eぶらあぼ 2017.1月号
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67紀尾井 明日への扉 15 桑原志織(ピアノ)シューベルトとロシアの大曲で、卓越した音楽性を披露文:高坂はる香千住真理子(ヴァイオリン) & スーク室内オーケストラ弦の美音に浸る喜び文:飯尾洋一2017.3/15(水)19:00 紀尾井ホール問 紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061 http://www.kioi-hall.or.jp/2017.2/15(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp/他公演 2017.2/10(金)長崎ブリックホール(KTN事業部095-827-3400)、2/12(日)ザ・シンフォニーホール(ABCチケットインフォメーション06-6453-6000)、2/14(火)横浜みなとみらいホール(神奈川芸術協会045-453-5080)、2/18(土)かつしかシンフォニーヒルズ(03-5670-2233)、2/19(日)富山/砺波市文化会館(0763-33-5515) 10代のうちから、日本音楽コンクール、東京音楽コンクール、ピティナ・ピアノコンペティション特級など国内の主要コンクールで上位入賞を果たし、その伸びやかな音楽で飛躍の可能性を感じさせていた、ピアニストの桑原志織。現在、東京芸術大学で伊藤恵のもとで学ぶ21歳だ。2016年、スペインで行われたマリア・カナルス国際音楽コンクールで第2位に入賞し、改めて注目を集めている。 そんな彼女が、紀尾井ホールが今後の活躍に期待する才能を招いて開催する「紀尾井 明日への扉」シリーズに登場。魅力的なプログラムで、器の大きな音楽性を披露する。 まず楽しみなのは、桑原が今その音楽の探究に力を注いでいるという、シューベルトのピアノ・ソナタ第19番。シューベルト解釈で定評のある師直伝の表現 名ヴァイオリニスト千住真理子が、厚い信頼を寄せるスーク室内オーケストラとともにヴィヴァルディの「四季」他を奏でる。 2015年にデビュー40周年の節目を迎え、リサイタルにレコーディングにと多彩な活動が続く千住真理子。長年共演してきたスーク室内オーケストラとの共演は、「言葉を越えた魂の語らい」だという。 プログラムには、そんな音楽を通じた親密な対話を堪能できるであろう名曲が並ぶ。四季折々の風物詩を描写したヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲集「四季」に加えて、バッハ「2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調」(マルティン・コスとの共演)、モーツァルト「アダージョ K.261」と「アレルヤ」、カッチーニ「アヴェ・マリア」で、ヴァイオリン・ソロを披露する。「すっかり身体の一部になってきた」という名器、ストラディヴァリウス「デュランティ」の美音にたっぷりと浸れるのも魅力。 スーク室内オーケストラはチェコの作曲家ヨセフ・スークにちなんで、その生誕を、フレッシュな感性とともに披露してくれることに期待したい。また、ストラヴィンスキー「ペトルーシュカからの3楽章」は、マリア・カナルスコンクールのステージで高い評価を得たというレパートリーだ。そしてメインとして後半に取り上げるのは、この演奏会のために取り組んでいるというムソルグスキーの「展覧会の絵」。彼女の持ち味である豊かな音、堂々とした音楽性は、ロシアものにきっとぴったり合うだろう。 桑原の高い技術と繊細な表現が、多方面から確認できる3作品が並ぶプログラム。2500円と、手ごろなチケット料金も嬉しい。今後さらなる活躍が期待される逸材の演奏を、この機会に聴いておこう。100周年となる1974年に設立された楽団である。2000年までは作曲家の孫にあたる同姓同名のヴァイオリニスト、ヨセフ・スークが芸術監督を務めていた。現在の芸術監督はコンサートマスターのマルティン・コス。バロックから現代作品まで幅広いレパートリーを誇り、レコーディング活動も活発に行っている。グリーグ「ホルベアの時代から」で、その精妙なアンサンブルを楽しめるだろう。スーク室内オーケストラ千住真理子 ©Kiyotaka Saito(SCOPE)
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