楽章は右手と左手のリズムの刻み方が違う上に、オーケストラもそれとまた違うリズムを刻んでいくので、本当に楽しい躍動感が生まれます」 散りばめられた超絶技巧と多様なリズムが展開して眩い世界観を提示する作品に、オットは自然体で取り組んでいく。 「数年前にはじめて弾いたときはリズムを数えることに必死なところもありましたが、当時の指揮者エド・デ・ワールトさんに“リズムにとらわれず、ジャズバーで楽しんでいるように弾いてみて”と言われ、即興的な感覚を取り入れたところ、一気に音楽が自由になりました。2楽章の涙が出るような美しさも感動的です。私は舞台に立つとき、様々な感情をお客様と分かち合うことを常に大切にして演奏しています。ラヴェルでもそれを感じていただきたいですね」 一方、独奏曲にも数多く取り組んできたベートーヴェン作品では「皇帝」もオットの重要なレパートリーである。 「『皇帝』は変ホ長調で書かれています。これは『英雄交響曲』など、激動の時代に書かれた作品にも使われた調であり、私はベートーヴェンにとって“平和”を意味するものだと思っています。今も世界中で痛ましい事件が起こっていますから、私は平和を願いながら、この『皇帝』を力強く演奏したいです」 多様なリズムと感情、世界観を持つ作品。彼女は“皇帝”の堂々とした輝かしいイメージを強くもっているという。 「王の行列をたくさんの人が迎える様や、荘厳な雰囲気の玉座に堂々と座る姿が見えます。多彩で華麗なリズムは“王”を讃えて踊る様子のイメージにも結びつきますね」 このイメージは「皇帝」をはじめて弾いたときの思い出も強く影響している。 「ミュンヘンのプリンツレーゲンテン劇場で弾いたのがはじめてだったのですが、このホールは皇帝の時代を思わせるような壮麗さがあります。当日は満席だったので、普段はクローズしている2階のボックス席にも人がいて、大歓声をいただきました。その雰囲気のなかでこの作品を弾けたことは幸せでしたね。今でも脳裏に焼き付いています」 ブリュッセル・フィルハーモニー管弦楽団と指揮者ステファヌ・ドゥネーヴとは初共演となる。フランスものの演奏において特に評価の高い彼らとの共演に期待が膨らんでいる様子だ。 「ドゥネーヴさんはとてもニュアンスの変化を大切にし、リハーサルを緻密に行う方と聞いています。私は指揮者と細かく作品について話しながら取り組むのが好きなので、いまからとても楽しみです」 師事したカール=ハインツ・ケマリングから「自分の持つイメージを大切にした演奏」をすることを徹底的に学んだオット。作品から感じた感情や情景を丁寧に読み取り、音にしていく、エモーショナルな演奏によるラヴェルとベートーヴェンに期待が膨らむ。シューベルトとリストのプログラムによるCDデビュー(OEHMS Classicsより)も決定し、近年は室内楽にも積極的に取り組んでいるという彼女の今後にもぜひ注目したい。ステファヌ・ドゥネーヴ(指揮) ブリュッセル・フィルハーモニー管弦楽団共演:モナ=飛鳥・オット(ピアノ)曲/ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」 交響曲第3番「英雄」 他6/11(日)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール問 テンポプリモ03-3524-1221 http://www.tempoprimo.co.jp/他公演 6/9(金)武蔵野市民文化会館(0422-54-2011)※、6/10(土)愛知県芸術劇場 コンサートホール(中京テレビ事業チケットセンター052-320-9933)、6/12(月)札幌コンサートホールKitara(011-520-1234)、6/14(水)石川県立音楽堂(ケィ・シィ・エス076-224-4141)、6/15(木)姫路市文化センター(079-298-8015)、6/16(金)東広島芸術文化ホールくらら(082-426-5990)、6/17(土)ハイスタッフホール(観音寺市民会館)(0875-23-3939)、6/18(日)福岡シンフォニーホール(092-725-9112) ※6/9はオーケストラのみの公演Information
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