eぶらあぼ 2016.12月号
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67東京文化会館《響の森》vol.39 ニューイヤーコンサート2017正月はロシアの名曲三昧で文:オヤマダアツシ2017.1/3(火)15:00 東京文化会館問 東京文化会館チケットサービス03-5685-0650 http://www.t-bunka.jp/ 1年の最初にどのコンサートを聴くか。その年を占うような気分も強くなり、つい慎重になってしまいそうだが、名曲中の名曲を王道で! とお考えの方なら東京文化会館のロシア名曲プログラムはいかがだろうか。 没後400年というメモリアル・イヤーで2016年が盛り上がったシェイクスピアの名作悲劇を、チャイコフスキーが約20分のオーケストラル・ドラマに仕立て上げた幻想序曲「ロメオとジュリエット」。口笛で吹けるほど魅力的な旋律と、荒々しくもゴージャスなダンス音楽で聴き手の心をわしづかみにするボロディンの「だったん人の踊り」。そして難曲といわれるピアニズムと濃厚なロマンが壮大なドラマを繰り広げる、ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番。この3曲だけでロシア音楽のエッセンスを浴びることができるプログラムであり、「お正月だからクラシックを聴こうか」という家族や友人を気軽に誘えるコンサートでもあるのだ。 指揮はヨーロッパを拠点に活動を続けながら、2016年4月より札幌交響楽団の指揮者に就任し、日本での活躍もますます期待される垣内悠希。ラフマニノフのソリストは「この曲にこの人あり!」と誰もが認める小山実稚恵。東京都交響楽団の緻密かつ豊かな響きでのロシア音楽は、読者にとって、幸運な2017年への第一歩になるかもしれない。小山実稚恵 ©ND CHOWアフタヌーン・コンサート・シリーズ 西村 悟(テノール) & 平野 和やすし(バスバリトン)男声の魅力に存分に酔いしれる文:宮本 明12/8(木)13:30 東京オペラシティ コンサートホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp/ 加速度的に快進撃を続ける大型テノールの西村悟と、ウィーン・フォルクスオーパーの専属歌手として活躍するバスバリトンの平野和のデュオ・リサイタル。平野はちょうど本誌が出る頃にもフォルクスオーパーで《フィガロの結婚》のタイトルロールを歌っているはずだ。二人はともに日本大学芸術学部出身の同窓生。正式タイトルには入っていないが、本人たちは「男だらけ」「男祭り」と、“男”を強調している。 発表されている曲目のうち二人が一緒に歌うのは、ドニゼッティ《愛の妙薬》のドゥルカマーラとネモリーノの二重唱、グノー《ファウスト》のファウストとメフィストフェレスの二重唱。他は未公表だが、騙すバリトンと騙されるテノールという図式で、「男の駆け引き、騙しあい。男の純粋さから、ずる賢さまで」(西村/チラシより)がテーマになる。オペラでは、どうしてもテノールがヒーローや良い人、バリトンは悪役や敵役が多いわけだが、ここでもその典型が次々披露されることになるのだろう。もちろんそれぞれのソロによるアリアもたっぷり。西村が《微笑みの国》より〈君こそわが心のすべて〉、《魔笛》より〈なんと美しい絵姿〉、《愛の妙薬》より〈人知れぬ涙〉を、平野が《ドン・ジョヴァンニ》より〈カタログの歌〉、《タンホイザー》より〈夕星の歌〉などを歌う予定。 ピアノは名人・河原忠之。オペラの物語に反して悪役バリトンが主役テノールを食うか、テノールが返り討ちにするのか。丁々発止の男の歌に期待したい。平野 和 ©Claudia Prieler西村 悟 ©Yoshinobu Fukaya垣内悠希 ©Jean Philippe Raibaud

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