eぶらあぼ2017.5月号
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43ファツィオリで聴くコンサートシリーズ アンジェラ・ヒューイット(ピアノ)バッハを巡る壮大なプロジェクトがスタート文:高坂はる香Odyssey 1 5/29(月)19:00 Odyssey 2 5/30(火)19:00紀尾井ホール問 日本アーティストチケットセンター03-5305-4545 http://www.nipponartists.jp/ 1985年のトロント国際バッハ・ピアノ・コンクール優勝でキャリアをスタートし、優れたバッハ弾きとして知られるカナダのピアニスト、アンジェラ・ヒューイット。彼女が、4年間、全12回でJ.S.バッハの全ソロ鍵盤作品を演奏するリサイタルシリーズ『The Bach Odyssey』を日本でもスタートさせる。ニューヨーク、ロンドンでは一足先に行われ、すでに大きな反響を得ているそうだ。 第1弾は、5月29日、30日の2夜にわたって紀尾井ホールで開催。1日目『Odyssey 1』で取り上げるのは、バッハの若き日に書かれたカプリッチョ「最愛の兄の旅立ちにあたって」「ヨハン・クリストフ・バッハをたたえて」などと、30代半ば以降に書かれた「インヴェンションとシンフォニア」、「幻想曲とフーガ BWV904」などを組み合わせたプログラム。一方、2日目『Odyssey 2』では、フランス組曲の第1番から第6番が演奏される。美しく絡み合う複数の旋律、優美で洗練された舞曲の雰囲気を、どこまでも自然な円熟の表現で聴かせることだろう。 ヒューイットは日ごろから、近年ますます評価を高めているイタリアのピアノメーカー、ファツィオリの楽器を愛奏しているが、本シリーズでもピアノはファツィオリを使用。チェンバロ風の軽快な響き、オルガン風のふくよかな響きを、その色彩豊かな音色を生かしていかに表現するのかも楽しみだ。バッハ弾き、そしてファツィオリ弾きのヒューイットならではの音に期待しつつ、4年にわたる旅のスタートの場に居合わせたい。©Peter Hundertエサ=ペッカ・サロネン(指揮) フィルハーモニア管弦楽団21世紀の名匠が名門楽団から引き出す鮮烈なサウンド文:飯尾洋一5/20(土)18:00 東京芸術劇場 コンサートホール5/21(日)14:00 横浜みなとみらいホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040※全国公演の詳細は右記ウェブサイトでご確認ください。 http://www.japanarts.co.jp/ エサ=ペッカ・サロネンとフィルハーモニア管弦楽団の名コンビがまもなく来日する。これまでもたびたび名演を聴かせてきてくれた同コンビだが、両者の関係は1983年まで遡る。当時25歳のサロネンはティルソン・トーマスの代役として急遽フィルハーモニア管に抜擢され、マーラーの交響曲第3番でセンセーショナルな成功を収めた。サロネンが国際的な名声を高めた後もオーケストラとの密接な関係は続き、2008年以降は首席指揮者兼アーティスティック・アドバイザーとして同管弦楽団の新時代を切り拓いている。 今回の来日公演のプログラムには、そんな名コンビの今を知るには最適の曲目が選ばれた。 東京ではリヒャルト・シュトラウスの交響詩「ドン・ファン」と「ツァラトゥストラはかく語りき」がとりあげられる。オーケストラの機能性や色彩感が最大限に生かされる選曲だ。メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲では諏訪内晶子の独奏が聴きもの。 一方、横浜公演はオール・ベートーヴェン・プログラム。交響曲第7番を中心に、サロネンが21世紀にふさわしいベートーヴェン像を描いてくれることだろう。ピアノ協奏曲第3番では、チョ・ソンジンが独奏を務めるのも魅力。ショパン・コンクール優勝者として旋風を巻き起こした新鋭だが、ベートーヴェンは「人生を通じて演奏し続けていきたい作曲家。いつか協奏曲とソナタの全曲ツィクルスに挑みたい」という。サロネンとは初共演。特別な瞬間が訪れるのでは。諏訪内晶子 ©吉田民人チョ・ソンジン ©Harald Homann/DGエサ=ペッカ・サロネン ©Katja Tähjä

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