eぶらあぼ 2017.3月号
167/199

174CDCDCDCD楽天家に捧ぐ螺旋/ザ・クラリネット・アンサンブルマイ・ワールド/鷲尾麻衣第6回仙台国際音楽コンクールヴァイオリン部門優勝 チャン・ユジン悪原 至 × 打楽器coba:楽天家に捧ぐ螺旋/ガーシュウィン:アイ・ガット・リズム変奏曲/渡辺俊幸:Lovely world of Cats/大島ミチル:Dance/ピアソラ:タンゴの歴史/モーツァルト:弦楽五重奏曲第2番/磯部周平:きらきら星変装曲Ⅱ/J.S.バッハ:ブランデンブルク協奏曲第6番 他ザ・クラリネット・アンサンブル[山本正治、磯部周平、三界秀実、澤村康恵、十亀正司(以上クラリネット)]サティ:あなたが欲しい/アーン:クロリスに/高田三郎:くちなし/穴見めぐみ:星とたんぽぽ、蛙、夜ふけの空、このみち/池辺晋一郎:ふるさとは/ドニゼッティ:この清潔で愛らしい宿よ/ヴェルディ:乾杯の歌/中島みゆき:糸 他鷲尾麻衣(ソプラノ)穴見めぐみ(ピアノ)秋川雅史(テノール)メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲ストラヴィンスキー:ヴァイオリン協奏曲チャン・ユジン(ヴァイオリン)広上淳一(指揮)仙台フィルハーモニー管弦楽団アルマダ:リンデ/ジヴコヴィッチ:ジェネラリー・スポークン・イット・イズ・ナッシング・バット・リズム/クセナキス:ルボン、プサッファ/新実徳英:マリンバのためにⅡ/ユレル:ループスⅡ/ゴリンスキー:ルミノシティ悪原 至(パーカッション)マイスター・ミュージックMM-4001-02(2枚組) ¥3900+税オクタヴィア・レコードOVCL-00613 ¥3000+税収録:2016.6/4、日立システムズホール仙台(ライヴ)フォンテックFOCD-9732 ¥2400+税コジマ録音ALCD-7209 ¥2800+税1998年と2001年に録音されたアルバムのリニューアル・リリース。在京オケの首席奏者を中心とした日本屈指の名手たちが、クラリネット・アンサンブルの可能性を追求した、きわめて興味深い内容だ。1枚目は、coba、渡辺俊幸、大島ミチルなど、ボーダーレスの人気作曲家のオリジナル曲とポピュラー系クラシックの編曲もの、2枚目は、バロック&古典派の名作を中心とした、対照的な構成。前者の豪華な面々の創意、後者の風雅な柔らかみなど、聴きどころも多く、クラリネットの幅広い表現力や同族楽器の音色ブレンドの妙味を、改めて実感させられる。(柴田克彦)国内外で数多のオーケストラと共演を果たし、近年オペラ舞台での活躍もめざましい新星ソプラノのデビュー盤。タイトルの「“マイ=麻衣”・ワールド」が示す通り、サティやアーンの小粋で抒情豊かなフランス歌曲からドニゼッティの知られざるオペラ《リタ》のアリア〈この清潔で〜〉や人気テノール秋川雅史との〈乾杯の歌〉の二重唱、そして中島みゆきの〈糸〉までぎっしりと魅力が詰まった1枚。なかでもピアノを務めている穴見めぐみが金子みすゞの詩に作曲した4つの歌曲が圧巻。〈星とたんぽぽ〉では「見えぬけれどもあるんだよ〜」に込められた、みすゞ自身の命の炎を歌い上げているかのようだ。(東端哲也)2001年から3年毎に開催され、世界の檜舞台で活躍する逸材を輩出して来た、仙台国際音楽コンクール。昨年6月の第6回ヴァイオリン部門を制したのは、韓国出身のチャン・ユジンだった。当盤は、そのファイナルでの演奏のライヴ録音。メンデルスゾーンは、折り目正しく基本を押さえた“優等生的”な快演だが、彼女の真価は、このコンクールを前に「初めて取り組んだ」と言う2曲目のストラヴィンスキーで、いっそう発揮される。緊張感にとらわれてよいはずの、コンクール・ファイナル。その場にあって、彼女は共演のオーケストラとの対話を、しなやかに、柔らかに楽しんでいる。 (笹田和人)聴き応えのある一枚だ。一口に打楽器といっても、金属、木、皮膜と素材によって質感が違うし、マリンバやヴィブラフォンのような鍵盤打楽器も含んでいる。全て現代曲ながらバラエティー豊かな選曲に加え、悪原の音楽性も各楽器の魅力をよく引き出している。基本のテンポにブレがなく、一貫して落ち着いた流れを作って、多種多彩な音色を緻密に叩き分ける。こうしたアプローチと音楽への確かなまなざしによって、絡まってはほどける音の綾やリズムと音色によるコンストラクションが編み上げられ、シャープな作品像が生まれてくる。古典の編曲ものを弾いても面白く聴かせてくれる人なのではないか。 (江藤光紀)

元のページ  ../index.html#167

このブックを見る