eぶらあぼ 2017.3月号
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46日本オペラ協会公演 原 嘉壽子《よさこい節》(ニュープロダクション)3/4(土)、3/5(日)各日14:00 新国立劇場(中)問 日本オペラ振興会チケットセンター044-959-5067 http://www.jof.or.jp/3/11(土)18:30 高知県立県民文化ホール オレンジホール問 高知県立県民文化ホール088-824-5321 http://kkb-hall.jp/※佐藤美枝子の出演は3/4、3/11佐藤美枝子(ソプラノ)日本女性の芯の強さを表現したいと思います取材・文:室田尚子Interview 日本オペラ界に大きな足跡を残し、2014年逝去した作曲家原嘉壽子。彼女の6作目のオペラである《よさこい節》が、日本オペラ協会によって25年ぶりに上演される。これは、有名な「土佐の高知のはりまや橋で…」という民謡の元になった実話をもとにした作品。妻帯を許されていなかった真言宗の僧侶純信と村娘お馬の禁断の恋が、幕末の土佐を舞台に描かれていく。 「今、必死で音楽稽古をしている最中ですが、今までにない難しい曲で苦心しています」と語る佐藤美枝子は、チャイコフスキー・コンクールで日本人初の1位を獲得した経歴を持つ、日本を代表するプリマ・ドンナのひとり。まずは、今回歌うヒロインお馬とはどんな女性なのかを聞いてみた。 「お馬は15歳の時に奉公に出され、2年間いろいろな苦労をしてやっと家に帰ってきたところです。そんな苦労が育てた精神的な強さが、彼女のいちばんの個性。当時の日本女性はみんなそうですが、男性を立て自分は控えていながら、実は芯がとても強い。お馬はその芯の強さから、強い意志を持ってお坊さんとの恋に突き進んでいくのです」 これまで数多くの名作オペラでヒロインを演じてきた佐藤に表現の違いがあるかたずねると、「芯の強さは変わらないが、その強さをどう表現するのかが違う」という。「欧米のオペラのヒロインは“私はこうなの!”と大きな声で主張する。一方、日本女性はグッとこらえて強さを見せない。《よさこい節》のお馬もずっと喋るように歌わなければなりませんが、最後にさらし刑になり自分の意志を大きく主張するシーンでは、西洋の歌唱法であるベルカントが最大限に活かされた音楽になっているのです。ここが歌い手の聴かせどころですね」 日本人にとって“日本のオペラ”は馴染みやすいはずだが、時に「言葉が聞き取りにくい」という不満が聞かれることがある。しかし佐藤は「それは日本語の発声と歌唱表現とのマッチングの問題」だと語る。 「ベルカント唱法を守りながら、浅くならない響きで日本語の歌詞を歌う。これがとても難しいのです。日本オペラには、日本歌曲などを歌い込み、かつヨーロッパのオペラをしっかりと勉強した上で取り組むべきだとは思います」 演出は日本オペラでは屈指の演出家岩田達宗。佐藤とはデビュー以来の付き合いで、「オペラ歌手としての基盤を作ってくれた方」だという。佐藤いわく「ドラマに自然に引き込まれていくのが魅力」という岩田の舞台と、そして新時代のマエストラ田中祐子の指揮もたいへん楽しみな《よさこい節》は、いよいよ3月4日に幕を開ける。3/4(土)14:00 神奈川県民ホール(小)問 チケットかながわ0570-015-415 http://www.kanagawa-arts.or.jp/チェンバロの魅力Ⅴ Peínture~描くロココの絵画と音楽のつながりを紐解く文:笹田和人大塚直哉 ©E.Shinohara ソリストやアンサンブルのリーダー、通奏低音奏者として活躍する一方、メディアを通じての啓蒙活動にも力を注ぐ大塚直哉の演奏とトークにより、楽器自体から楽曲の背景まで、その秘密を掘り下げるシリーズ『チェンバロの魅力』。「描く」をテーマとする第5弾は、近世フランス美術と装飾芸術の気鋭の研究者で、東京芸術大学などの講師を務める小林亜起子をゲストに迎える。 「18世紀のフランスでは、クラヴサン(チェンバロ)のために、美しい小品が数多く書かれました。どれも減衰音を生かし、繊細な装飾を施しつつ、独特の曲線美の世界を形作っています」と大塚は話す。ステージでは、フレンチのブランシェ・モデルの楽器を駆り、フランソワ・クープラン「シテール島の鐘」「フランスのフォリアまたはドミノ」やラモー「ミューズたちの語らい」「キュクロプス」、デュフリ「三美神」などの作品を紹介。さらに、小林のナビゲートで、これらの音楽と同じ題材を扱った絵画作品を紐解いていく。

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