eぶらあぼ2017.5月号
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57ジョナサン・ノット(指揮) 東京交響楽団幕開けから究極の勝負文:柴田克彦〈歌リート曲の森〉~詩と音楽 Gedichte und Musik~ 第21篇・第22篇ナタリー・シュトゥッツマン シューベルトを歌う新たな試みでシューベルトの心象風景を描く文:宮本 明第650回 定期演奏会 5/20(土)18:00第60回 川崎定期演奏会 5/21(日)14:00ミューザ川崎シンフォニーホール問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 http://tokyosymphony.jp/第1夜 室内楽伴奏とともに 5/17(水)19:00第2夜 水車屋の美しい娘 5/19(金)19:00 トッパンホール問 トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 http://www.toppanhall.com/ ノット&東響のコンビも4シーズン目を迎えた。精緻で繊細な東響のサウンドに立体感や生気を付与したノットが、全力かつ長期スパン(音楽監督の任期は2026年まで)で臨む音楽作りから、ますます目が離せないのは自明の理。何より、卓越した分析力とスリリングな即興性を併せ持つライヴ演奏は、予定調和とは無縁の感興と示唆に富んでいるがゆえに、どれも聴き逃すことができない。 新シーズン定期の幕開けは、ブルックナーの交響曲第5番が主軸。当コンビのブルックナーは、3、7、8番に続く4作目となる。これまでの諸作では、荘厳、質朴、あるいは動的な各方向と一線を画し、作品のもつ多様な要素を浮き彫りにしながら、濃密かつ柔軟な名演を展開。中でも昨夏の8番は大絶賛を博した。そして今度はいわばそれ以上の本丸、“ピュア・ブルックナー”の極致ともいえる第5番だ。ノットの言葉 『歌曲(リート)の森』のシリーズは、トッパンホールの自主企画公演の柱のひとつ。文字どおり、ドイツリートに光を当てた貴重な好企画で、2008年のスタート以来、クリストフ・プレガルディエンやイアン・ボストリッジ、マーク・パドモアら、豪華な顔ぶれが次々と登場して、ドイツリートの奥深さを聴かせている。 現代最高のコントラルト、ナタリー・シュトゥッツマンもその一人。同シリーズへの3年ぶりの登場となる5月のコンサートでは、2夜にわたってシューベルトの歌曲を歌う。 その第1夜では、シュトゥッツマンが新たなアプローチに挑戦する。それは、シューベルトの600曲の歌曲の中から18曲をチョイスしたプログラムを、友人のスウェーデン人作曲家イングヴァル・カルコフに依頼して室内楽に編曲した伴奏によって歌うというもの。シューベルトの歌曲伴奏を室内楽に、あるいは管弦楽に編曲する試みにはすでに「非常に美しい」が1つの鍵になりそうだが、どうあろうと期待度は著しく高い。 前半は、人気の小曽根真がソロを弾くモーツァルトのピアノ協奏曲。何と6番だ。20歳時に書かれた同曲は、モーツァルト自身マンハイム・パリ旅行等で再三演奏したお気に入りの作品。溌剌とした愉しい音楽だけに、小曽根のノリとセンスがピタリとハマりそうだし、そもそも実演自体が稀なので、こちらも注目度が高い。 バンベルク響の16年もの任期を成先例もあるが、その成否は編曲自体にかかっている。詩と声楽と伴奏パートが一体となってより高次の芸術世界を生み出すのがドイツリートの大きな特徴。原曲のピアノ・パートの色彩やスケール感が、どのような視座でアンサンブルに反映されるのか興味深い。第2夜は「水車屋の美しい娘」で、こちらはピアノ伴奏。共演は、インゲル・ゼーデルグレン(ピア功裡に終えた後、今年からスイス・ロマンド管の音楽監督に就任し、ウィーン・フィルとの「大地の歌」のCDもリリースされるなど絶好調のノット。彼の今期初公演は、話題性に満ちている。ノ)、四方恭子(ヴァイオリン)、瀧村依里(ヴァイオリン)、鈴木学(ヴィオラ)、大友肇(チェロ)。小曽根 真 ©Yow Kobayashiジョナサン・ノット ©中村風詩人©Simon Fowler

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