eぶらあぼ 2017.4月号
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58ペドロ・アルフテル(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団“ラテン系”音楽のカラフルな魅力が全開文:片桐卓也高関 健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団名匠が聴かせるブルックナー「第3番」の本来の姿文:山田治生第6回 ルビー〈アフタヌーン コンサート・シリーズ〉4/14(金)、4/15(土)各日14:00 すみだトリフォニーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 http://www.njp.or.jp/第306回 定期演奏会5/10(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 http://www.cityphil.jp/ 新日本フィルは今シーズンから3つのシリーズで定期公演を行っている。その一つ「ルビー」は金曜日と土曜日の午後2時に開演される、つまりマチネーの公演である。 その第6回目は指揮にペドロ・アルフテルを迎える。彼は1971年スペインのマドリード生まれ。ドイツで基礎を学び、ウィーン国立音楽大学でレオポルド・ハーガーに師事、その後さらにニューヨークで作曲を学んだ。2001年からニュルンベルク交響楽団の首席客演指揮者となり、母国スペインでも04~15年に王立セヴィリア交響楽団の芸術監督を務めた。交響曲だけでなくオペラにも造詣が深く、現在はセヴィリアのマエストランサ劇場の芸術監督を務めている。また、作曲家としても活躍しており、今回の演奏会で取り上げられる第1曲目「グラン・カナリア島の鐘」も彼自身の作品である。 そしてスペインで尊敬を集める作曲 高関健の常任指揮者として3シーズン目は、彼が得意とするブルックナーで始まる。今回、高関はブルックナーの交響曲第3番(1877年第2稿)を取り上げる。 ブルックナーの交響曲第3番には作曲家自身による3つの稿が遺されている。1873年に完成され、ワーグナーに献呈されたのが第1稿(ゆえに『ワーグナー交響曲』と呼ばれることがある)。しかし、この第1稿は、ウィーン・フィルに演奏不能と烙印を押された。ブルックナーは、初演を実現させるため、大きな改訂を行い、77年になんとか初演にこぎつけたのが第2稿である。その後、交響曲第8番の改訂を中断し、89年に交響曲第3番の再改訂つまり第3稿を完成させる。高関が選んだ第2稿は簡潔化された第3稿よりも多くの音楽的素材を残している。アーノンクールやバレンボイムもこの第2稿を録音。楽譜や資料の研究に精通し、ブ家・ロドリーゴの傑作「アランフェス協奏曲」では、日本を代表するギタリスト・鈴木大介が共演する。後半ではアルゼンチンの作曲家であるヒナステラのバレエ曲「エスタンシア」が取り上げられるが、この作品ではバリトンの独唱に井上雅人が加わる。ルックナーを得意とする高関が、ブルックナー本来の姿を聴かせてくれるに違いない。 前半には武満徹の「3つの映画音楽」と堀米ゆず子をソリストに迎えてベルクのヴァイオリン協奏曲が演奏される。弦楽オーケストラのための「3つの映画音楽」は、最近では「弦楽のため スペイン語圏の作品ばかりを集めたコンサートは珍しく、またヒナステラの作品が取り上げられることもあまりない。ラテン系音楽の多様さを知ることが出来る公演で、春の午後にふさわしい、とてもカラフルなコンサートになることだろう。のレクイエム」と並んで最も演奏される武満作品となっている。「3つの映画音楽」のなかの「黒い雨」は死と再生の音楽であり、それは“ある天使の思い出”として書かれたベルクのヴァイオリン協奏曲につながる。ベテラン堀米ゆず子の深い洞察に満ちた演奏が楽しみだ。井上雅人 ©平舘 平鈴木大介ペドロ・アルフテル ©Unai P. Azaldegui堀米ゆず子 ©Akira Muto/Octavia Records Inc.高関 健 ©Masahide Sato

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