eぶらあぼ 2017.3月号
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74Just Composed 2017 in Yokohama~現代作曲家シリーズ~能・謡 × 弦楽四重奏3/12(日)17:00 横浜みなとみらいホール(小)問 横浜みなとみらいホールチケットセンター045-682-2000関連レクチャー 白石美雪による Just Composed 2017の楽しみ方3/5(日)14:00 横浜みなとみらいホール レセプションルーム問 横浜みなとみらいホール事務室045-682-2020http://www.yaf.or.jp/mmh/青木涼子(能アーティスト)能と弦楽四重奏が生み出す未知の領域取材・文:宮本 明Interview 横浜みなとみらいホールの『Just Composed in Yokohama』は、日本の作曲家への毎年の委嘱作品とその再演を軸とする現代音楽シリーズ。今年は、能の謡(うたい)のための現代作品を次々と委嘱して独自の世界を築いている青木涼子が登場し、パリ在住の作曲家・馬場法子の新作と、イタリアの鬼才ジェルヴァゾーニの「夜の響き、山の中より」(2016)を演奏する。 「馬場さんの新曲は10分のシアター・ピースともいうべき作品。能の演目『羽衣』の4つのシーンによる組曲(スイート)です。馬場さんと、もう一人、作曲家・小出稚子さんの3人で作った〈作曲家のための謡の手引き〉というwebサイトにも、譜例付きで『羽衣』を解析したページがあります。またジェルヴァゾーニは音響的な考えがとても面白くて、西行法師の詩をもとにした曲なんですけど、私もエッグシェイカーを鳴らしながら演奏します。2008年に彼がサントリー音楽財団のサマーフェスティバルで来日した時にパフォーマンスを見せたことがあって、新曲をお願いして8年後にようやく実現しました。ずいぶん苦労したみたいで、難しかった! と言っていました」 ひと口に能と言っても、彼女の活動のメイン・フィールドは謡の部分、つまり声の領域だ。 「本来は音程もリズムもフレキシブルなのが能なので、それを定めた時点で能ではないんです。私は能の世界しか知らないので、初めはそのように固定して書かれた楽譜を気持ち悪いと感じることもありました。でも繰り返し再演していると作曲家の考え方に気づく時があって、能の視点だけでは一概に良し悪しを言えない、もしかしたらそこに新しい発見、新しい魅力があるかもしれないと考えるようになりました」 上記の『羽衣』の解析サイトにある譜例と音源で、彼女のそんな違和感、謡のニュアンスを定量譜に落とし込むことの困難さに触れることができるかもしれない。公演前週の3月5日には青木と音楽学者・白石美雪による関連レクチャーもあるので、予習したい人はぜひ(入場無料/電話申込制先着50名)。 弦楽四重奏は成田達輝(ヴァイオリン)、百留敬雄(同)、安達真理(ヴィオラ)、上村文乃(チェロ)の4人の俊英がこの日のために集結した特別ユニット。青木との共演曲のほか、ベートーヴェンの大フーガと、シリーズ第1回目(1999年)の委嘱作品である斉木由美の「Deux sillages」に基づく、弦楽四重奏編成のための新作を弾く。第368回 定期演奏会3/18(土)15:00 広島文化学園HBGホール問 広響事務局082-532-3080http://hirokyo.or.jp/秋山和慶(指揮) 広島交響楽団実り多きコラボの濃密なファイナル文:柴田克彦左より:秋山和慶/ダニエル・オッテンザマー ©Julia Stix 秋山和慶といえば、東響や海外で活躍する名匠だが、一方の重要な業績が地方オーケストラの活性化だ。その代表格が、1998年からシェフを務める広島交響楽団。既成概念にとらわれない発想も光る幾多の公演を通して、同楽団の評価を飛躍的に高めた彼が、この3月、音楽監督・常任指揮者として最後の定期演奏会を迎える。 演目は、師・齋藤秀雄との思い出の曲であるモーツァルト「ディヴェルティメント K.136」と、最晩年の心象が滲むクラリネット協奏曲、そしてまさに自らを振り返るかのようなR.シュトラウスの交響詩「英雄の生涯」。このファイナルに相応しいプロで集大成を披露する。 クラリネットは、ウィーン・フィルの若き首席奏者ダニエル・オッテンザマー。生気と伝統の味を併せ持ったソロで奏される至上の名作は、文句なしの聴きものだし、的確かつ明快な構成で音楽の本質を聴かせる秋山のシュトラウスは、玄人筋の信頼度抜群だけに、円熟を極めた表現が注目される。今後終身名誉指揮者となるマエストロと広響の20年近いコラボの成果を、しかと耳に焼き付けたい。©Junichi Takahashi

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