eぶらあぼ 2017.2月号
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35ペトル・アルトリヒテル(指揮) プラハ交響楽団チェコの楽団ならではの情緒あふれる伝統の響き文:飯尾洋一マルティン・ハーゼルベック(指揮) ウィーン・アカデミー管弦楽団ベートーヴェン交響曲全曲演奏会“楽聖=ウィーン”を伝える究極公演文:柴田克彦3/16(木)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp/他公演3/14(火)京都コンサートホール(075-711-3231)、3/15(水)愛知県芸術劇場 コンサートホール(テレビ愛知事業部052-243-8600)4/20(木)19:00 第6番&第7番 4/21(金)19:00 第4番&第5番4/22(土)15:00 第1番・第2番・第3番 4/23(日)15:00 第8番&第9番(完売)武蔵野市民文化会館問 武蔵野文化事業団0422-54-2011 http://www.musashino-culture.or.jp/他公演 4/18(火)いずみホール(第5番・第6番のみ)(06-6944-1188) オーケストラのメンバーの国際化が進み、サウンドのグローバル化が著しいとされる昨今、楽団の国籍による固有の響きなどというものは幻想になりつつあるのかもしれない。しかし、作品によってはローカルなサウンドや味わいがその本質に直結するというケースもあるのではないだろうか。 チェコから来日するペトル・アルトリヒテル指揮プラハ交響楽団に期待されるのは、そんな地域色だろう。演奏するのはスメタナの連作交響詩「わが祖国」全曲。まさに“これしかない”というプログラムだ。有名な交響詩「モルダウ」をはじめ、スメタナが祖国の伝説と自然を音に紡いだ6曲の交響詩からなる、チェコ国民音楽の金字塔である。チェコの音楽家だからこそ、意図を汲めるニュアンスやディテールが作品のそこかしこに散りばめられていることは想像に難くない。 プラハ交響楽団は1934年の創設。設立当初は映画音楽などを演奏する ピリオド楽器によるベートーヴェン演奏も、新たな時代に入ったのかもしれない。そう思わせるコンビ、マルティン・ハーゼルベック指揮ウィーン・アカデミー管弦楽団が、武蔵野市民文化会館でベートーヴェンの交響曲全曲演奏会を行う。 オルガニストとして名高いハーゼルベックが1985年に創設したこの古楽オーケストラは、かのウィーン楽友協会ホールの主催で定期演奏会を開催。ウィーン古典派やリストの管弦楽作品全集等のCDを多数リリースし、モダン楽器に持ち替えて20世紀作品の演奏も行っている。そして何より新たなベートーヴェンを示唆するのが、独自性の高いそのシリーズ。歴史的な楽器・編成・様式で演奏するだけでなく、音楽学者や音響学者とタッグを組んで、ウィーンに現存するベートーヴェン作品の初演会場の響きを検証し、実際に同会場で録音&公演を行う「RESOUNDプロジェクト」を遂行している。もう1つ、CDを聴いて新たな時代を感じるのが、これまで楽団だったという。しかし名指揮者ヴァーツラフ・スメターチェクの尽力により大規模な交響楽団へと発展し、国際的な評価を獲得するに至った。スメターチェクは約30年にもわたって同楽団を率いており、これだけひとりの指になくナチュラルな表現。自然なアーティキュレーションとフレージングで運ばれる温かみを湛えた音楽は、鋭角的に突き進む古楽演奏とは違った、良きウィーンの情趣を味わわせてくれる。 今回は、ホールのリニューアル・オープンを記念した、日本で1回のみのプロ揮者と深い結びつきを持つオーケストラもまれだろう。現在は日本フィル首席指揮者でもあるピエタリ・インキネンがシェフを務めている。 彼らならではの伝統の響きを聴かせてくれることを願う。ジェクト。“通”の支持が厚く、全曲演奏会にも実績ある武蔵野ならではの究極の公演だ。「第九」1回のために世界的ソリストが来日する点や、リニューアル時でこその廉価チケットも大きな魅力。むろん会場は違うが、そのスピリットに触れるのは、得難い体験となるであろう。プラハ交響楽団 ©Jan Kolman左より:マルティン・ハーゼルベック ©Meinrad Hofer/ウィーン・アカデミー管弦楽団 ©Lukas Beckペトル・アルトリヒテル
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