eぶらあぼ 2017.1月号
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53©Uwe Arensピアノ・リサイタル 第1回 「さすらい」2017.3/3(金)19:00レクチャー&マスタークラス2017.3/7(火)18:00Hakuju Hall問 Hakuju Hallチケットセンター  03-5478-8700http://www.hakujuhall.jp/原田英代(ピアノ)ロシア&ドイツ音楽に聴く“さすらい”取材・文:飯田有抄Interview 巨匠ヴィクトル・メルジャーノフから受け継いだロシア・ピアニズムの理念を体現するピアニスト、原田英代。冴え渡る感性と深みある演奏で、聴く者の心を捕らえて離さない原田が、Hakuju Hallで5年にわたるリサイタル・シリーズを展開する。5回それぞれのテーマは、「さすらい」「葛藤」「変容」「統一」「光」。人生や国家の歩みを音楽で描く壮大な試みだ。 「私の師メルジャーノフは、音楽とは人生の一こま一こまを表しているものだと語っていました。演奏家は、作曲家が人生の中でイデーとして捕らえたものを音にしているのであり、自己を誇示してはならぬ、と厳しくおっしゃっていました。私は東京芸大時代にケンプのリサイタルに出かけ、彼が天と繋がり触媒となって演奏する姿を見て胸を打たれた経験があります。“地上においての天国”を作り、世界を幸せにすること——それが演奏家の使命だと思っています」 第1回のテーマ「さすらい」は全5回を通底するようなテーマだと語る。 「人生とは、“さすらい”に始まります。右も左もわからない。生きていく間に葛藤も変容も統一も起こる。最後は光に到達したいと生きていますが、ラフマニノフのように、晩年にさすらってしまう人もいる。アメリカに亡命した彼は大きな価値観の転換を経験し、ほとんど作曲ができなくなりました。後年の作『コレルリの主題による変奏曲』は最後が弱音で終わり、さすらいのまま幕を閉じています」 変奏曲形式もこのリサイタルのもう一つの大事なテーマだ。1曲目はバッハ=ブゾーニの「シャコンヌ」、2曲目にはシューベルトの「さすらい人幻想曲」(第2楽章が変奏曲)が置かれている。後半はリストの「オーベルマンの谷」に続いて、前述のラフマニノフの変奏曲で締めくくる。 「『シャコンヌ』は苦難を表す音型で深く沈んでいきます。シューベルトの作品は、野心に燃えた“さすらい”です。少し先を急ぐような若い“さすらい”ですね。『オーベルマンの谷』は、悩んで悩んでなんとか答えを見つけようとする人の“さすらい”。最後が明るく終わるこの曲は、救済があってこその大悲劇成立という、リストのドイツ的な視点が含まれています」 3月3日のリサイタルに続き、7日にレクチャー&マスタークラスも行われる。ロシア人の感性やロシア音楽の特性などを対談形式でトークし、2名の門下生(黒崎拓海、伊澤悠)を公開レッスンする。「人間の感情を、どう具体的に音楽にしていくか、その仕組みがわかる内容ですので、多くの方に楽しんでいただきたいです」2017.2/4(土)15:00大田区民ホール・アプリコ問 大田区文化振興協会03-3750-1555http://www.ota-bunka.or.jp/ギタリストたちの饗宴トップ・ギタリスト5人が魅せるソロとアンサンブル文:渡辺謙太郎左より:荘村清志 ©得能通弘 CHROME/福田進一/鈴木大介/大萩康司 ©ビクターエンタテインメント/朴 葵姫 実に豪華で楽しみな公演だ! 日本クラシック・ギター界を代表する5人の名手が、大田区のアプリコで一堂に会する。世界的な名手として名高い荘村清志と福田進一の両巨匠を筆頭に、鈴木大介、大萩康司、朴葵姫の若手実力派3人が集結。 音色も音楽性も異なる5人が、ソロから五重奏までの幅広い編成と、多彩な時代と地域の名曲で、クラシック・ギターの醍醐味を存分に伝える。荘村の繊細な音色にぴったりなタレガの名曲「アルハンブラの想い出」、鈴木と大萩の緩急自在なデュオが織りなすアルベニス「椰子の木陰」、そして5本のギターが華々しく交歓するビゼー「カルメン組曲」やヴィヴァルディの合奏協奏曲集「調和の霊感」より第8番など、聴きどころが満載だ。現在の日本クラシック・ギター界がいかに充実しているかを改めて実感する、格好の機会になることだろう。

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