eぶらあぼ 2017.1月号
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158CDCDCDSACD中村紘子 フォーエバー日本の歌を集めて3 夜曲/小松英典&塚田佳男サン=サーンス:交響曲第3番「オルガン付」 他/バーンスタイン&ニューヨーク・フィルモーツァルト:ピアノ協奏曲第23番 他/田部京子モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番中村紘子(ピアノ)飯森範親(指揮)東京交響楽団信時 潔:「沙羅」より/山田耕筰:嘆き、待宵草、夜曲、異国/團 伊玖磨:「五つの断章」より/中田喜直:鳩笛の歌、木兎/橋本國彦:薊の花、牡丹/平井康三郎:秘唱、平城山、甲斐の峡、九十九里浜 他小松英典(バリトン)塚田佳男(ピアノ)サン=サーンス:交響曲第3番「オルガン付」フランク:交響曲レナード・バーンスタイン(指揮)レナード・レーヴァー(オルガン)ニューヨーク・フィルハーモニックモーツァルト:ピアノ・ソナタ第11番「トルコ行進曲付」、ピアノ協奏曲第23番田部京子(ピアノ)小林研一郎(指揮)日本フィルハーモニー交響楽団収録:2016.4/30、ミューザ川崎シンフォニーホール5/4、オリンパスホール八王子(以上ライヴ)ドリーミュージックMUCD-1372 ¥2315+税コジマ録音ALCD-9167 ¥2800+税収録:1976.12(サン=サーンス)、1959.2(フランク)ソニーミュージックSICC-2110 ¥1190+税収録:2015.6/28、サントリーホール(ライヴ)他オクタヴィア・レコードOVCT-00125 ¥3200+税中村紘子追悼盤、最後のライヴ録音。2016年の4月30日及び5月4日に行なわれたコンサートよりモーツァルトのピアノ協奏曲第24番を2種収録。演奏はほぼ同一の印象だが、5月4日の方が若干の落ち着きが感じられる。それにしても第1楽章でのピアノの「入り」の部分における絶妙の強弱の付け方(定評あるpの美しさ!)には惹かれるが、対してカデンツァでのダイナミックな迫力にも驚かされる。つまり、この演奏には衰えの影すら感じられないのである。思念的にして闊達。まだまだ弾いていただきたかった。中村ゆかりの人々による追悼文掲載のライナー・ノーツもまた余情に富む。 (藤原 聡)40年以上にわたり、国際的に活躍を続ける名バリトンの小松英典。そして、日本歌曲の研究・伴奏の第一人者であるピアノの塚田佳男。2人の名手が、満を持して取り組んでいるシリーズ「日本の歌を集めて」が第3弾に。今回も、信時潔や山田耕筰、團伊玖磨、中田喜直らによる、情感あふれる佳品の数々が収録されている。塚田のピアノは前奏の段階から、後に続く言葉や情景を予感させる繊細な表現。三木露風や北原白秋ら名詩人が磨き抜いた日本語の美しさを、小松は余さず掬い取り、温かな美声で昇華。かたや、ふと覗くドイツ・リートの雰囲気も、決して気のせいではなかろう。(笹田和人)1976年に録音された熱気が全篇に漲る「オルガン付」だ。巨大な旋律がしじまの中からせまってくるように始まり、スケルツォ部ではピアノが華麗な走句を聴かせる。そしてオルガンと競いつつオーケストラが作り出す壮大なクライマックスを迎える。しかし、NYP音楽監督就任の翌年の59年に収録されたフランクの交響曲を聴くと、同職退任(69年)後の「オルガン付」はそれでも“円熟”していたことが分かる。中間楽章を清涼剤として、両端楽章では音楽は絶えずうねり激しいテンションでエネルギーを奔出させる。瀟洒なフランス音楽とはとても思えず、当時のアメリカ人の熱狂を彷彿とさせる。 (江藤光紀)田部のオクタヴィアからの2作目のCD。これは、明確なタッチによる美音で紡がれた、素晴らしいモーツァルトだ。中でも「トルコ行進曲付」ソナタは、複数のソナタを並べたケースとはひと味違って、1曲に持てる全てを投入した、大スケールかつ陰影こまやかな演奏。各変奏をじっくりと描き分けた第1楽章は特に秀逸だし、第2楽章の優しさと厳しさ、第3楽章の足取りの確かさも印象深い。協奏曲も軽やかにして密度の濃い好演。優美さと気品のみならず、力感をも湛えた音楽は聴き応え充分で、第2楽章の美しく深い情感にはとりわけ胸を打たれる。傾聴に値する1枚。(柴田克彦)

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