eぶらあぼ 2017.4月号
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66©Naoya Yamaguchi若林かをりフルーティッシモ!-フルートソロの可能性-~サルヴァトーレ・シャリーノ生誕70年を讃えて~《vol.4》4/14(金)19:00《vol.5》10/21(土)11:00 近江楽堂(東京オペラシティ3F)問 スリーシェルズ070-5464-5060http://basarachaosmos.wixsite.com/kaoriwakabayashi/若林かをり(フルート)シャリーノの音楽は私にとって魔法のようなものです取材・文:山田治生Interview 若林かをりが、2015年から近江楽堂で現代の無伴奏フルート作品を集めたリサイタル・シリーズに取り組んでいる。今年は、生誕70年を迎えるイタリアの作曲家サルヴァトーレ・シャリーノのフルート独奏のための作品集 第一集・第二集 (全12曲)を、4月と10月の2回に分けて演奏する。 若林は京都生まれ。東京芸術大学卒業後、ストラスブール音楽院でフルートをマリオ・カーロリに師事。ルガーノ音楽院の修士課程では「日本の間(ま)がヨーロッパの現代音楽にもたらした影響」を論文にまとめた。現在は関西を拠点に演奏活動を行う。 シャリーノの作品は、若林にとって特別な意味がある。 「04年、トッパンホールでアーヴィン・アルディッティが演奏したシャリーノのヴァイオリン独奏のための〈6つのカプリッチョ〉を聴いたのですが、『ヴァイオリンでこんな音が出せるんだ!』って衝撃を受けました。その後、05年8月、現代音楽セミナー&フェスティバル“秋吉台の夏”で、カーロリ先生の鮮烈なシャリーノ作品のパフォーマンスを聴いて、フルートでこんな音が出るのかと、私のなかの現代音楽のイメージが一新されたのです。それが、カーロリ先生のもとで現代作品の演奏技術を学びたいと思うきっかけでした。 先生はシャリーノの後期作品の監修(フルートの技巧上のアドバイス)をされていますので、私はシャリーノ作品が吹けるようになるためにカーロリ先生に師事したようなものですね(笑)。シャリーノには11年、東京オペラシティでの『コンポージアム』でお会いしました」 シリーズはこれまで土曜の11時から1時間程度だったが、今年は2時間弱の夜の公演も行う。 「留学中、海外では土日の午前中にコンサートを聴いて、ランチをしたあと遊びに行く、というスタイルをよく目にしました。日本でも、東京だったらこのスタイルは良いんじゃないかな? と思ったんです。ただシャリーノ作品集は1時間ずつでは収まらないので2時間公演も行うことにしました」 シャリーノの作品で現代音楽に開眼し、楽しいと思うようになった。 「シャリーノの作品を聴いたとき、出てくる音にはた・・・まげましたが、それでもちゃんと音楽になっている。それは驚きと新しい音楽の発見でした。特殊奏法が多用されているので普通のフルートのきれいな音はほとんどありません(笑)。シャリーノの音楽は私にとって魔法のようなものです。今度のリサイタルには、フルートの音に驚きに来てください」 若林のシャリーノ作品展は、フルートをよく知っているはずの人も、フルートがどういう楽器なのかを再認識する貴重な機会となるであろう。5/24(水)19:00 紀尾井ホール問 紀尾井ホールチケットセンター  03-3237-0061http://www.kioi-hall.or.jp/紀尾井 明日への扉 16 岡本誠司(ヴァイオリン)円熟味をも湛えた新タイプの俊才文:柴田克彦 楽しみな若手ヴァイオリニストが、紀尾井ホールの「明日への扉」に登場する。名は岡本誠司。1994年に生まれ、今年3月に東京芸大を卒業する彼は、2014年ライプツィヒにおけるJ.S.バッハ国際コンクールのヴァイオリン部門で優勝。64年の歴史を誇るコンクールの同部門で、アジア人初の快挙を成し遂げた。さらに16年ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリン・コンクールで第2位を獲得。「独特な大物感」「柔軟な音楽性と表現力」などと評される彼は、優雅さや品格を湛えた、稀なタイプと思しき俊才だけに注目度が高い。 今回のプログラムは、14年のコンクールと翌年のバッハ音楽祭の折に長期滞在した思い入れのある街=ライプツィヒゆかりの作曲家の作品集。大バッハの無伴奏曲に始まり、実力者・田村響のピアノで、C.P.E.バッハ、メンデルスゾーン、シューマン、グリーグ(同市に留学)のソナタ─しかも演奏機会の少ない曲が多い─を弾く内容にも、ひと味違った個性が表れている。発想力も豊かなその演奏に、ここでぜひ触れてみたい。

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