eぶらあぼ2017.5月号
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気分は明日必ず話したくなる?クラシック小噺capriccioカプリッチョ167教会で音楽を体験してみよう ヨーロッパ旅行中でちょっと気になるのは、教会の存在だろう。バッハの足跡をたどってライプツィヒに行った人は、「礼拝でカンタータが聴けたら…」と思うに違いない。あるいは、ミサ曲は“現場”ではどのように使われているのか。儀式が行われている時に覗いてみたいが、(大抵の人にとっては)他人の宗教ということもあり、ちょっと気が引けてしまうものである。 しかし実際には、教会は外部の人がミサや礼拝に参加することを歓迎している。キリスト教に興味を持ってくれる人がいることは、宣教の観点から大切なことなのである。日本人旅行者が「ミサ曲の実際のあり方が知りたい」などと言おうものなら、「何と高度な関心!」と感心されるだろう。というわけで、機会があったらぜひオブザーバー参加するといい。 もっとも、すべての日曜日で「演奏」が行われるわけではなく、ドイツでは普通、オルガン伴奏のみ。祈祷やコラールは、会衆がごく質素に唱和するだけである。ねらい目はむしろ、聖金曜日やクリスマス等の祝日で、ベルリンのカトリック大聖堂では、オーケストラ伴奏でハイドンやモーツァルトのミサ、バロック時代の受難曲等が取り上げられる。数年前の聖金曜日には、名エヴァンゲリストのゲルト・テュルクが、シュッツのソロ受難曲を歌い、たいへん豪華だった。イースターは復活祭日曜日よりも、復活祭月曜日に音楽ミサが行われることが多く、キリエからアニュス・デイまでを典礼のコンテクストで体験できる。もうひとつおすすめしたいのは、ライプツィヒ・トーマス教会の定例カンタータ演奏である。こちらは、トーマス教会合唱団のほか、Profile城所孝吉(きどころ たかよし)1970年生まれ。早稲田大学第一文学部独文専修卒。90年代よりドイツ・ベルリンを拠点に音楽評論家として活躍し、『音楽の友』、『レコード芸術』等の雑誌・新聞で執筆する。近年は、音楽関係のコーディネーター、パブリシストとしても活動。ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管のメンバーが演奏し、さすがはバッハのお膝元(通常土曜午後)。これら以外にも、合唱の演奏会は、主にアマチュアのものがたくさん行われている。各教会のウェブサイトには、大抵そうした情報が掲載されているので、事前に調べておくと良いだろう。 面白いのは、こうした教会での音楽演奏にも、国によって差があるということ。例えばカトリックの本場イタリアでドイツのような内容を期待すると、かなり面食らう。総本山のサン・ピエトロ大聖堂でさえ、音楽はかなり貧相だと言わなければならない(有名なシスティーナ礼拝堂合唱団も、決して上手ではない!)。ミサ自体も驚くほどあっさりと終り、ドイツのミサの長さに慣れていると、きょとんとさせられる。しかしこれは、ミサがごく日常的なもので、水を飲むように生活に根差している、ということなのだろう。 最後にひとつお願い。儀式中に音楽を聴こうと思ったら、始まる前に入り、終りまでずっと座っていてください。飽きて途中でがさがさと退出、というのはやはり失礼なので、ここは腹を決めて最後まで拝聴しましょう。城所孝吉 No.10連載
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