201706
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184SACDCDCDCDPRAYER ートランペット&オルガン作品集ー/佐藤友紀&高橋博子マーラー:交響曲第1番「巨人」/ユロフスキ&ロンドン・フィルオルフェ/ヨハン・ヨハンソンJ.S.バッハ:インヴェンション・シンフォニア/中井正子バルダッサーレ:トランペット・ソナタ/アルビノーニ:トランペット協奏曲変ロ長調/フォーレ:ピエ・イエズ/ダマーズ:3つの無言の祈り/テレマン:英雄的行進曲/ヘンデル:涙の流れるままに 他佐藤友紀(トランペット)高橋博子(オルガン)マーラー:交響曲第1番「巨人」ウラディーミル・ユロフスキ(指揮)ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団ヨハン・ヨハンソン:フライト・フロム・ザ・シティ、ヨーロッパに捧げる歌、沈んだ世界、カオスとの契約、ノロジカや野の雌鹿にかけて、まばゆい街、光と影、オルフェ賛歌 他ヨハン・ヨハンソン(ピアノ、エレクトロニクス、パイプオルガン、電子オルガン) 他J.S.バッハ:インヴェンションBWV772-786、シンフォニアBWV787-801中井正子(ピアノ)オクタヴィア・レコードOVCC-00136 ¥3000+税収録:2010.12/4、ロンドン(ライヴ)エイベックス・クラシックスAVCL-25930 ¥2000+税ユニバーサルミュージックUCCH-1043 ¥2500+税コジマ録音ALCD-7212 ¥2800+税2006年から東京交響楽団の首席トランペット奏者に就任、以来同団の好調に寄与し続けている佐藤友紀。長らく我が国の代表的な名手として活躍中だが、意外にも当盤が初のソロアルバム。バロック作品をベースにして、「祈り」をテーマにしたロマン派〜20世紀作品を挟む構成で、佐藤のノーブルな音色と繊細なフレージングによる歌がどこまでも優しく心地よい。トランペットの抒情的な表現力と共に、高橋博子のオルガンの温かい音が滋味あふれて絶妙で、帯にある「天上の世界」という言葉がふさわしい美しさ。初夏から梅雨の夜にもぴったりの、穏やかな癒しを得られる一枚だ。(林 昌英)秋に来日するユロフスキ&ロンドン・フィルによる2010年録音の「巨人」。勢いのある演奏から、人気ぶりがよく伝わってくる。両端楽章は断片を巧みにつないで、静から動へ鮮やかに切り替える。クライマックスのサウンドにスピード感があり、気づかぬうちに大きな波に乗せられているかのような爽快感を覚えた。陶然とした「花の章」を第2楽章に復元し、続くスケルツォ主題では対照的に弦に思いっきり歯切れよく歌わせるなど、楽章間のつながりも意識させる。ライヴの躍動感を精度の高いアンサンブルで実現、ブリリアントに響く金管でアクセントを効かせる。ユロフスキの芸風を知るにはうってつけ。(江藤光紀)静寂から静かに沸き上がってくる弦楽オーケストラ。オルガンが奏でる荘厳なオステイナート。時折挿入される電子音や断片的な人の声。これらが幾重ものレイヤーとなり、モノクロームの壮大なサウンドスケープが生まれる。この独特でミニマリスティックな音楽を紡いでいるのは1969年アイスランド生まれの作曲家、ヨハン・ヨハンソン。5月に公開される映画『メッセージ』をはじめとしたサントラを数多く手がけており、あの『ブレードランナー』の続編の音楽も担当している。本作も一曲一曲が短編映画のサントラのような趣きがあり、それぞれが独自のビジュアルイメージを聴き手に想起させる。(大塚正昭)バッハが弟子や息子たちの教育のために編んだ「インヴェンションとシンフォニア」。ピアノを習った経験がある方ならば弾いたことがあるかもしれない。しかし、この曲集の目的は、単なる指のトレーニングだけでなく、当時の音楽の根幹を成す、修辞学的な音楽理論を示すことにこそある。パリに学び、ロン=ティボーなどコンクールで実績を重ねた名手・中井正子は、その意図を完璧に掬い取り、モダン・ピアノならではの表現法に加え、バロック音楽に相応しい拍節感覚とアーティキュレーションで作品に対峙。“バロック音楽の美のエッセンス”としての、作品の魅力を浮き彫りにしている。(寺西 肇)

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