eぶらあぼ 2017.2月号
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39大野和士(指揮) 東京都交響楽団熟成を深めたコンビによる待望のブラームス文:江藤光紀ユッカ=ペッカ・サラステ(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団北欧の名匠と気鋭の若手で聴く“超名曲”文:飯尾洋一福岡特別公演 3/18(土)15:00 福岡シンフォニーホール名古屋特別公演 3/19(日)14:00 愛知県芸術劇場 コンサートホール第827回 定期演奏会 Aシリーズ 3/21(火)19:00 東京文化会館問 都響ガイド03-3822-0727 http://www.tmso.or.jp/第4回 ルビー〈アフタヌーン コンサート・シリーズ〉2/3(金)、2/4(土)各日14:00 すみだトリフォニーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 http://www.njp.or.jp/ 大野和士が都響の音楽監督に就任しそろそろ2年である。この間、24年ぶりの欧州ツアーをはじめ数々のプロジェクトを成功裏に導き、意思の疎通もますますスムーズになってきた。また新国立劇場のオペラ部門次期芸術監督就任も発表され、日本の音楽界のリーダーとして存在感を増している。 充実感の漂う大野&都響コンビの3月定期および福岡・名古屋公演はブラームス・プロ。大野もブラームスはたびたび取り上げているが、このところの共演は20世紀以降の近現代ものを中心に組まれていたので、王道に回帰したプロを楽しみにしているファンも多いだろう。大野の骨太な構築性が都響の表現力を通じストレートに現れてくるからだ。 交響曲第4番を大野は2013年のウィーン響を率いた来日公演のメイン曲に据えており、また海外ではやはり音楽監督の任にあるバルセロナ響を相手に昨年2月に取り上げている。ブラームスの中でも、とりわけお気に入りのようだ。 新日本フィルが「ルビー 〈アフタヌーン コンサート・シリーズ〉」と名付ける金曜日と土曜日の午後2時開演の公演に、フィンランドの名指揮者ユッカ=ペッカ・サラステが招かれる。サラステはフィンランド放送交響楽団やトロント交響楽団などでシェフを務め、現在はケルンWDR交響楽団首席指揮者として活躍する実力者。録音も数多い。日本では一昨年にNHK交響楽団を指揮して好評を博したのが記憶に新しいところ。今回の新日本フィルとの共演では、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲とチャイコフスキーの交響曲第4番という超名曲を組み合わせたプログラムを披露する。 メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲で独奏を務めるのは気鋭の若手、レイ・チェン。台湾出身で、2009年のエリーザベト王妃国際音楽コンクールの優勝者である。技巧の高さはもちろんのこと、のびやかな美音や豊かな作曲家晩年の諦観を色濃く反映した第1楽章、哀愁を帯びた第2楽章や力強い第3楽章など聴きどころは多いが、とりわけ終楽章の変奏曲をどんな風に演出するかに注目したい。 前半にはピアノ協奏曲第1番。こちらは若き日に作曲されたが、交響曲として構想されたためオーケストレーションも分厚く、がぶり四つに組むソロにも長丁場を弾き切るスタミナが要求される。ソロのニコライ・ルガンスキーはラフマニノフを得意とし、美音と幅広い表現力を武器とする。その濃厚歌心は、同曲をダニエル・ハーディング指揮スウェーデン放送交響楽団と共演した録音からも伝わってくる。メンデルスゾーンの音楽が持つ抒情性をたっぷりと堪能させてくれることだろう。 チャイコフスキーの交響曲第4番でなロマン性がオーケストラとぶつかりあいながら、ブラームスの設計図を音の建造物へと仕立てていくことだろう。壮麗な伽藍が楽しめそうだ。は、サラステと新日本フィルの間に起きる化学反応に期待したい。サラステのこと、端整な造形と熱い情熱を両立させながら、作品の本質に迫るような演奏を繰り広げてくれるのではないだろうか。ニコライ・ルガンスキー ©Caroline Doutre/Naïve大野和士 ©Rikimaru Hottaレイ・チェン ©Julian Hargreavesユッカ=ペッカ・サラステ ©Felix Broede

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