eぶらあぼ 2017.1月号
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27Informationイザベル・ファウスト&ジャン=ギアン・ケラス&アレクサンドル・メルニコフ2017.2/23(木)19:00 東京文化会館 問 都民劇場03-3572-4311 2/24(金)19:00 王子ホール(完売) 問 王子ホールチケットセンター03-3567-99902/26(日)14:00 神奈川県立音楽堂 問 チケットかながわ0570-015-415 2/28(火)19:00 いずみホール 問 いずみホールチケットセンター06-6944-1188イザベル・ファウスト バッハ無伴奏ヴァイオリン・リサイタル2017.3/2(木)19:00 電気文化会館 問 電気文化会館052-204-1133イザベル・ファウスト バッハ無伴奏ヴァイオリン作品全曲演奏会2017.3/4(土)第1部15:00 第2部17:30 三鷹市芸術文化センター風のホール 問 三鷹市スポーツと文化財団0422-47-5122http://www.pacific-concert.co.jp/今度は名手揃うトリオと無伴奏で真価を発揮取材・文:柴田克彦 写真:中村風詩人 真摯かつ誠実に楽曲の本質を聴かせる世界屈指のヴァイオリニスト、イザベル・ファウストが、来る2〜3月、ジャン=ギアン・ケラス(チェロ)、アレクサンドル・メルニコフ(ピアノ)とのトリオ、及びJ.S.バッハの無伴奏ソナタ&パルティータの公演を行う。何れも大注目だが、まず取材直前のバッハの演奏会でソナタの曲中に弓を替えていたことに触れると、時間をかけて考えを語ってくれた。要約すると以下のような話だ。 「私は常に複数のバロック弓を持ち歩き、その日はバロック・ヴァイオリンを用いて、遅い楽章は柔らかい弓、速い楽章はアーティキュレーションが明確となる弓、無伴奏曲は3本目の長い弓で弾きました。ただ、ホールや共演する楽器、湿度といった状況、作曲者やソナタか協奏曲かによって変わりますし、最終的には楽器ではなく音楽が全てです」 これは、彼女の自然な音楽がいかに繊細な配慮のもとで生み出されているかを示す一例であり、次の来日ではバッハの無伴奏曲の公演で特に注目したい点でもある。 さて、トリオは著名ソリストが集う豪華版。結成の経緯やいかに? 「ケラスは18歳頃からの知り合いです。メルニコフはその少し後、ある音楽祭で1〜2曲弾いて素晴らしいコラボだと感じ、リサイタルで共演するようになりました。そして私がドヴォルザークの協奏曲を録音する際(2003年)、カップリングに三重奏曲を選び、2人と共演しました。それを機に時おり集まって演奏会や録音を行うようになり、最近は割と定期的に演奏しています」 互いの相性は抜群だという。 「我々は皆、室内楽が大好きで、重要視しています。トリオの場合は、ヴァイオリンとチェロの音が合うことが特に大事ですが、ケラスとは互いの個性を保ちながら自然に音が合います。それに個々にリサイタルで共演しているメルニコフとも、イントネーションやイメージを共有できます。そして我々は、曲を深く理解し、ルーティンを忘れて音楽言語を解きほぐすという、同じ目標に向かって努力し、音楽作りが大きな喜びとなっています」 プログラムの1つは、シューマンの第3番、カーターの「エピグラム」、シューベルトの第1番。 「シューマンの3番は3人が1番好きな曲かもしれません。1番が最も弾かれていますが、我々は3番が特に美しい曲だと思っています。シューベルトの1番は最近のレパートリーで、より深く探究していきたい作品。シューマンとのマッチングも考慮しました。そして間に空気を入れ替える曲を探した結果、カーターの作品にしました。これは12の小さな楽章からなる美しく叙情的な音楽で、ミニマリズムに近い面もある素晴らしい名作。このプログラムは完璧に近いと思っています」 歌謡性と構成美が同居したシューベルト円熟の大作への期待も大きい。また王子ホールでは、シューマンの3つの三重奏曲の全曲演奏を行う。 「シューマンの三重奏曲は、明快な五重奏曲に比べてポリフォニックでより興味深いと思いますし、全曲を取り上げた方が理解が深まります。彼は、聴けば聴くほど自分の中に入っていく麻薬的な作曲家。一度好きになってしまったら絶対に離れることができません。このプログラムは、そうした親密で個性的なシューマンをよく知るチャンスではないでしょうか」 バッハの無伴奏プロは、「必ず『シャコンヌ』で終わるようにしている」という。また彼女のバッハ、特にパルティータは元々が舞曲であることを想起させる。 「ニ短調の『シャコンヌ』の後に他の曲を演奏するのは、想像もつきません。舞曲のリズムに関して言えば、バッハの作品では、強調される拍とそうでない拍、不協和音と協和音を明確に表現することが重要です。それによってパルスが生まれ、舞曲のように聞こえてきますし、そもそもバッハの時代の音楽は舞曲がベースになっていますので、リズムが大事になります」 こちらのプログラムは、CDや来日時の名演からも楽しみだ。 このほど鍵盤楽器の名手シュタイアー作のカデンツァを用いたモーツァルトの協奏曲全集もリリースされるなど、話題の尽きない彼女。これからも常に目を離せない。

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