eぶらあぼ 2017.4月号
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56ハートフェルトコンサート® vol.994/30(日)14:00 東京オペラシティ リサイタルホール問 境企画03-3485-6040 http://www.heartfelt-concert.jp/松永知子(ソプラノ)これまで大切にしてきた曲を集めて歌います取材・文:宮本 明Interview 99回目を迎える「ハートフェルトコンサート®」。そのシリーズ第1回にも出演した松永知子のリサイタルが行われる。イタリア歌曲とアリア、R.シュトラウスの歌曲、別宮貞雄の歌曲集「淡彩抄」という内容の濃い選曲。 「約10年ぶりのリサイタルなので、その間に温めていたものをまとめました。イタリアもの、ドイツ歌曲、日本歌曲は私にとって外せない3つです。イタリアでドニゼッティやベッリーニなど、ベルカント・オペラを中心に学んで帰国後、古楽奏者の方々と共演して勉強させていただきながら、古楽のレパートリーも広げてきました。今回はピアノ伴奏ですが、古楽的なアプローチはとても意識しています。いわゆる『イタリア古典歌曲集』は、パリゾッティが編曲したピアノ伴奏の形と、バロック・オペラの原曲ではまったく違いますからね。バロックの中でも、ヘンデルはライフワークにしたいぐらいに大好きで、外せないレパートリーです」 芸大時代には古楽に「ハマった」時期があった。 「でもノン・ヴィブラートとか、表面的なところだけ真似して、その基本の発声の部分で迷いが生じてしまった…というか。古楽の様式はすごく大事にしたいのですが、そのために自分を見失ってはいけないと学びました。ですから、それほど古楽寄りではない、自分のスタイルということになるのかもしれないですが、ヘンデルを歌うにしても自分の“楽器”が一番楽に歌えるところを探してアプローチしようと取り組んでいます」 自分の声のスケール感に最もしっくり来るというR.シュトラウスを挟み、別宮貞雄作品も。 「別宮さんの歌曲は、音と詩との関係が非常に密なんです。『淡彩抄』は、全10曲それぞれに、はかなく切ない恋心が描かれているのですが、それがすごく繊細にフレーズに乗っている。表現は淡々としていますが、美しい情感がとても濃く描かれている名曲です」 今後は、中田喜直の歌曲全曲や、R.シュトラウスのオーケストラ伴奏付き歌曲、ヘンデルのカンタータなど、多くの目標も見据えている。今回のリサイタルは、キャリアの中で選び、見極めてきた、それらの目標への新しい始まりの一歩となる。共演はピアノの長尾博子。クァルテット・ウィークエンド2017-2018 シューマン・クァルテット音楽の“風景”を巡る旅への誘い文:笹田和人第1回 6/10(土)、第2回 6/17(土)各日14:00 第一生命ホール問 トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702 http://www.triton-arts.net/©Kaupo Kikkas 瑞々しい響きと感性で最前線を疾走し、昨季からニューヨーク・リンカーン・センター室内楽協会のレジデントを務める若手弦楽四重奏団「シューマン・クァルテット」。多様な作品で構成した2回のステージを通じ、「ランドスケープ(風景)を巡る旅」へ聴衆を誘う。 国際的ソリストのエリック・シューマンが第1ヴァイオリンを務め、その弟のケン(第2ヴァイオリン)とマーク(チェロ)、エストニア出身のリザ・ランダル(ヴィオラ)が加わって、2007年に結成。アルバン・ベルク四重奏団に師事するなど、音楽性を磨き上げ、2枚目のCDは昨年、BBCマガジンの年間賞を受賞した。 今回は、第1回でハイドンの第78番「日の出」とバルトーク第2番、ベートーヴェン「ラズモフスキー第1番」を。そして、第2回ではモーツァルト「プロイセン王第3番」にベートーヴェン第13番、武満徹「ランドスケープⅠ」と、6つの個性的な弦楽四重奏曲を披露。「音楽によって、私たちと聴衆、作曲家が親密になるのが大きな喜び」。メンバーは熱く語る。
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