eぶらあぼ 2017.2月号
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169「コンテンポラリー・ダンスが廃れるなら廃れればいい。だが本能に直結した芸術であるダンスは決して廃れはしない。見るべきはダンスそのもので、ジャンルにこだわってるから閉塞感に囚われるのだ」と思っている。オレがこの連載やSNSでそう書いたのは数年前だが、今ではかつて「もう一度コンテンポラリー・ダンスを元気にしなくては」と言っていた連中まで「大切なのはダンスそのもの」とか言い出しているしな。届いちょる、届いちょる。 さらに最近は、シンガポールの振付家兼フェスティバル・ディレクターと面白い話になった。「コンテンポラリー・ダンスという概念は、常にアップデートされていくのだ」という考え方だ。 なるほどコンテンポラリー・ダンスは固有のスタイルのダンスを指すのではなく、むしろそこから逸脱し続ける自由さこそが本質だ。ならば、その概念自体が時代とともに変わってもおかしくない。ちょうどフェスティバルが、「面白い作品をたくさん見れるイベント」から「ダンスについて考え、アーティストやディレクターや観客など人々が出会う場所」に変化していったように。 世界中に、面白いダンスはいくらでもある。ストリートダンスだろうとサーカスだろうと、オレはどんどん紹介して、今年もコンテンポラリー・ダンスをアップデートしていくぜ!第28回 「ダンスの概念をアップデートせよ」 あけましておめでとうございます。 年末に機種変更したばかりのiPhone7を初詣の、まさに社殿にあがる石段で落として画面にヒビが入り、「あれ? 神様ケンカ売ってる?」という感じで始まった2017年ですが、皆様今年もよろしくお願いします。 さて昨年は『ダンスバイブル』(河出書房新社)の増補改訂版が出版され、フランス(パリ、トゥールーズ、オーシュ)で最先端のコンテンポラリー・サーカスのリサーチをし、チェコでチェコのダンス(プラハ)とヨーロッパのダンス弱小国のトンガったヤツらを集めたエアロ・ウェーブというフェス(ピルゼン)に行き、カナダの巨大ダンスフェス「シナール」でダンスとサーカスの若手を堪能し、韓国の3つのフェスで審査員とかシンポジウムに参加、そしてイスラエルのフェスへと回ってきた。国内でも札幌の北海道ダンスプロジェクト、今年10周年を迎える福岡ダンスフリンジフェスティバルというオレが関わっているフェスに加え、秋田でも新しく『踊る。秋田』というフェスが立ちあがった。オレが一人で決めるエルスール財団新人賞も第5回目を迎えた。 こうして飛び回るのは「評論家は、研究者の学識と、ジャーナリストのフットワークを持ったハイブリッドであるべき」というのが持論だからだ。しかしどんなにすごいことを考えていても、最終的に文章に力が無ければ届きはしない。優れた評論とは今いるダンサー、振付家、制作者そして観客それぞれの胸に届き、それぞれの中で違う化学反応を起こしていくものだ。それが、さしあたり自分の言いたいことを過不足無く言えていればいい論文とは違うところである。 オレも今年はガッツリと腰を入れて書くよ。 だがコンテンポラリー・ダンスの誕生から30年以上経った今「もう新しいことはやり尽くされてしまったのでは」という諦念に囚われる人も少なくない。オレはPrifileのりこしたかお/作家・ヤサぐれ舞踊評論家。『コンテンポラリー・ダンス徹底ガイドHYPER』『ダンス・バイブル』など日本で最も多くコンテンポラリー・ダンスの本を出版している。うまい酒と良いダンスのため世界を巡る。http://www.nori54.com乗越たかお
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