eぶらあぼ2017.5月号
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77©S.Mitsuta7/7(金)19:00 ヤマハホール問 ヤマハ銀座ビルインフォメーション03-3572-3171 http://www.yamahaginza.com/hall/小川典子(ピアノ)思い出のホールで弾くモーツァルトとロマン派の傑作取材・文:高坂はる香Interview 1953年に開館した銀座の旧ヤマハホールは、著名演奏家のコンサートだけでなく、ピアニストを目指す子供たちのコンクールの舞台でもあった。小川典子も、子供の頃に何度も演奏したという。全面リニューアルを経て、2010年に再開館した現ヤマハホールに、もはや当時の面影はないが、このホールへの小川の想いは大きい。来る7月7日、高校生時代以来、またリニューアル後初めて、彼女がその舞台に立つ。 初めてヤマハホールで演奏したのは小学3年生のとき。桐朋学園子供のための音楽教室・成績優秀者の演奏会だった。 「モーツァルトのピアノ・ソナタ第3番を弾きましたが、あまりに緊張してどう弾いたのか覚えていないほどでした。あと、高校1年生の時のコンクールでは本選で一番手になってしまい、『ラ・カンパネラ』でいきなり弦を切ったことがありました。どれも緊張した記憶ばかりですが、今こうして活動するきっかけを作ってくれたホールでの思い出として、大切にしています」 リサイタルでは、そんな思い出の2作品を含むプログラムを用意した。 「モーツァルトのソナタ3番は、子供の頃何気なく弾いていたことを今は難しく感じたり、逆に理屈がわかったおかげで簡単になった部分もあったりしておもしろいです。今回は11番のソナタも取り上げます。モーツァルトの作品は、お砂糖のようなものでくるんであって表の顔は明るいけれど、実際には暗い要素が強い。短調の数小節に真実が隠されていると感じます。楽譜に書かれた指示も少ないので、演奏者の感じ方が露わになる、その意味で“怖い”作曲家です」 後半のメインに置くのは、シューマンの「幻想曲」。 「ロマン派のピアノ曲の“横綱”です。1楽章は弱拍やテンポの揺れが多用されて不安定。当時のシューマンの心境が表れています。2楽章は非常に楽観的で、未解決の問題を乗り越えたかのような勝ち誇った表情を見せ、3楽章は、ロマンティックな音楽の中で2度感情を爆発させます。シューマンは音楽に溺れて弾くことが必要で、のめり込んで演奏した後はそこから戻ってくるのが大変です。でも、演奏家が曲に翻弄されたり足をとられたりしてはいけません。そこを冷静にコントロールしたうえで、裸の感情をぶつけるような音楽を届けたいです」 日本と英国を拠点に、演奏活動に加え、コンクールの審査や「ジェイミーのコンサート」という福祉活動にも取り組む小川。初めてヤマハホールの舞台に立った少女の頃から「快活で元気いっぱいだった」というが、エネルギッシュさは今も変わらない。今後も、広い視野をもって展開される活動に注目したい。6/4(日)14:00 第一生命ホール問 トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702 http://www.triton-arts.net/クァルテット・ウィークエンド2017-2018 アキロン・クァルテット最先端を行く4人のパリジェンヌが初来日文:林 昌英©Agnès Chanut フランスから新しい風が吹く。2011年にパリ国立高等音楽院在学中だった4人のパリジェンヌにより結成されたアキロン・クァルテット。新進の団体ながら、16年の第8回ボルドー国際弦楽四重奏コンクールで満場一致のグランプリに輝き、旋風を起こした。難関として知られる同コンクールでの色彩豊かな演奏が称賛され、今年は室内楽の殿堂、ロンドンのウィグモア・ホール出演をはじめ、日本とヨーロッパ各地のツアーをおこなう。最先端の四重奏団を、第一生命ホールでいち早く体験できるのである。 演目は、ドビュッシーの傑作にデュティユーの「夜はかくの如し」と、名刺代わりのフランス作品から新旧2作が軸に。そこに組み合わせられるのがモーツァルトの第5番・第6番という意外な選択で、神童10代の2作をどう聴かせるのかも興味深い。 「アキロン」とは、天と地を結ぶ「凧」を意味するイタリア語から取られた名前とのこと。その名の通り、新しい才能が風に乗って飛翔していく様を見届けたい。

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