eぶらあぼ 2017.1月号
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48佐渡 裕(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団本場を沸かす高揚感を東京で体験文:柴田克彦小泉和裕(指揮) 東京都交響楽団信頼厚きコンビが放つグラズノフの魅力文:江藤光紀第888回 オーチャード定期演奏会2017.1/22(日)15:00 Bunkamuraオーチャードホール第106回 東京オペラシティ定期シリーズ2017.1/26(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール第889回 サントリー定期シリーズ2017.1/27(金)19:00 サントリーホール問 東京フィルチケットサービス 03-5353-9522http://www.tpo.or.jp/第824回 定期演奏会 Aシリーズ 2017.1/23(月)19:00 東京文化会館問 都響ガイド03-3822-0727 http://www.tmso.or.jp/ 人気指揮者・佐渡裕は、欧州や兵庫を拠点とするため、在京オーケストラへの客演機会が少ない。その稀少な公演の1つが東京フィルの定期演奏会。1月に彼は定期を3公演指揮する。佐渡は2015年9月、オーストリアの名門トーンキュンストラー管の音楽監督に就任。王道レパートリーで堂々勝負して喝采を浴び、R.シュトラウス、ハイドン等の録音や、16年5月の来日公演でもハイテンションの快演を展開している。 そこで今回も独墺ものが中心。ブルックナーの交響曲第9番(1/22,1/27)とブラームスの交響曲第1番(1/26)を軸に据えた重厚なプログラムを披露する。 ブルックナーの9番といえば、佐渡の師匠バーンスタインが、同作曲家の交響曲中唯一得意とした作品。今回は師匠のようなマーラー的にうねるブルックナーになるのか? トーンキュンストラー管との最新盤の第4番「ロマンティック」では、正攻法でダイナミックな演奏を聴 世界的指揮者が東京に押し寄せ、日本人指揮者も安穏としていられない時代に、大ベテラン小泉和裕がじわじわと活動の幅を広げている。1973年にカラヤン・コンクールで優勝後も着実に道を踏み固めてきた。共演歴が40年にもわたる都響からは、昨年、終身名誉指揮者に迎えられ、同じく長い関係にある九響でも音楽監督の任にある。仙台フィル(首席客演)、神奈川フィル(特別客演)でもポストを持ち、さらに今シーズンからは名古屋フィルの音楽監督もスタートした。オーケストラも生き残りをかけてしのぎを削る中、多くの楽団が小泉の力を求めている。 そんな小泉が1月に都響定期で2つの“5番”プログラムを披露する。ブルックナー「交響曲第5番」(Bシリーズ、1/10)に続き、Aシリーズ(1/23)はロシアものを中心とするプログラミング。前半はウェーバー《オイリアンテ》序曲からチャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲」へ。かせているだけに、結果が注目される。 ブラームスの1番は、同プログラムの《タンホイザー》序曲共々、圧倒的な熱量を生み出す彼の手腕に期待。また、武満徹の「セレモニアル」(1/22,1/27)とピアソラのバンドネオン協奏曲(1/26)が、笙の宮田まゆみ、アコーディオンの御喜美江という第一人者を迎えて演奏されるのも楽しみだ。中でも瞑想的な武満作品では、佐渡&東京フィルの新しい側面が見えるかもしれない。 今シーズンの東京フィル定期に登場する日本人指揮者は2人、3公演を振るのは佐渡1人だから、オーケストラの信頼度の高さは相当なもの。バッティストーニをシェフに迎えて意気上がる楽団との高揚感に充ちたコラボレーションに、大きな期待がかかる。ソロを弾くヨシフ・イワノフは2003年、16歳でモントリオール国際コンクールを制覇、その2年後にはエリザベート王妃国際コンクールでも2位に入賞している。そろそろ30歳というところで、活動の幅も世界に広がっている。そしてグラズノフ「交響曲第5番」。まだまだ日本では知られているとは言いがたい作曲家だが、チャイコフスキーに劣らないメロディ・メーカーとしてあまたの名曲を残した。シンフォニストとしても8曲を書き、中でも5番は代表作だ。曲は荘厳に始まり、チャーミングに駆ける第2楽章にグラズノフお得意の甘美な緩徐楽章が続く。終楽章は勇壮なテーマを挟みつつ明るくダイナミックに締めくくられる。ヨシフ・イワノフ ©Eric Larrayadieu/naïve小泉和裕 ©堀田力丸佐渡 裕 ©Yuji Hori
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