eぶらあぼ 2017.1月号
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47井上道義(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団武満サウンドのエッセンスをじっくりと味わう文:江藤光紀ケルティック 能『鷹姫』東西のアートの出会いが生み出す“異空間”文:オヤマダアツシ第568回 ジェイド〈サントリーホール・シリーズ〉2017.1/26(木)19:00 サントリーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 http://www.njp.or.jp/2017.2/16(木)19:00 Bunkamuraオーチャードホール問 プランクトン03-3498-2881 http://takahime.jp/ 2016年は武満徹没後20周年にあたり、さまざまな追悼コンサートが行われたが、我らがトリックスター、井上道義が新日本フィル2016/17シーズンに贈るコンサートはひねりを効かせ、シリアスな音楽だけでなくその創作の多彩な源を探る。 武満は青年期にラジオから聞こえてくるシャンソンに胸を躍らせ、占領軍相手にアルバイトをしながら創作活動に入った。コンサートはまずシャンソン「聞かせてよ愛の言葉を」を蓄音機で再生して始まる。続いて大竹しのぶが反戦ソング「死んだ男の残したものは」を歌い、その出発点や戦争に対する思いを浮かび上がらせる。さらに親交の深かった木村かをりがデビュー作「2つのレント」(抜粋)、そして後年それを基に作られた「リタニ」のピアノ独奏曲2曲を演奏。 ここから管弦楽へバトンタッチ。ストラヴィンスキーに絶賛された弦楽器 日本の伝統芸能である能と、ケルト文化が根付いているアイルランド。この2つを結び付けるのは、神秘主義やロマン主義に影響された作品により独特の味わいを確立した、詩人・劇作家のウィリアム・バトラー・イェイツだ。彼がアイルランドの幻想文学的な伝説をベースに執筆した戯曲『鷹の井戸』は、輪廻転生を思わせる悠久の時をテーマにした物語。小泉八雲が魅了された日本の怪談や手塚治虫の名作『火の鳥』にも通じる内容であり、「幽玄」というキーワードが似合う作品である。 日本でも新作能の名作『鷹姫』として上演され続けてきたが、東京・オーチャードホールで上演される「ケルティック 能『鷹姫』」は、初めて“日本+アイルランドの劇的融合”を実現した歴史的な公演だ。この作品を何度も舞った人間国宝の梅若玄祥が主役(鷹姫)を演じ、日本の伝統を担う能楽師たちが出演。一方アイルランドからは、による哀哭の歌、「弦楽のためのレクイエム」は出世作だ。そこから巨大な編成の曲へと移り、鮮やかなオーケストレーションを堪能する。「グリーン」は、かの「ノヴェンバー・ステップス」と同時期に書かれた爽やかな曲。「カトレーン」では四人の奏者が織りなすアンサンブルがオケと対峙する。そして幻想的なハーモニーを聴かせるコーラス・アンサンブルの「アヌーナ」が出演し、歌声によって神秘的な空間を演出する。都会のコンサートホールが、冬の一夜だけ異空間へと変容を遂げることだろう。 幻想・怪異ものは能の演目の中で重シュールレアリスティックなアイディアに基づいた「鳥は星形の庭に降りる」。 映画は武満が愛してやまなかったメディアだった。その中から、ボクサーのクールな音楽(『ホゼー・トレス』より)、そして『他人の顔』のどこかシニカルなワルツで締めくくる。トークではミッキー節炸裂も大いに楽しみだ。要な位置を占めるが、この『鷹姫』は文化のぶつかり合いから生まれる新しい(そして冒険的な)形になるはず。話題となった『ジャパン・オルフェオ』に続き、ジャンルを問わず「神秘的なるもの」に惹かれる方にこそ体験してほしいステージである。木村かをり大竹しのぶ井上道義アヌーナ梅若玄祥
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