eぶらあぼ 2017.3月号
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178SACDCDSACDCDソル・ガベッタ&ベルリン・フィル・ライヴ!/エルガー&マルティヌー:チェロ協奏曲菅野祐悟:交響曲第1番~The Border~肥沃の国の境界にて〈線・ポリフォニー⇒…!?〉/瀬川裕美子雨だれのプレリュード~ショパン名曲集/横山幸雄エルガー:チェロ協奏曲マルティヌー:チェロ協奏曲第1番ソル・ガベッタ(チェロ)サイモン・ラトル(指揮)クシシュトフ・ウルバンスキ(指揮)ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団菅野祐悟:交響曲第1番~The Border~藤岡幸夫(指揮)関西フィルハーモニー管弦楽団ウェーベルン:変奏曲/ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第29番「ハンマークラヴィーア」/シューベルト:即興曲 D.935 第2番/近藤 譲:長短賦、高窓/ブーレーズ:ピアノ・ソナタ第1番/ブラームス:間奏曲 op.119 第1番/クレー:最後に(朗読)瀬川裕美子(ピアノ)ショパン:アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ、バラード第1番、別れの曲、マズルカ第13番・第32番、幻想即興曲、雨だれのプレリュード、小犬のワルツ、英雄ポロネーズ、別れの曲によるお別れの作品(2台ピアノによる8手連弾) 他横山幸雄(ピアノ)中島 彩、川田健太郎、田中照子(以上ピアノ)収録:2014.4/20、バーデン=バーデン(ライヴ)、2014.5/23,24、ベルリン(ライヴ)ソニー・ミュージックSICC-30421 ¥2600+税収録:2016.4/29、ザ・シンフォニーホール(ライヴ)日本コロムビアCOGQ-103 ¥3000+税トーンフォレストTFCC-1701 ¥2315+税2/24(金)発売ソニー・ミュージックダイレクトMECO-1036 ¥3000+税エルガーはソル・ガベッタにとって再録音に当たるが、より表現の振幅が大きくなった名演だ。これにはラトル&ベルリン・フィルというこの上なく雄弁なサポートの影響が大きいだろうが、殊にアダージョの情感の表現が一層深化していることに打たれる。全曲にわたって細部の表情もより細やかに。近年の同曲録音中ではトップを争う演奏と思う。いかにもモダニズム的な要素とチェコの民族的イディオムが上手く融合している感のあるマルティヌー作品では、ガベッタの水際立った美音とテクニックが存分に堪能できる。この時ベルリン・フィル定期演奏会デビューを果たしたウルバンスキの指揮にも注目。(藤原 聡)大ヒット映画から放送中の『東京タラレバ娘』など、映画やTVドラマの劇伴音楽で知られる人気作曲家が初めて書いた交響曲の、昨年4月、ザ・シンフォニーホールでの世界初演がライヴ・レコーディング盤として登場。「夢を通して意識と無意識の狭間に立ち、自分の内面を深く掘り下げる作業の中で生まれた」という本作は、古典的な4楽章形式で書かれた、まさに“2010年代の”交響曲。内面世界に飛び込み(第1楽章)〜夢と対話し(第2楽章)〜無垢な自分を発見し(第3楽章)〜再スタート(第4楽章)と…流れだけ書くと明解だが、驚きに満ちたドラマティックな構成が見事。(東端哲也)アルバム・タイトルは、20世紀スイスの鬼才、パウル・クレーの絵画「肥沃な国の境界に立つ記念碑」(1929年)から。幾何学的な空間構成と繊細な色遣いからなる当作をはじめ、視覚作品や日記など、この芸術家から受けたインスピレーションを、瀬川裕美子は自身の紡ぐピアノの響きへ託した。線描画のようなウェーベルンから、テンポ指示を守ることで本来の色を取り戻したベートーヴェンなど、時空を自在に超え、古今の作品が孕む色彩と造形を往き来。遂には、彼女の“演奏行為”は、クレーの言葉の朗読に至り、人間の知覚という概念自体へも踏み込んでゆく。感性を揺さぶる1枚だ。 (寺西 肇)横山がこれまで弾き続けてきたショパンの名曲を新たに録音。幾度も弾いた曲は「完成度と即興性をより自然に共存させられる」と語っていたが、そんな自然発生的な歌があちこちに現れる。「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」から、輝かしい音でピアノに成し得るあらゆる表現を聴かせ、一方2曲の短調のマズルカでは作曲家の心の内を丁寧に示す。「別れの曲」では短い曲中に展開するドラマを浮き彫りにし、ショパンの天才性を改めて実感させる。終曲は自身が編曲した2台8手版の同曲。作曲家へのきらめくオマージュとともに、デビュー25周年の節目を記念するアルバムを閉じる。(高坂はる香)

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