eぶらあぼ 2017.3月号
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53山田和樹(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団 特別演奏会絶好調のコンビが放つ期待のロシア・プロ文:江藤光紀飯森範親(指揮) 東京交響楽団華麗でスリリングな音の悦楽を味わいたい文:飯尾洋一3/30(木)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 http://www.japanphil.or.jp/第59回 川崎定期演奏会 3/18(土)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 http://tokyosymphony.jp/他公演3/19(日) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館(025-224-5521) とどまるところを知らぬ快進撃ぶりに、もはやヤマカズと言えば、多くの人が注釈なしに山田和樹を思い浮かべるようになった。そのヤマカズが国内で今、もっとも緊密に仕事をしているのが、正指揮者のポストにある日本フィル。武満とマーラーを組み合わせた大型ツィクルスは現在も進行中だが、柴田南雄没後20周年の昨年には、やはり音楽監督を務める東京混声合唱団とジョイントで大作「ゆく河の流れは絶えずして」を上演し高い評価を得た。また今年に入りオペラにも初挑戦。藤原歌劇団との《カルメン》では、ピットに入ることのあまりない日本フィルを巧みにコントロールして新境地を切り開いている。良く知られた曲でも時に意表を突く大技を仕掛けてくる颯爽とした音楽スタイルに加え、企画面にも独自性があり、いまや首席指揮者ピエタリ・インキネンと共に強力な2発ジェットエンジンとなって日本フィルを上昇気流に導いている。 さて、絶好調の両者が3月にロシアものをプログラミングした特別演奏会を オーケストラを聴く醍醐味のひとつが、その音色の多彩さ。多種多様な楽器の組合せによって、ほとんど無数とも呼べる音のパレットを作り出す。では、色彩感の豊かさという点で、オーケストレーションの達人はだれかと問われれば、まっさきに思い起こすのがイタリアのレスピーギではないだろうか。とりわけ交響詩「ローマの噴水」「ローマの松」「ローマの祭」からなる「ローマ三部作」は、その豪華絢爛たるサウンドによって高い人気を誇っている。 今回、その「ローマ三部作」に挑むのが飯森範親指揮の東京交響楽団。東京交響楽団の近年の充実ぶりには目を見張るが、オーケストラの機能美と響きの美しさを味わうには最適なプログラムといえる。正指揮者として同楽団と意欲的な活動をくりひろげる飯森が、オーケストラのポテンシャルを最大限に引き出してくれることだろう。会場が開く。グリンカ《ルスランとリュドミラ》序曲の後に、ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」。去年のバーミンガム市響との来日公演でも、山田は河村尚子と濃厚なラフマニノフの3番を聴かせてくれたが、今回のソロは福間洸太朗。山田とは同世代で、共演歴もある相性のよミューザ川崎シンフォニーホールである点も心強い。最強奏時であってもバランスよく美しい響きを聴かせる同ホールの特徴が生きるプログラムだ。 三部作それぞれに聴きどころは多い。「ローマの噴水」では4ヵ所の噴水を夜明けから日没まで時間軸に沿って描くというアイディアがおもしろい。「ローマの松」では金管楽器のバンダが加わって一大スペクタクルが展開される。「ローマの祭」では古代幻想と祭りの熱狂の対比が鮮やか。華麗でスリリングな音の悦楽に、どっぷりと身を浸したい。いピアニストだ。後半のチャイコフスキー交響曲第4番は、山田のダイナミックなライヴを未体験という人には特にお薦めしたい。コンサート前にはプレトークもあるから、30分早く会場に入ってマエストロの肉声を聴けば、あなたも立派な“ヤマカズ通”だ。山田和樹 ©山口 敦福間洸太朗 ©Mark Bouhiron飯森範親 ©川崎 領
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