eぶらあぼ 2017.3月号
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2/24(金)19:00 浜離宮朝日ホール問 朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990 http://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/高橋悠治(ピアノ) めぐる季節と散らし書き子どもの音楽遊び心がくすぐられる? プログラム文:江藤光紀え・柳生弦一郎 並んでいる曲を見るだけで、遊び心がくすぐられるリサイタルだ。パーセルやクープランといった古典のみやびから入り、時のうつろいに気まぐれに反応するケージの「四季」へとジャンプする。西洋音楽の常識を逆手にとったケージの音楽を通じて、高橋悠治はプログラミングの常識に挑戦しようとしているのか? それとも音楽そのものをピュアな目で眺めた時に見えてくる「意外にいける組み合わせ」なのだろうか? 続いておそらくは高橋自身の現在の心境を綴った「散らし書き」(初演)。さらにバルトーク「10のやさしいピアノ小品」で民衆のうちに息づく音楽をすくい上げ、ブゾーニ「子どものためのソナティナ」、サティ「コ・クォが子供の頃」で童心へと帰る。最後はシンプルなメロディーと和声からなるストラヴィンスキー「五本指」でクールダウンして一日の“修行”を終える。“戦う音楽家”も隠者のごとき徒然なる境地に達してきたのだろうか。プログラミングから受けるそんな印象を、会場で確かめたい。3/13(月)18:30 日経ホール問 日経ミューズサロン事務局03-3943-7066 http://www.nikkei-hall.com/第458回 日経ミューズサロン ダニエル・オッテンザマー(クラリネット)クラリネット界の貴公子のサウンドに酔う文:笹田和人©Julia Stix 時に甘く、時に饒舌に。クラリネットという楽器が持つ、多彩な魅力を表現し尽くす、変幻自在のプレイで、世界中の聴衆の心を捉える、ウィーン・フィル首席奏者のダニエル・オッテンザマー。クラリネット界を牽引する貴公子が、日経ミューズサロンに登場、選りすぐりの名曲を届けてくれる。 父エルンストは長く“ウィーン・フィル不動の首席”として活躍、弟アンドレアスもベルリン・フィル首席を務めるという、音楽の街ウィーンが育んだ、クラリネットの名家の出身。ダニエルは、2009年からウィーン・フィルとウィーン国立歌劇場の首席を務める一方、ソリストとして、世界中の一流楽団や演奏家とも共演を重ねている。 今回のステージは、ピアノの村田千佳と共演。ベートーヴェン「モーツァルトの歌劇《ドン・ジョヴァンニ》より『お手をどうぞ』による変奏曲」やロッシーニ「序奏、主題と変奏」、ストラヴィンスキー「3つの小品」、ドビュッシー「第1狂詩曲」など多彩な作品に、自作「アーティへのオマージュ」を添える。3/18(土)14:30、6/20(火)19:15* 近江楽堂(東京オペラシティ3F) *4/4(火)発売問 ビーフラット・ミュージックプロデュース03-6908-8977 http://www.gregorio.jp/qc/ショスタコーヴィチ 弦楽四重奏曲全曲演奏会 2014-2018古典四重奏団 ショスタコーヴィチの自画像 Ⅳ 1968年まで後期作品の深奥に分け入る文:林 昌英©F.Fujimoto 深い解釈と鮮烈な演奏で第一線を走る古典四重奏団が進める「ショスタコーヴィチの自画像」シリーズ。交響曲とならぶ作曲者最大の遺産である15の弦楽四重奏曲に、2014年から毎年番号順に3曲ずつ取り組み続け、4回目の今年からいよいよ二桁番号に到達する。 キャラクターの異なる4つの楽章のバランスが絶妙で完成度の高い第10番、思わせぶりな7つの小曲が続くひねりの利いた第11番、2楽章構成ながら30分近い大作で思索と狂乱が交錯する第12番。3曲ともフラット系の調性をもち、弦楽器特有の抒情的な響きが全体を覆うなか、調号なしの第10番第2・第3楽章の効果はインパクト十分で、圧倒的な音響で激烈な前者、切ない旋律とハーモニーが胸に迫る後者、その対比も含めて注目だ。第11番のユーモアとシリアスの混淆は独特だし、12音による冒頭の旋律からシンフォニックな熱狂に到達する第12番も聴きどころ多数。円熟の古典四重奏団の案内で、ショスタコーヴィチ後期作品の深奥に分け入っていく。48
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