eぶらあぼ 2017.4月号
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50©Yoshinobu Fukaya/aura.Y2小ホール・オペラシリーズ 気軽にオペラ! プッチーニ:《ラ・ボエーム》4/7(金)、4/8(土)各日14:00 横浜みなとみらいホール(小)問 横浜みなとみらいホールチケットセンター045-682-2000 http://www.yaf.or.jp/mmh/新垣有希子(ソプラノ)表情や息づかいまで感じとっていただきたい取材・文:岸 純信(オペラ研究家)Interview 横浜みなとみらいホール小ホールの「気軽にオペラ!」は、若い才能を見つけるには最適のステージ。ほど良いサイズの空間で歌声がそれはスムーズに花開く。この4月、プッチーニの《ラ・ボエーム》でお針子ミミを演じるソプラノ、新垣有希子に抱負を尋ねてみた。 「今はイタリアのミラノ在住です。2009年までローマに留学し、その後、国境の街ボルツァーノに移り住んで、ドイツ語のオペラも積極的に学びました。そのお陰でリヴォルノやピサで《魔笛》のパミーナを演り、オーストリアで《指環》のヴォークリンデを4年続けて歌ったり。イタリアへの留学生としては異端児でしょうか? いろんな種を蒔いて収穫したいという気持ちがありました」 いえいえ。プッチーニのヒロイン役は、風情は可憐でも、音楽的に必要なのは厚くて豊かな声音。ドイツものにも対応できるような芯のしっかりした響きが求められる。《ラ・ボエーム》のミミはその代表格だろう。 「ミミは東京芸大の学生の頃からの憧れの役でした。ただ、私は長い間、リリコ・レッジェーロ(軽めの声質)で歌ってきたこともあり、リリックな中音域が要るミミを受けるべきか、悩みました。でも、数年前にジェルメッティの指揮で《トゥーランドット》のリューを歌わせていただいたことや、イタリアの先生にも背中を押される形でこの大役をお受けしようと決めました。譜読みすると、若さを保ちながらドラマティックなフレーズを歌う難しさに突き当たります。プッチーニは楽想の指示をそれは細かく与えていますし。でも、大きな劇場だと犠牲になりがちな繊細なニュアンスが、今回のホールでは十分に表現できるようにも思います。表情や息づかいまで感じとっていただきながら、プッチーニのスケールの大きさも表現できればと願っています」 国内でも東京二期会《イドメネオ》のイリアや日生劇場《フィガロの結婚》のスザンナなど大役を演じてきた新垣。イタリアでも良き指導者に恵まれて歩み続けている。 「ローマでマリエッラ・デヴィーアに師事した時のこと。“誰が聴いても完璧!” と思われる彼女が、『勉強しなくちゃ!』とおっしゃっていて、地道に練習される姿に頭が上がりませんでした。また、巨匠カラヤンと縁の深いジャネット・ペリーにもお世話になっていますが、お会いするたびに、『ユキコ、また新しい発声法を発見したの!』と新たなテクニックを教えていただけて…。お二人とも『すべて勉強で身につけたことよ、だから、貴女にもできるわ』と希望まで下さるのですね。先生方のその励ましを胸に、今回のミミ役も頑張ります!」4/20(木)18:30 日経ホール問 日経ミューズサロン事務局  03-3943-7066http://www.nikkei-hall.com/第459回 日経ミューズサロン イェルク・デームス(ピアノ)巨匠ならではの至高のプログラム文:笹田和人 音楽の街ウィーンが育んだ、誇り高きピアニズムの正統的継承者である、イェルク・デームス。1928年生まれの米寿にして、いささかも音楽への探究心が失われぬどころか、いっそう先鋭の度合いを増した感も。そんな巨匠が日経ミューズサロンの舞台に降り立ち、バッハからフランクまで、自身の音楽世界のエッセンスを披露する。 11歳でウィーン音楽アカデミーに入学、14歳でデビュー。ブゾーニ国際コンクールでの優勝をきっかけに、国際的な檜舞台へ。1961年以来、何度も来日を果たし、かつてはバドゥラ=スコダ、グルダと共に「ウィーンの三羽烏」とも称された。 ステージは、バッハ「半音階的幻想曲とフーガ」で幕開け。続いて、「アダージョ ロ短調」「幻想曲 ニ短調」と、モーツァルトの佳品を。ここで、ベートーヴェン最後のソナタ第32番が、楔のように穿たれる。そして、ドビュッシーの3つの曲集から「月の光がそそぐテラス」「月の光」「沈める寺」を披露。巨大な伽藍を思わせる、フランク「前奏曲、コラールとフーガ」で締め括る。

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