eぶらあぼ 2017.4月号
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60©武藤 章チェロ・ソナタ・シリーズ〈最終回〉山崎伸子 チェロ・リサイタル with 小菅 優(ピアノ)5/25(木)19:00 紀尾井ホール問 カジモト・イープラス0570-06-9960 http://www.kajimotomusic.com/次代へ伝えたい名曲 第10回 山崎伸子 チェロ・リサイタル5/13(土)14:00 彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール問 彩の国さいたま芸術劇場0570-064-939 http://www.saf.or.jp/arthall/山崎伸子(チェロ)シリーズ最終回は恩師の愛奏曲も取材・文:片桐卓也Interview 山崎伸子が2007年から続けてきた『チェロ・ソナタ・シリーズ』が5月の第10回で最終回を迎える。そのプログラムは、J.S.バッハの「無伴奏チェロ組曲第6番」、マルティヌーの「チェロ・ソナタ第1番」、ラフマニノフの「チェロ・ソナタ」という3曲。共演のピアニストは小菅優である。 この全10回のシリーズ、共演ピアニストの顔ぶれが凄い。長岡純子(11年に逝去)、ヴァディム・サハロフ、野平一郎、小菅優、清水和音、ヴィレム・ブロンズという面々。チェリストにとって最も大事な作品を、このピアニストと共演したい、という山崎の強い想いが感じられるだろう。同シリーズは最初、津田ホールで開催されていた。その津田ホールが閉館し、浜離宮朝日ホールで行われ、最後は紀尾井ホールとなる。その変遷もまた時代を映す。 「そもそものきっかけは長岡さんの演奏を聴いたことからでした。こんな人と一緒に演奏したいという願いから生まれた企画と言っても良いかもしれません。最終回はちょっとロシア寄りな雰囲気のプログラムですが、どれも個性的で、かつ難しい作品。小菅優さんの協力によって、なんとか実現することが出来ました」 マルティヌーのチェロ・ソナタ第1番は、山崎の師であるピエール・フルニエに献呈された作品である。 「先生からこの曲を教えていただくことはなかったのですが、ちょうど私が留学中に、先生が日本でこのマルティヌーのソナタを録音しているんです。その時はすでにお年だったのですが、かなり若々しいエネルギーの感じられる録音で、それに負けないように頑張らなくてはと思っています」 この10年シリーズの中で小菅優との共演は3度目。 「とにかく集中力が素晴らしい。常に音楽のことを考えて、生きているという感じ。それにリハーサル中でも自分の意見をきちんと伝えてくれます。それはやはりドイツでの生活の中で培ったものなのでしょうね」 この『チェロ・ソナタ・シリーズ』の前には彩の国さいたま芸術劇場の企画『次代へ伝えたい名曲』シリーズの第10回にも出演する山崎。ここでは武満徹の「オリオン」を含め、ベートーヴェン、マルティヌー、ショパンのソナタを披露する(ピアノは加藤洋之)。 「日本人にとって、特に女性がチェロを弾くということはなかなか大変なこと。それを踏まえて、どうやって合理的に自分の身体を使うかということも、次代へ伝えていきたいですね」 どちらも、受け継がれていくものの大切さを知る、そんなコンサートになりそうだ。5/9(火)19:00 東京文化会館(小)問 プロアルテムジケ03-3943-6677http://www.proarte.co.jp/小杉麻梨子(ピアノ)ロマン派の名作に浸る一夜文:笹田和人 折り目正しさとしなやかさが同居する、独自の響きの世界を形づくるピアノの小杉麻梨子。桐朋学園女子高等学校音楽科を首席で卒業後、ロシアの名門・チャイコフスキー記念国立モスクワ音楽院に学び、国際コンクールでの優勝や入賞などの実績を重ねた。 国内のみならず、ロシアやスイスでも、リサイタルを開催。第一線オーケストラとの共演や室内楽でのステージ経験も数多い。特に師の1人である巨匠イェルク・デームスからの信頼は厚く、2006年と08年には、オーストリア・ザルツブルクのミラベル宮で共演。12年に王子ホールで開いたソロ・リサイタルは、高い評価を得た。 今回のリサイタルは、シューベルト最後のピアノ・ソナタである第21番を核に。ここへ、“ピアノの詩人”ショパン特有の憂愁と熱情に満ちた「2つのポロネーズ」(op.26)と、ブラームス最晩年の作であり、無償の愛を捧げたクララ・シューマンへの最後の恋文と言うべき「6つの小品」(op.118)を添える。三者三様の魅力を湛えた佳品から、名手はどんな響きを引き出すのか。
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