eぶらあぼ 2017.4月号
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68©Shigeto ImuraN響ゴールデン・クラシック 5/3(水・祝)14:30 東京文化会館問 サンライズプロモーション東京0570-00-3337 http://sunrisetokyo.com/※13:40からホール舞台上で大江馨&N響メンバーによるプレコンサートがあります。大江 馨(ヴァイオリン)新緑の上野で響く極上のコンチェルト取材・文:山田治生Interview 注目の若手ヴァイオリニストの一人である大江馨が、5月3日の『N響ゴールデン・クラシック』に登場し、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を演奏する。 大江は、仙台に生まれ、5歳でヴィオリンを始めた。慶應義塾高校に進学した頃は音楽家になるかどうかは決めていなかったが、「慶應義塾大学1年のときに、日本音楽コンクールの本選に進んだことで、音楽の道でやっていけるかなと思いました」という。法学部に在籍しながら、桐朋学園ソリスト・ディプロマ・コースに通った。そして大学3年の秋に、ドイツのクロンベルクアカデミーに留学し、現在、そこでクリスティアン・テツラフに師事している。 「堀正文先生に留学を相談し、堀米ゆず子先生にクロンベルクアカデミーをすすめられました。そこで教えているテツラフさんがちょうど来日して、パーヴォ・ヤルヴィ&ドイツ・カンマーフィルとブラームスの協奏曲を演奏するのを聴いて強烈な衝撃を受け、即、テツラフさんに習いたいと思ったのです。クロンベルクアカデミーは、弦楽器のみ、世界中から集まった20人ほどが、家族のように学んでいます。テツラフ先生のレッスンは刺激的です。楽譜の読み方が論理的で、あらゆることに根拠付けがしっかりとなされているのですが、アカデミックに弾くのではなく、最終的には自分の心からの歌として演奏することが求められます」 「音楽的な個性は違う」ものの、テツラフの音楽作りに大江はとても共感するという。楽器についても、2ヵ月前からテツラフと同じくシュテファン=ペーター・グライナー製のヴァイオリンを弾いている。 「音色が新作の楽器の感じがしません。それでいてパワーがあり、湿度にも強く、丈夫で、管理が楽でもあります。また、新作だからか、早く馴染めるという良さもありますね」 N響とは今回が2度目の共演となる(1度目は2014年、尾高忠明指揮でプロコフィエフの第1番を弾いた)。指揮はスペイン出身の俊英ロベルト・フォレス・ヴェセス。 「N響は小さい頃からの憧れです。チャイコフスキーは、これまで3回オーケストラと共演していますが、今回、これ以上ない素晴らしい舞台で弾かせていただけるのが本当にうれしいです。この曲は、華やかさやスケールの大きさの点で最高峰の協奏曲の一つだと思います。作品の“山”の大きさやフレーズの長さが特徴的で、山を登っていくときの道のりがとんでもなく長く、常に強く引っ張られるような力や推進力を感じます」 今回のチャイコフスキーは、進境著しい大江を聴く、最高の機会といえよう。6/24(土)18:00 東京文化会館(小)問 東京文化会館チケットサービス03-5685-0650 http://www.t-bunka.jp/Music Program TOKYO プラチナ・シリーズ 1 アルディッティ弦楽四重奏団20世紀と現代の名作が出会う文:江藤光紀©Astrid Karger 弦楽四重奏は完成されたトラディショナルなスタイルで、聴き手のイメージもできあがっている。これは創造の最前線では必ずしも長所ではない。21世紀に入った今も多くの新作が書かれているのは、作曲家とのコラボを通じてあらゆる奏法・試みに果敢にチャレンジし、既存のイメージを大胆に越えていくアルディッティ弦楽四重奏団のような存在があるからなのだ。40年間の活動で初演した曲は数百、CDは170枚を越える。驚異的な能産ぶりを誇る孤高の団体で、彼らの演奏に魅了されて継続的に楽曲提供する作曲家も多い。 今回もラヴェル、バルトーク(6番)という歴史的名曲を始まりと終わりに置き、間に彼らと関わりの深い二人の日本人作曲家を取り上げる。作曲界の両巨頭・西村朗と細川俊夫の作風は対照的。西村が音の洪水によって輝かしいアジア的夢幻を出現させるのに対し、細川は時間・空間の中での音のありようを問うていく。初演曲(西村)も含む今回のプログラムから、20世紀以降にクァルテットが切り開いてきた領域が見えてくるはずだ。
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