eぶらあぼ 2017.1月号
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51シルヴァン・カンブルラン(指揮) 読売日本交響楽団耳新たなチャイコフスキー体験文:柴田克彦バッハ・コレギウム・ジャパン ベートーヴェン「ミサ・ソレムニス」BCJが満を持してベートーヴェン畢生の大作に挑む文:山田治生第194回 土曜マチネーシリーズ2017.2/4(土)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール第194回 日曜マチネーシリーズ2017.2/5(日)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 http://yomikyo.or.jp/2017.2/3(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 http://www.operacity.jp/ チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲と交響曲第5番…読売日本交響楽団の2月の土曜・日曜マチネーシリーズは、まごうことなき名曲コンサートだ。ロシア情趣と西欧の風味が見事に融合した極め付けの名作を、近年ますますゴージャスな読響サウンドで堪能すればそれでいい。だが、指揮がカンブルランとなれば、若干話が違ってくる。常任指揮者として7年を経た彼は、読響に精緻で引き締まった美感をもたらした。キビキビしたテンポによるその演奏は、ソリッドで見通しがいい。それゆえ彼が振ると、聴き慣れた名曲とて新鮮に響く。かつてのチャイコフスキー「悲愴」も、ベートーヴェン「第九」も、昨秋のシューベルト「グレイト」もそうだった。しからば今回のチャイコフスキーはいかに? 中でも、ある種の表現パターンが定着している(というか、そこから逃れるのが難しい)交響曲第5番が、どのように演奏されるのか? 時に辟易させられる濃厚さを排した、か 鈴木雅明&バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)が東京オペラシティ コンサートホールで満を持してベートーヴェンに取り組む。しかも作品は、交響曲第9番と並ぶ畢生の大作「ミサ・ソレムニス」だ。鈴木はこれまでに海外のオーケストラでベートーヴェンの交響曲をいくつか指揮しているが、BCJは演奏会でベートーヴェンを取り上げること自体今回が初めてである。鈴木は「ここ数年、バッハの『ロ短調ミサ』やモーツァルトの『ハ短調ミサ』の演奏を経て、ベートーヴェンに充分にアプローチできる感触を得ていた」という。 「ミサ・ソレムニス」は、交響曲第9番とほぼ同じ時期に書かれた傑作にもかかわらず、「第九」よりも演奏機会がずっと少ない。その上、古楽器による演奏は本当に珍しく、今回の上演は貴重というほかない。ティンパニや軍隊ラッパによる戦争の音楽、それに対して合唱が「我らに平和を与え給え」と歌つてないチャイコフスキー像への期待に胸が膨らむ。 ヴァイオリン協奏曲のソロは、初来日のシモーネ・ラムスマ。彼女は、現在急成長中のオランダ人奏者で、シカゴ響、コンセルトヘボウ管、フランス国立管等の著名楽団やズヴェーデン、ルイジといった名指揮者と共演している。2006年のデビューCDのピアノが三浦友理枝という点でも近しい存在だ。彼女もまた過剰な粘り気のない、清冽でナチュラルなタイプ。カンブルランう。コンサートマスターの長大な独奏も聴きどころだ。BCJがどれだけベートーヴェンのオリジナルに近づくのかに注目である。鈴木も「古楽器でベートーヴェンの思い描いたはずの響きに少しでも『近づきつつ』演奏することの意義は、計り知れない」と力を込める。 独唱には、アン=ヘレン・モーエン、ロのアプローチとも合いそうなだけに、今回のパフォーマンスが注目される。 興味津々の本公演、全てに清新なチャイコフスキー体験が待っている。クサーナ・コンスタンティネスク、ジェイムズ・ギルクリスト、ベンジャミン・べヴァンと、鈴木の信頼の厚い歌手たちが招かれる。 鈴木雅明&BCJにとって、新たな、そして大きな一歩となるベートーヴェン「ミサ・ソレムニス」を聴き逃すわけにはいかない。シモーネ・ラムスマ ©Otto van den Toornシルヴァン・カンブルラン左より:鈴木雅明 ©Marco Borggreve/アン=ヘレン・モーエン/ロクサーナ・コンスタンティネスク/ジェイムズ・ギルクリスト ©operaomnia.co.uk/ベンジャミン・べヴァン ©Jason Dodd
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