eぶらあぼ 2017.4月号
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180CDCDCDCD太陽は空の中心にかかる~木下牧子 歌曲集/松下悦子祈り~悲しみのトリオ/クレーメル&ディルヴァナウスカイテ&トリフォノフティプシー・チューン/トルヴェール・クヮルテットあなた~よみがえる青春のメロディー/山田姉妹木下牧子:太陽は空の中心にかかる、おんがく、「晩夏」より、「花のかず」より、「六つの浪漫」より、夢見たものは…松下悦子(ソプラノ)土居知子(ピアノ)ラフマニノフ:悲しみの三重奏曲第1番・第2番ラフマニノフ(クライスラー編):祈りギドン・クレーメル(ヴァイオリン) ギードレ・ディルヴァナウスカイテ(チェロ) ダニール・トリフォノフ(ピアノ)フォースタン&モーリス・ジャンジャン:サクソフォン四重奏曲/ドビュッシー(新井靖志編):弦楽四重奏曲/クレリス:かくれんぼ/長生 淳:ティプシー・チューントルヴェール・クヮルテット【須川展也、彦坂眞一郎、新井靖志、田中靖人(以上サクソフォン)】小柳美奈子(ピアノ)村井邦彦:翼をください/さだまさし:雨やどり/田村守:おはなし/小坂明子:あなた/いずみたく:見上げてごらん夜の星を/伊勢正三:なごり雪/荒井由実:ひこうき雲 他山田姉妹【山田華、山田麗(以上ソプラノ)】木村トモカ、Momo、内門卓也、林そよか(以上ピアノ)松尾俊介(ギター)ナミ・レコードWWCC-7831 ¥2500+税ユニバーサルミュージックUCCG-1761 ¥2800+税Imagine Best CollectionIMGN-3005 ¥2500+税日本コロムビアCOCQ-85333 ¥3000+税「私にとって歌うことは、広がってゆく共感の繋ぎ目となること」。ドイツでの活躍後、関西を拠点に、特に歌曲や宗教作品で名唱を聴かせているソプラノの松下悦子は言う。今回、日本語詩を平易で美しい旋律に乗せ、「共感がたくさん詰まっている」と評する、木下牧子の作品へ対峙。タイトル作は、“生と死”という重いテーマと、飄々としたユーモアとのバランスが面白い、昭和初期の夭逝の天才・立原道造の詩に基づく。さらに、高田敏子ら異なる空気感を孕む、名詩に基づく歌曲も併録。言葉を大切に、その遣い方に心を砕き、繊細な色合いの変化を捉えつつ、丁寧に歌い込んでゆく。(笹田和人)クレーメル70歳記念リリース。ラフマニノフの20歳前後の若書きで、演奏機会に恵まれない「悲しみのトリオ」。クレーメルによってその真価と魅力が改めて知らされた。特に“心の師”チャイコフスキーの死を契機とした第2番は充実。冒頭の葬送の鐘のようなバス動機が全曲を貫き、クレーメルのすすり泣くような歌や激しい感情の爆発、静かに抑えた悲哀が胸に迫る。第2楽章の変奏では、チェロのディルヴァナウスカイテとの心のこもった対話やピアノのトリフォノフの輝かしい煌きによって、驚くほど多彩な変容がもたらされる。終楽章での冒頭楽想の回帰は懐かしささえ感じさせる。名演だ。 (横原千史)サクソフォン四重奏の魅力と可能性を、広くクラシック・ファンに知らしめてくれたトルヴェールの30周年記念盤。と同時に図らずも、昨年の録音後に急逝した、結成以来のメンバー新井靖志の追悼盤にもなってしまった。解説書に掲載されたメンバーのメッセージは、彼らの友情と絆の深さが溢れていて、読んでいるこちらもこみ上げてくるものを抑えきれない。その新井編曲のドビュッシーの弦楽四重奏曲の美しさには意表をつかれる。ロマ音楽を題材にしつつ古今東西の有名曲が次々に交錯する長生淳のタイトル曲は、登場する曲名を指折り数えるだけでも楽しい委嘱作。 (宮本 明)共に名門音大の声楽科を優秀な成績で卒業し、現在は揃ってオペラの舞台やコンサートなどで活躍中の二卵性の双子ソプラノ・デュオ。それぞれモデルや女優の経験もある容姿端麗な二人がデビュー盤にセレクトしたのは「この時代に生まれたかった」という1960~70年代昭和のフォーク&ニューミュージックの名曲たち。ピアノやギターのシンプルな伴奏で姉妹ならではの絶妙なハーモニーで聴かせる(ユニゾンも美しい)。キャッスル&ゲイツ〈おはなし〉のような渋い選曲も魅力だが、夢を追い求め続ける儚い女心を歌い上げた小坂明子作の表題曲がやはり胸を打つ。 (東端哲也)
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